駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『渇いた太陽』

2013年12月27日 | 観劇記/タイトルか行
 シアタークリエ、2013年12月26日マチネ。

 大女優アレクサンドラ(浅丘ルリ子)は次第に美貌が衰え人気もなくなり、ついに映画界に嫌気がさして失踪する。ビーチボーイをしていたチャンス(上川隆也)と出会い付き人に雇うと、南部の町セント・クラウドへ逃避旅行に出かけるが、実はチャンスはアレクサンドラを利用してハリウッドで名声を得ようと目論んでいた…
 作/テネシー・ウィリアムズ、翻訳/平田綾子、演出/深作健太。1959年ブロードウェイ初演、62年映画化。全2幕。

 老いた大女優と野心家の若い男、ということでは『サンセット大通り』みたいな話なのかな、となんとなく思っていたのですが、うん、さすがテネシー・ウィリアムズでした。そして『サンセット~』が女優の話ならこちらは男の話、なのかなあ。でも『サンセット~』の方が好きです。この話では男の犠牲になったのはむしろヘブンリー(内田亜希子)だと思いますが、なんのフォローもないしすごくぞんざいな扱いしかされていないのが私には腹に据えかねました。
 一幕が短くてほぼ主役ふたりしか出ていなくて、あらすじにあるような設定は実はあまり説明されていなくて、なんのためにある場面なのかよくわからなかったのも、私がやや退屈した理由だったかもしれません。
 二幕になると人がわらわら増えて猥雑になり、シュールな笑いも生まれるようになるのですが、客席はけっこうもっとベタに笑っていて、「え、これってそういうふうに笑っていい事態じゃなくない?」と私はけっこう違和感を感じました。そのギャップとか温度差についていきづらかったのもしんどかった。
 そしてオチがとてもテネシー・ウィリアムズだったところが、なんというか、もう…
 この作品は単に「青春は甘く美しい、そして早く過ぎ去り戻らない」なんて話ではないと思うのだけれど、では何を伝えようとしているのかと考えると、それが現代日本の我々に理解しやすいかというとどうかなあ、難しいのではないかなあ、と微妙に感じました。
 あと、浅丘ルリ子はぴったりだったと思うけれど、チャンスはもっと青二才の役者が扮した方がよかったのではないかしらん? 上川隆也はもちろん上手かったけれど、でも無鉄砲な若造にはやっぱり見えないよ…だからあの暴走っぷりが理解しがたかった。残念。
 かしちゃんはものすごい早変わりもある二役をすごく上手くやっていて感心しました。ミュージカルもストプレも上手いよね。主演ばかりやっているわけでもないし、息長く活躍できるいい女優さんになりつつあるようで嬉しいです。

 これが今年の観劇納めでした。





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『マクベス』

2013年12月27日 | 観劇記/タイトルま行
 シアターコクーン、2013年12月25日マチネ。

 11世紀中頃、スコットランド。ダンカン王(中嶋しゅう)に仕えるマクベス(堤真一)とバンクォー(風間杜夫)はノルウェイ軍に勝利を収めた帰り道、荒野で三人の魔女(三田和代、江口のりこ、平田敦子)に出会う。そこでもたらされたのは、「マクベスはコーダーの領主になり、やがて王になる」「バンクォーの息子は将来の王となる」という予言だった…
 原作/ウィリアム・シェイクスピア、翻訳/松岡和子、演出/長塚圭史、美術/池田ともゆき。全2幕。

 劇場の中央に六角形の舞台を組んで行われる芝居で、現代的な服装をした登場人物もいる、抽象的な演目でした。
 それはそれで素敵だと思うし、シェイクスピアの時代に囚われない本質というか、台詞の美しさを朗読として楽しむような部分がすごく強調されていてよかったと思いました。
 ただ、それは一方で、現代に生きる観客の共感や感情移入を阻みがちになるものだと思うし、その抽象性を堪能しつつもドラマとしては他人事に感じられて退屈を覚えなくもないという事態になりました。私はね。
 でもとてもシンプルにシェイクスピアらしい舞台に仕上がっていたと思いましたし、そして自分はこういうシェイクスピアはわりと苦手なんだな、ということが確認できたので、いい観劇だったと思っています。

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『SEMINAR -セミナー-』

2013年12月27日 | 観劇記/タイトルさ行
 紀伊国屋ホール、2013年12月22日マチネ。

 有名作家レナード(北村有起哉)による、10週間5,000ドルの授業。生徒四人それぞれに作品を書かせ、レナードがそれを読んで講評するという形式で授業は進められる。レナードはケイト(黒木華)、ダグラス(相葉裕樹)の原稿はさんざんにこき下ろすが、たった2枚の原稿を提出したイジー(黒川智花)のことは高く評価する。作品ではなく彼女の性的魅力に惹かれているのは誰の目にも明らかだ。そしてマーチン(玉置玲央)だけがいつまでも作品を出さない…
 作/テレサ・リーベック、翻訳/芦沢みどり、演出/栗山民也。全1幕。

 とてもスリリングで、おもしろい舞台でした。生徒も先生もみんなその役にしか見えなかった、すごいなあ。
 最終場だけがレナードの部屋で、あとはずっとケイトの部屋が舞台で話は進み、おもしろいんだけれどはてなんの話なのか、どんなオチが待つのか…となかばヒヤヒヤ見守りました。最終場ひとつ前の場がオチってのもアリだったのかも…とか思ったらもう一押し、ダメ押しされました。
 作家の業とか創作の業、というのはテーマとしてはけっこうありがちなものでもあると言えると思うのですが、才能のある者がメフィストフェレスと化して次の才能ある者を見つけてとりついていく、その壮絶な輪廻の一端を見せられたようで…怖かったし、おもしろかったです。
 今年は幕なしストレート・プレイにアタリが多かった気がするなあ。


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