駒子の備忘録

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『バリでの出来事』~韓流侃々諤々リターンズ13

2020年07月13日 | 日記
 2004年SBS、全20話。

 週末はネイルだのマッサージだのお友達とコミックスの貸し借りついでにランチしたりだのと、何かしら用事があることが多いのですが、この週末は土日とも何も予定がなく、天気予報も大雨で籠もる気満々だったため、老後の楽しみに取っておこうかと思っていた連ドラ一気再生をやらかしてみました。
 当初、第1話冒頭の再生が乱れて止まってしまい、DVDは劣化すると聞いてはいたけれどまさか…!?と涙目になったところ、その後はスムーズに再生できたので一安心しました。
 韓国での視聴率とか評判とか、当時の日本での人気とかはあまり知りません。そんなではなかったんじゃないかな。でも私はソ・ジソプが好きなのと、こういうドロドロ愛憎ドラマが好きなので(キャッキャウフフのニヤニヤラブコメももちろん好きなのですが)、強く印象に残っている一作なのでした。
 韓ドラあるあるの男女4人の四角関係もので、お金持ちがふたり、貧乏人がふたりとこれまたわかりやすい構造の作品です。時と場所を移せば宝塚歌劇で柴田ロマンになりそうです(笑)。きっとそこがツボなんだろうな…ゆかしい柴田台詞の代わりに、とてもせつなく印象的な挿入歌が多々あるドラマです。

 主人公はチョン・ジェミン(チョ・インソン)。P財閥会長の次男坊。兵役も財力にあかせて免除してもらってアメリカ留学もして父親の会社のマーケティング部チーフなんかに据えてもらって、でもビジネスに興味もなければ才もない甘ったれのボンボンです。ハンサムですがヘタレでナンパで、まあしょーもない男ではあります。ただ、韓ドラあるあるというか、今もなお韓国社会では実際にそうなんでしょうが、家庭がものすごいザッツ・家父長制で、父親が歳にもかかわらずすぐ子供に怒鳴る手を出す足も出す、なんならゴルフクラブで殴って折檻するという、はっきり言って立派な暴力、犯罪で家族、家業に君臨していて、誰も言いたいことひとつ言えない…という事情はあります。それですっかりスポイルされてしまっているお坊ちゃんなのです。
 その婚約者はチェ・ヨンジュ(パク・イェジン)、こちらも財閥会長のひとり娘。つまりこの婚約は完全に親同士が決めた政略結婚で、それでお互いの企業がより上手く回るとされているものです。知的なクールビューティーで、愛のない結婚であることを割り切っています。
 その元カレがカン・イヌク(ソ・ジソプ)。ヨンジュの大学の先輩で、無口で控えめで、でも優しい気遣いができる男です。DV夫と離婚してうどん屋を営む母親に女手ひとつで育ててもらい、眉目秀麗成績優秀、長身で筋肉質で、金と家柄以外はすべて持っています。ジェミンの父の会社にトップ入社し、ヨンジュとジェミンが婚約したところで彼女と別れ、ジャカルタ支社に志望して異動します。身分違いの、結婚などできるはずのない恋愛と割り切ってつきあっていたといっても、つらくて、同じソウルにいられなかったのでしょう。そして仕事ができる男はどこへ行っても有能で引く手あまたなのでした。
 割り切っているヨンジュに比べてジェミンは幼く、タレントと浮き名を流したりして憂さを晴らしています。キレたヨンジュが結婚前の最後の区切りとして、ジャカルタのイヌクに会いに行くところから、物語は始まります。きっちり別れたつもりのイヌクでしたが焼けぼっくいに火が点いてしまい、ふたりして最後のバカンスにとバリへ出かけます。しかし空港にはジェミンが先回りしていました…
 そして3人を案内することになった現地の観光ガイドが、ヒロインのイ・スジョン(ハ・ジウォン)です。財閥の御曹司を担当できるとなってやる気満々、でもイヌクの方を御曹司だと勘違いして…みたいな、元気で素直でおっちょこちょいでバイタリティあふれ、負けん気とハングリー精神に満ちた、でもときに貧しさ故の卑屈さ、自己肯定感の低さが顔を出してしまう女。幼いころに両親を亡くし、兄とふたりで親戚の家や施設を転々として暮らし、勉強ができたので大学まで入学したものの学費が続かず中退し、やがて兄がチンピラになって借金を作ったものだから、家も何もかも売って語学を生かすためにバリに飛び、いつか小さなホテルでも買い取ることを夢見てコツコツ貯金しているけなげな女、でもあります。
 4人の出会いのあと、ジェミンとヨンジュは帰国し、イヌクも本社から呼び寄せられて帰国し、スジョンも旅行会社社長に貯金を持ち逃げされて追いかけるために帰国します。なので本編というか、ドラマのだいたいの舞台はソウルです。お金持ちチームはお金持ちのお屋敷街住まい(ジェミンは実家を出てマンションのひとり暮らしですが)、スジョンは親友の部屋に転がり込みますが、そこは坂のどん詰まりに立つもうすぐ再開発されちゃうんだろうなという貧乏長屋で、隣の部屋にイヌクが越してきます。ソウルの「山の手」ってこの二極なんですよね。さらにイヌクはジェミンの部下に配属され、でもイヌクの方が断然仕事ができるので、ジェミンはおもしろくない。そこへ、バリでちょっと「フッ、おもしれー女」と思ったスジョンが借金の申し込みに来て…となって、4人の関係はもつれていきます。
 ジェミンはスジョンに夢中になり、ジェミンに相手にされずプライドを傷つけられたヨンジュはイヌクに甘え、イヌクとスジョンはお隣さんづきあいから親しくなっていき、しかしイヌクはスジョンに惹かれながらもその卑屈さに自分の鏡を見るようでいらつき、スジョンはイヌクの頼もしさに惹かれながらも金づるとしてしか見ていなかったジェミンの真剣さに心揺れる…ぐちゃぐちゃです。たまりません!
 とにかく男女ともみんなよく泣き、実によく飲みよく乱れつぶれます。素直だなーと思うし、肝臓が丈夫だなーとも思います(笑)。このあたりの感情表現の差には日韓の違いを感じますよね。
 こういう四角関係って、ときに女たちがトロフィーにすぎず、男同士の角突き合わせがメインになったり、なんなら男同士のホモソーシャル愛憎に女たちが巻き込まれているだけになったりしがちなこともあると思うのですが、ジェミンとイヌクは本当にソリが合わなくて反発し軽蔑し嫌悪し合っているので、女たちがただの当て馬にされているようなことはなくて好感が持てました。男同士が本当は相手に憧れていて、うらやましくて、入れ替わりたいくらいで、だけどそんなことはできないから、嫌う、憎む、相手の愛しているものを奪う…みたいな感じがないのが、いい。ジェミンもイヌクも、ちゃんとスジョンを好きになっています。そこが、いい。そしてスジョンがフラフラしちゃうのは、いろんなドラマならではのタイミングの魔術(笑)で仕方なく見えるよう、ちゃんと演出されている。上手いです。
 通して一気見すると、途中ちょっと中だるみするというか、同じことを繰り返しているように見えちゃうかもな、とは今回思いました。スジョンはなけなしのプライドや良識が邪魔をして、手切れ金や押しつけられた大金を律儀に返しちゃうんだけど、それでは借金で首が回らない状態は改善されないので結局元の木阿弥になったりする。だったら一度だけ割り切って受け取って、それを元手にどこか別の場所で再出発すればいいのに、とはつっこみたくなります。お金持ちチームも、家族も家業もすべて捨てて身ひとつで好きな相手と駆け落ちする、みたいな決心はできないものなのか。せめて検討する振りくらいしろよ、それで現状を選んでいるなら割り切って開き直れよ、と説教したくなる。でもドラマなので(笑)そうスッキリはいかず、みんなうだうだぐだぐだこじれては、また泣きながら酒を飲むのでした…
 イヌクが、ジェミンの兄に利用されている振りして横領と高飛びを計画していることをもっと早く、かつ前面に出してもよかったと思いますし、結局この兄が倒れちゃうんだけど発作を起こすのはむしろ会長の方だろう!と思うので、もうちょっとお金持ち家族の方にも亀裂の入る隙がある、とか描くと、ドラマの振り幅が広がったのかなとも思います。つまりもう少し前から、「バリへ帰ろう、バリでやり直そう」って展望を見せておけるとよかったんじゃないかな、ということです。そしてそれは当然、「そんな上手いゴールがあるわけない…」と視聴者に悲劇と破滅を予感させて、より関心を引っ張れたと思うのです。

 以下はネタバレですが、当時の韓流ブログにも書いたと思うんですが、ラストに関してはヨンジュだけが蚊帳の外です。それがあまりに哀れでもあり、救いでもあります。イヌクとスジョンはバリに飛び、ジェミンがそれを追う。ヨンジュがおそらく実家の自室で泣き濡れて寝入っているうちに、すべては終わっていたのでしょう。
 でも生きてさえいれば、いくらでも、何度でも人はやり直せます。勝ち残れたのはヨンジュだった、という言い方もできる。せつない、虚しい勝利ですけれどね…
 こういうところも、柴田ロマンっぽいなと思うのでした。

 ところでジェミン兄のイヌク愛はホントひどいな(笑)、ゲイゲイしいにもほどがある。よもや離婚の原因はソレかな…
 あと、ジソプの手が大きくて、指が細くて長くて美しくセクシーだなあ、と今回しみじみ思いました。またしばらくこんなにフリーな週末はない予定ですが、次は『ミサ』かな? 『ホテリアー』にしようかな? ラブコメなら『コヒプリ』も楽しかったよね…『愛の不時着』が話題だというのに、私の韓流は未だ2000年代止まりなのでした。






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