駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇星組『シラノ・ド・ベルジュラック』

2020年12月12日 | 観劇記/タイトルさ行
 シアター・ドラマシティ、2020年12月11日12時。

 17世紀フランス。ガスコン青年隊に属するシラノ・ド・ベルジュラック(轟悠)は剣を握れば無敵の達人、筆を手にすれば天賦の詩人と噂される、天下無双の豪傑である。彼が唯一引け目を感じているのは生まれついての大鼻だけ。容貌に自信が持てないシラノは、社交界の華と謳われる従妹ロクサアヌ(小桜ほのか)への恋心も胸の奥深くにしまい込んでいるのだった。ある日、シラノはロクサアヌから内密に会いたいと誘いを受ける。秘めた恋がついに…と期待を胸に赴くシラノだったが、ロクサアヌの話はあろうことか恋の相談だった。相手は最近パリにやってきて、今朝シラノと同じガスコン青年隊に配属になったばかりのクリスチャン・ド・ヌーヴィレット男爵(瀬央ゆりあ)だという。シラノは心ならずも恋の仲介役を引き受けるが…
 脚本・演出/大野拓史、作曲・編曲/玉麻尚一、高橋恵。エドモン・ロスタンの韻文戯曲を原作にしたミュージカル。全2幕。

 確か『剣と恋と虹と』も観てるんじゃなかったかな。もう去年になるかと思いますがどこのでしたっけ、芝居の映像を映画館で見たし、まあ話はだいたいわかっています。
 でも…大野先生がやりたい方向と私の気が単に合わなかったのかもしれませんが、退屈しました。私がイシちゃんにもせおっちにもそんなに興味がない、というのもあるのかもしれませんが。イヤでもせおっちは垢抜けてきましたよね、そろそろ別の相性が欲しいところですよね。で身なんか未だに「瀬央www」ってところがあるのが愛しいスターさんですよね。
 まあそれはともかく、原作リスペクトなのかもしれないけれど、場数が少ないこともありますが、展開が冗長で、台詞は無駄に詩的であいまいで要するにとてもわかりづらく、全体にテンポが悪かった気が私はしました。私がもっとわかりやすく、それでいてドラマチックに緩急ある芝居を観たい気分だった…というのがあるのかな、と思っているのですが、でも全体に上滑りしていたと思うんだけどな…客席もちょっとしらっとしていませんでしたかね? 私の気のせい?
 鼻が大きくて容姿にコンプレックスを持つ男性が主役、というのは宝塚歌劇ではなかなか難しいので、専科のイシちゃんがこうした付け鼻をつけてやるくらいしかやりようはないのだと思いますが、あとはけっこうロマンチックでせつない三角関係の話で、もっとわかりやすく作ってガツンと盛り上げてもいいんじゃないのかな、と思ってしまったのです。でもイシちゃんはなんせあの声なので、まず台詞を長々しゃべろうが歌を歌おうが全然聞き取れないし、それが詩人のものすごい才能、かつ愛嬌ある人柄、みたいに全然思えないのが正直しんどい。クリスチャンが顔はいいけど無骨な単細胞で口下手で女性好みの洒落た口説き文句なんか言えなくて、ロクサアヌへの手紙が書けなくて困っている…という設定、状況なのもわかりにくいし、ロクサアヌの家の庭にクリスチャンを立たせて陰からシラノが愛と情熱にあふれた美辞麗句を縷々語って彼女の心をとかす…というのも、なんか響きづらかった気がしました。クリスチャンはある種しょうもない男なんだけれど誠意はあって、それでシラノは真の友情を感じるようになるしロクサアヌを託せるとも思い至る…はずなんだけれど、そう読み取れるわかりやすいくだりもないので、クリスチャンの死後もシラノがあんなに長くクリスチャンを立ててロクサアヌに真実を明かさないのがちょっと不思議に思えてしまいました。
 もっと全体に、せつなくしかし微笑ましい三角関係として、もっと盛り上がるはずなのになー! 最初は顔から入っても、のちに手紙に表れる人柄に恋したので、ロクサアヌが恋していたのは実はシラノなのである…という皮肉とおかしみ、もの悲しさを、お話としてもっとこの舞台から味わいたかったです。でもこの脚本じゃなー…
 でもせおっちは本当に的確にクリスチャンでしたし、別箱初ヒロインかな?のほのかちゃんがさすがの実力を発揮していました。スチールはぶっちゃけ今ひとつだったと思うのですが、舞台では本当に可愛くて、ちょうどいい感じにほわほしていて、そして歌がきっちり上手い。デュエダンはちょっと場数のなさを感じたかな、でもそれはほとんど仕方ないことですもんね。
 あとはさすがの天寿光希かな。あと不必要なくらいに色気のある朝水りょうね。これまた不必要なくらいにキラキラしているので(この作品には、という意味です。それを抑えるだけの芝居力がない…という言い方もできるかもしれないけれど、それを求めるのは酷でしょう…と点の甘いワタシ)なおさら役不足がひどく見えるかりんちゃんと、やたら一緒にいるのでもう真ん中の芝居が全然アタマに入ってきませんでしたよ…(笑)。フィナーレのセンターは素晴らしすぎました。当人はあの『ベルリン』のみっきぃの役を熱く語るような人なんだから(初新公主演だったのに…笑)、そろそろもっとちゃんとした役を当ててあげてほしいです。それからするとハリーなんて『デビュタント』でちょっと変わった、ニンでない、荷が重かったかもしれない役をちゃんと書いてくれていたのになー…次もパリスはともかく(オイ)マーキューシオは楽しみです。星組はこのあたりのスターさんがぶっちゃけ渋滞しているので、劇団からもいろいろ試されているんだと思います。がんばれ!
 みきちぐとかかなえちゃんとかが上手いのは、まあ知ってます、という感じでした。

 まあでも今は公演が無事行われることが大事、というのもあるので、今日が千秋楽かな? 無事の完走をお祈りしています。
 私はこれで今年の遠征納めでした。『SAPA』でそろりと遠征再開したときとはまたいろいろな意味でいろいろな状況が変わっていますが、京都でゾロゾロ降りていく旅行客を見送り、目をつぶってでも歩けそうな新大阪から中津までを進み、お友達オススメのラーメン屋さんに並んで塩チャーシュー麺をいただき、電波の良くなったDCで誰ともバッタリせず静かに観劇し、終演後はまた駅構内のお寿司屋さんでごはんして、帰りの新幹線ではちょっとポメってあとは爆睡、というシュッとした遠征でした。なんせ検査できないので保菌していないこと、拡散していないこと、罹患しなかったことは祈るしかないわけですが、日々うがい手洗い手指消毒に努めて引き続き生き抜きたいと思います。
 来週の宝塚観劇納め、再来週の鑑賞納めも無事に終えられますように。そして良き新年を迎えられますように…!





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