駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『クランク・イン』

2013年12月21日 | 観劇記/タイトルか行
 東京芸術劇場シアターイースト、2013年12月21日マチネ。

 宇宙飛行士を目指していたオリオ(別所哲也)は、今はプラネタリウムの設計士で天文家。彼には銀幕のスターを目指す恋人・真理(新妻聖子)がいる。彼女は間もなく30歳を迎えるが、なかなかチャンスに恵まれないでいた…
 作・演出/増田久雄、音楽/寺嶋民哉、モーガン・フィッシャー。オリジナル・ミュージカル・ショー、全一幕。

 小さいハコだったのでマイクを使うのにまず違和感を感じてしまいました。ピアノ一本の生音、生歌ではできなかったのかな。
 そして例えばオーランドとマリーとか、なんでもいいんだけれど、舞台を現代日本でなくしてほしかった。月のプラネタリウムがどうとかいう台詞があったので、もしかしたら近未来なのかもしれないけれど、とりあえすスカイツリーが見えるマンションで同棲しているようなカップルの話なわけで、それにしてはリアリティがなくて私には感情移入がしづらかったのです。
 そしてそして、まさかのいわゆる「妊娠小説」…!
 え、誕生日とオーディション通過が嬉しくてついナマでやっちゃったってこと?
 いや、ピルもコンドームも100パーセント完全な避妊法ではないからデキるときにはデキるので、仕方ないといえば仕方ないですけれどね…
 そしてこんなベタではあるが重大な問題に関しての応酬が、あんな勘違いネタのギャグと陳腐な議論、安易な展開でいいとは私には思えません。特にオリオがまったくなんの変化も強いられないままにすませているところが完全に男性作家の手による話だわ、という印象。
 こんなんでクリスマスにまつわるちょっといい話でハートフルでハートウォーミングなウェルメイドな小品、佳作でしょ、ってことなら私はごめんこうむりたいと思いました。キャストの無駄遣いです。

 ああ、例えば誰か、真理が堕胎を選択する話を作ってくださいよ。今のこのチャンスを絶対に逃したくないの、ごめんね、でもこの子はきっとまた私を選んでいつかまた私に宿ってくれる、そのときはがんばるから今はごめん。これは私が決めたことでオリオにはどうしようもない、どうにもできない。だから別れる、好きだけど、ごめんね。そんな話が観てみたいよ。
 そしてクランク・アップの日に、花束抱えて指輪持ったオリオが真理をスタジオに迎えに来るような、たとえばそんな話ですよ。今回の子供はダメだったけれど、次の子供もきみと持ちたいから、と言ってくれるような、そんな話。お星様にしてしまったふたりの子供は、ふたりがまた迎えに行かなければいけないものだから。愛しているから。そんな話。
 そうやって救われる愛や命や希望や人生もあるものだと思うのですよ。現実にそういう選択をしている人はきっともっとたくさんいるし、それをフォローしカバーし認証してあげる物語がもっと必要だと思うなあ。産めって言いっ放しなんてどこの政府のお題目だよ、って感じなんだもん。残念。

 あと、一番のクライマックスでヒロインが歌う歌が英語の歌詞ってどうなんでょう。そりゃ雰囲気でどんなことを歌っている歌なのかはわかりますよ、でも日本語で歌われた方が感情はもっと伝わるじゃん。よりにもよってここだけ…というのががっかりしましたる呪文の歌は英詞でいいよ、でもここは違うと思いました。残念。








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