東京宝塚劇場、2009年9月29日マチネ、10月2日マチネ。
18世紀末、ロシアでは魔女狩りの嵐が吹き荒れ、迫害された特殊な能力を持つ一族は散っていった。その後に革命が起きてソヴィエト連邦が生まれ、20年後の1937年。アメリカ合衆国民主党所属の下院議員アルバート・ウィスラー(水夏希)率いるレヴュー団が革命20周年を祝うレビューを上演申請していたが、「鉄の女」と呼ばれる中央芸術事業局の担当者イリーナ・クズネツォワ(愛原実花)に却下される。上院進出への足がかりとするために必死のアルバートは、政策秘書のヘンリー(彩吹真央)にアドバイスされ、最高の武器「キラースマイル」でイリーナを誘惑し、再審査に持ち込もうとするが…作・演出/大野拓史、作曲・編曲/太田健のスクリューボール・コメディ。
あまり見慣れていない組で、登場人物が多く、初見時はどういう話なのかつかむまでに時間がかかって、バタバタしている印象を強く受けてしまいましたが、わかって観ると十分に楽しめる演目でした。まあそうは言っても盛りだくさんではあるとは思いますが。でもたとえばキャラクターを事前にきちんと把握している『太王四神記』なんかでは「下級生にまでたくさん役が振られていていい」なんて評したりするのですから、私も勝手なものではあります。
基本的には、事情があって接近せざるをえない男女間に思わぬ恋が芽生えて…というベタなラブコメではあります。
アルバートはレビューを成功させたい。イリーナは彼らをスパイだと疑っていて、その証拠をつかみたい。そこに、それぞれが魔法使いの末裔であり、惚れ薬を作って相手に飲ませ、こちらのいうことを聞かせようとするのだから話がこんがらがって…という構造です。
でも、その形がすっきり見えてくるまでに意外に時間を食うので、飽きちゃったり集中できなくなっちゃう観客はいるかもしれないなあ、と思いました。いろいろおもしろいことはやっているんですけれどね。
レヴューは文化交流事業のネタとされていますが、お堅いソヴィエトにもアメリカ人以上に愛好している者もいて、政治とは無関係に本当に交流が生まれてしまう…みたいな皮肉も描きたかったのでしょうけれど、それにしてはアルバートが最初はただ政界での成功のためだけにレヴュー団を利用しようとしているのであって…みたいな部分がわかりづらかったかなあ。
二番手が主人公の元執事で現政策秘書、三番手がソヴィエトの演出家・映画監督に扮していますが、話の筋としてはむしろソヴィエトの諜報員ユーリ・メドベージェフ(緒月遠麻)の方がキーパーソンなんじゃないでしょうか。共産党中央委員ニコライ・エジェフ(未来優希。さすがの悪役っぷり)に命令されてイリーナとの連絡員にされる、革命の理想に燃えているものの今の腐敗した党には絶望しているクールで生真面目な男。イリーナとはただ任務のために連絡しあったり協力したりしているだけではなくて、「鉄の女」と呼ばれて真面目にがんばっているイリーナに共感したり同志だと感じたり、もしかしたら好感を持っていたりしたかもしれない男。最後には旧友に頼んで党の不正を告発し、「革命が俺を裏切っても、俺は革命を裏切らない」と決めセリフを放つ男。はっきり言ってシビれました。
それからするとアルバートとヘンリーの友情とか微妙な関係というのは、イリーナとも無関係だし、今回の事件にもあまり関係がないんですよね。
昔はご主人様と仕える執事という関係だった、でももはや現代なんだし同い年なんだしでアルバートはヘンリーを大学に誘い、使用人ではなく同級生としてつきあい、自分が政治家になってからは秘書として協力してもらっている。ヘンリーは恩義も友情も感じていて、政治家として完全には悪賢くも非情にもなりきれないアルバートを守り支えようとしている…というのはわかるし萌える要素もあると思うのですが、でもイリーナの思惑対立するかとかがないとラブストーリーにからんでこないわけで、なんか余計な設定みたいに見えてしまうのが残念なんですよねー。
コメディエンヌとして評判のいい大月さゆ演じるヘンリーの妹でメイドのロビンも、私にはわりと邪魔なキャラクターに感じてしまいました。いろいろ小芝居しているんだけど、うるさくて余分…という印象だったのです、すまん。
いい人で文化交流しちゃうし主人公の危機を救っちゃうしというグリゴリー(音月桂)も、がんばってはいたけれど正直しどころがない役なんだよなあ…
でも、下級生の顔がたくさん覚えられたのでよかったです。
ショーは「ラテン・ロマンチカ」と称され、作・演出/齋藤吉正、作曲・編曲/甲斐正人。テンションも会場の温度もあがる熱気あふれる楽しいショーでした。
歌える二番手がきちんといる組のショーは構成として美しい。スターもたくさんいるし。
芝居では魔女軍団の末席で、ショーでは銀橋で三番手とからむ抜擢を受けている舞羽美海が好みの顔の美人でうれしい。
セットで売り出されているチギコマはコマの方が好みだと確認できたのもうれしい。ただしチギもさすがで、第5場の警官とか、目に付きました。でも一緒に踊った第9場のアップテンポのダンスは圧倒的にコマの方がキレていたと思いました。
第5場は宝石泥棒と警官という、よくあるシーンなのですが、まず泥棒役のミズの衣装がすばらしい。赤と黒のスーツ、帽子、サングラス。あんなの着こなせる人、絶対外の世界にはいません! 警官たちは白と黒のお衣装、そして彩那音が女役で扮する婦警は白と黒の制服に赤のポイントが入っていて、泥棒と並んだ時に美しい。ちなみにこの婦警はパンツ姿で、男役がダルマなどのわかりやすい女姿になるのとはまたちがった色気があって絶品でした。ブロンドのおかっぱ姿はちょっとリカちゃんを彷彿とさせました。
ロケットはピラニア。宝塚様式としてはよくあるんだけれど、「ピラニア!」とキンキン声で言いながら踊るのにはやや失笑。でも足上げはキレがありました。
これがトップ娘役としてお披露目のミナコは、さすがはダンサーでデュエットダンスがとてものびのびとしていてよかったです。これから情感が出てくるとさらにいいかなあ。歌は勉強してほしいけど。
五輪開催地がリオに決まってからはさらに盛り上がったとか。バランスのいい組なので、今後も期待できそうです。星組同様、格別のひいきがいないだけに気楽に見られる…というのはあるけれど(^^;)。
いやいや、キムは好きなんだ。いい役に当たって輝いてほしいんだ。殻を抜け出してほしいんだ! がんばれ!!
18世紀末、ロシアでは魔女狩りの嵐が吹き荒れ、迫害された特殊な能力を持つ一族は散っていった。その後に革命が起きてソヴィエト連邦が生まれ、20年後の1937年。アメリカ合衆国民主党所属の下院議員アルバート・ウィスラー(水夏希)率いるレヴュー団が革命20周年を祝うレビューを上演申請していたが、「鉄の女」と呼ばれる中央芸術事業局の担当者イリーナ・クズネツォワ(愛原実花)に却下される。上院進出への足がかりとするために必死のアルバートは、政策秘書のヘンリー(彩吹真央)にアドバイスされ、最高の武器「キラースマイル」でイリーナを誘惑し、再審査に持ち込もうとするが…作・演出/大野拓史、作曲・編曲/太田健のスクリューボール・コメディ。
あまり見慣れていない組で、登場人物が多く、初見時はどういう話なのかつかむまでに時間がかかって、バタバタしている印象を強く受けてしまいましたが、わかって観ると十分に楽しめる演目でした。まあそうは言っても盛りだくさんではあるとは思いますが。でもたとえばキャラクターを事前にきちんと把握している『太王四神記』なんかでは「下級生にまでたくさん役が振られていていい」なんて評したりするのですから、私も勝手なものではあります。
基本的には、事情があって接近せざるをえない男女間に思わぬ恋が芽生えて…というベタなラブコメではあります。
アルバートはレビューを成功させたい。イリーナは彼らをスパイだと疑っていて、その証拠をつかみたい。そこに、それぞれが魔法使いの末裔であり、惚れ薬を作って相手に飲ませ、こちらのいうことを聞かせようとするのだから話がこんがらがって…という構造です。
でも、その形がすっきり見えてくるまでに意外に時間を食うので、飽きちゃったり集中できなくなっちゃう観客はいるかもしれないなあ、と思いました。いろいろおもしろいことはやっているんですけれどね。
レヴューは文化交流事業のネタとされていますが、お堅いソヴィエトにもアメリカ人以上に愛好している者もいて、政治とは無関係に本当に交流が生まれてしまう…みたいな皮肉も描きたかったのでしょうけれど、それにしてはアルバートが最初はただ政界での成功のためだけにレヴュー団を利用しようとしているのであって…みたいな部分がわかりづらかったかなあ。
二番手が主人公の元執事で現政策秘書、三番手がソヴィエトの演出家・映画監督に扮していますが、話の筋としてはむしろソヴィエトの諜報員ユーリ・メドベージェフ(緒月遠麻)の方がキーパーソンなんじゃないでしょうか。共産党中央委員ニコライ・エジェフ(未来優希。さすがの悪役っぷり)に命令されてイリーナとの連絡員にされる、革命の理想に燃えているものの今の腐敗した党には絶望しているクールで生真面目な男。イリーナとはただ任務のために連絡しあったり協力したりしているだけではなくて、「鉄の女」と呼ばれて真面目にがんばっているイリーナに共感したり同志だと感じたり、もしかしたら好感を持っていたりしたかもしれない男。最後には旧友に頼んで党の不正を告発し、「革命が俺を裏切っても、俺は革命を裏切らない」と決めセリフを放つ男。はっきり言ってシビれました。
それからするとアルバートとヘンリーの友情とか微妙な関係というのは、イリーナとも無関係だし、今回の事件にもあまり関係がないんですよね。
昔はご主人様と仕える執事という関係だった、でももはや現代なんだし同い年なんだしでアルバートはヘンリーを大学に誘い、使用人ではなく同級生としてつきあい、自分が政治家になってからは秘書として協力してもらっている。ヘンリーは恩義も友情も感じていて、政治家として完全には悪賢くも非情にもなりきれないアルバートを守り支えようとしている…というのはわかるし萌える要素もあると思うのですが、でもイリーナの思惑対立するかとかがないとラブストーリーにからんでこないわけで、なんか余計な設定みたいに見えてしまうのが残念なんですよねー。
コメディエンヌとして評判のいい大月さゆ演じるヘンリーの妹でメイドのロビンも、私にはわりと邪魔なキャラクターに感じてしまいました。いろいろ小芝居しているんだけど、うるさくて余分…という印象だったのです、すまん。
いい人で文化交流しちゃうし主人公の危機を救っちゃうしというグリゴリー(音月桂)も、がんばってはいたけれど正直しどころがない役なんだよなあ…
でも、下級生の顔がたくさん覚えられたのでよかったです。
ショーは「ラテン・ロマンチカ」と称され、作・演出/齋藤吉正、作曲・編曲/甲斐正人。テンションも会場の温度もあがる熱気あふれる楽しいショーでした。
歌える二番手がきちんといる組のショーは構成として美しい。スターもたくさんいるし。
芝居では魔女軍団の末席で、ショーでは銀橋で三番手とからむ抜擢を受けている舞羽美海が好みの顔の美人でうれしい。
セットで売り出されているチギコマはコマの方が好みだと確認できたのもうれしい。ただしチギもさすがで、第5場の警官とか、目に付きました。でも一緒に踊った第9場のアップテンポのダンスは圧倒的にコマの方がキレていたと思いました。
第5場は宝石泥棒と警官という、よくあるシーンなのですが、まず泥棒役のミズの衣装がすばらしい。赤と黒のスーツ、帽子、サングラス。あんなの着こなせる人、絶対外の世界にはいません! 警官たちは白と黒のお衣装、そして彩那音が女役で扮する婦警は白と黒の制服に赤のポイントが入っていて、泥棒と並んだ時に美しい。ちなみにこの婦警はパンツ姿で、男役がダルマなどのわかりやすい女姿になるのとはまたちがった色気があって絶品でした。ブロンドのおかっぱ姿はちょっとリカちゃんを彷彿とさせました。
ロケットはピラニア。宝塚様式としてはよくあるんだけれど、「ピラニア!」とキンキン声で言いながら踊るのにはやや失笑。でも足上げはキレがありました。
これがトップ娘役としてお披露目のミナコは、さすがはダンサーでデュエットダンスがとてものびのびとしていてよかったです。これから情感が出てくるとさらにいいかなあ。歌は勉強してほしいけど。
五輪開催地がリオに決まってからはさらに盛り上がったとか。バランスのいい組なので、今後も期待できそうです。星組同様、格別のひいきがいないだけに気楽に見られる…というのはあるけれど(^^;)。
いやいや、キムは好きなんだ。いい役に当たって輝いてほしいんだ。殻を抜け出してほしいんだ! がんばれ!!
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