駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『モンテ・クリスト伯』

2013年12月14日 | 観劇記/タイトルま行
 日生劇場、2013年12月12日ソワレ。

 19世紀前半、フランス。若き航海士エドモン・ダンテス(石丸幹二)は航海の途中で病に倒れた船長から使いを頼まれる。エルバ島に立ち寄って、ある人物に宛てた手紙を受け取り届けてほしいというのだ。航海を終えてマルセイユに戻ったダンテスは、亡くなった船長に替わり次期船長に推薦され、愛する美しい婚約者メルセデス(花總まり)との輝かしい未来が広がっていたが…
 原作/アレクサンドル・デュマ、脚本・作詞/ジャック・マーフィ、音楽/フランク・ワイルドホーン、演出/山田和也、翻訳・訳詞/竜真知子。2009年初演、今回が日本初演。全2幕。

 ワイルドホーン楽曲全開で圧巻でしたが、キャストがみんな歌上手だったのでなかなか堪能できました。ヒロインのハナちゃんもすっかり宝塚の娘役のソプラノ歌唱からミュージカル女優歌唱にシフトしていて、驚きましたが遜色なかったです。声量というかマイク音量が足りなく聞こえたのは残念でしたが。
 ただ、全編とにかく歌ばかりで、個人的にはもっと台詞芝居場面が見たかったので、全体的に大味に感じられてしまったのは残念。また、スペクタクル・ミュージカル!みたく打つにはアトラクション性が足りないというか、ぶっちゃけセットがちゃちに見えました。
 お話は長大な原作からのきり足り方や省略の仕方が宝塚版『モンテ・クリスト伯』と似ていたので、何か元になる映画とかがあったのかな?という印象。総じて、宝塚版ってよくできていたんだな、とかえって印象が深くなるという不思議な現象も起きました。うるさいなと思っていた「復讐は虚しい」というメッセージや神の恩寵云々というくだりもなくなってみると寂しいものですし。

 ジャコボ(岸祐二)がよかったわー、キタさんがやっていた役ですよね。ヴァランティーヌ(ジェイミー夏樹。最近ハーフがブームなのか?)はアニメ声みたいなのが特徴なのか単に下手なのかわからず、ダンテスに決闘をやめさせる力があったように見えなくて残念でした。アルベール(大川勇)はいいボンボンっぷりだったんだけれどな。
 ルイザはダブルキャストでしたが濱田めぐみ回を見ました。ジャコボと並んで復讐なんかしないで今と未来に生きようぜ、というキャラクターだったのに、ダンテスと色恋で絡む芝居がなくて残念でした。
 モンデゴ(岡本健一)がカーテンコールで投げキスを気障に決めたのでが、このしょうもないキャラクターだけに似合っていてよかったです。
 命乞いをしたモンデゴにダンテスが剣を下ろし、だけどモンデゴが卑怯にもそこに斬りかかったのでジャコボがダンテスを庇ってモンデゴの息の根を止める…のは宝塚版と同じ流れですが(だったよね?)、私は観ていてメルセデスが剣を取ってもいいのかも、とか思いました。
 宝塚版と違ってアルベールは彼の子供なので、息子の父親を殺すことになるという意味では残酷な展開かもしれませんが、愛するダンテスを救うためでもあるし、モンデゴのために犠牲にさせられた年月の復讐でもあるし、長く共に暮らして沸いた情愛の清算として、死に場所を探しているようでもあるモンデゴへの最後の慈悲として、メルセデスが手を下してもよかったのかな、と思ったのです。
 復讐のためとはいえダンテスがヴィルフォール(石川禅)やダングラール(坂元健児)を死に至らしめるために手を汚していることもまた確かなのであり、今後の人生を共にするためにもメルセデスもそのくらいまでは罪を負ってもいいのではないか、とか思ったり、したのでした。

 ともあれまたひとつ、長く定番レパートリーとなるミュージカル作品が生まれたのだと思います。











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『スクルージ』

2013年12月14日 | 観劇記/タイトルさ行
 赤坂ACTシアター、2013年12月10日マチネ。

 経済の絶頂期を迎えていた19世紀のイギリス。クリスマス・イブに沸くロンドンの街には賛美歌が流れ、誰もが陽気な気分に心ときめかせていた。だがチープサイドにあるスクルージ&マーレイ商会の雰囲気は暗いまま。ケチで偏屈、暖かい心や愛情とはまったく無縁の独り者の老主人エベネザー・スクルージ(市村正親)はクリスマスなんて馬鹿馬鹿しいと思う男だった…
 原作/チャールズ・ディケンズ、脚本・作曲・作詞/レスリー・ブリカッス、演出/井上尊晶、翻訳・上演台本/劇団ひまわり文芸演出部、訳詞/岩谷時子。1970年代に製作されたミュージカル映画をもとに1992年初演、日本初演は1994年、14年ぶりの再演。全2幕。

 以前一度観ていて、おもしろく感じた記憶があり、ロンドン版CDも持っているのですが、今回はなんか演出としてシャープでないな、という印象を持ってしまいました。
 まあ最後は泣くんですけれどね。卑怯ですけどね、ベタですけどね、でも泣きますよね。

 冒頭、スクルージが高利貸であること、冷酷でがめついこと、がきちんとクリアに説明されないまま、なんとなく類推できる程度のままにスタートするのが私は気に食わないんだと思うのです。話は知っているんだけど、でもまず前提条件をしっかり確認するところから始めてくれないと、その後の変化がきちんと楽しめないじゃないですか。
 確か前回も似たようなことを感じたんだけれど、私は借りたお金は返すべきだと思うし、だから取立てに歩いているスクルージさんは別に悪い、間違ったことをしているわけではないのになあ、とか思ったんですよ。ただ利子が法外に高いとかみんながいろいろつらいことを免除されるクリスマスの日にも容赦なく取り立てるというのが人情がないことではあるけれど、お金を借りたまま返しもせずスクルージさんをひどいひどいと罵るみんなの方がひどいなとか思ったりもするわけですよ。
 だからそのあたりをうまく説明して誘導してくれないと、スクルージさんが死んで棺桶の上で「どうもありがとう」を歌うメンタリティがない優しい日本人としては、引いちゃうしそのシニカルさに笑えもしないし、だからそれでスクルージさんが改心しても感動しづらかったりするんですよね。
 それがもったいないなと思いました。

 ただ、甥のハリー(田代万里生)と若き日のスクルージを同じ役者が演じていたり、若き日のスクルージの恋人イザベル(笹本玲奈)とハリーの妻ヘレンを同じ役者が演じていたり、過去のクリスマスの妖精(愛原実花)か実はスクルージの姉ジェニーでありハリーの亡くなった母親であり、そして同じ役者がボブ・クラチット(武田真治)の妻を演じる、というおもしろさは今回やっと堪能できた気がします。
 特にミナコはよかった! ジェニーは母性の象徴のような存在であり、だからこそ慈愛そのもののような妖精にもなっているのだけれど、一方で貧しい現実の暮らしに生き続けたらちょっとすさんだおかみさんクラチット夫人になっていた、というのはすごくわかりやすいしおもしろい。スクルージの夫人へのプレゼントが「奥さんには現金」というのは笑いを誘いました。
 歌上手キャストがことさらでなくアンサンブルに徹して作っている感じもとても素敵でした。でも舞台装置は平凡だったかな? なんかもっとおもしろくなる演目だな、と思いました。
 慈善とか博愛とかって特に日本人にはわかりづらい感覚かなと思うのですが、情けは人のためならず、ということわざに通じるのかな、とも思いました。慈善と義万、自己満足は実はやっぱり切っても切れないのだと思う。だからスクルージは以前は頑なに寄付をしなかった。
 でも、偽善や欺瞞や自己満足を受けていれて寄付をできるようになったのです。自分がいい気分になる、そのハッピーさは回りまわって世の中を優しくし、最終的には自分に返ってくるのです。そうやってみんながちょっとずつだけ幸せになる道が確かにある。これはそれを発見する物語なのかもしれません。

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宝塚歌劇月組『メリー・ウィドウ』

2013年12月14日 | 観劇記/タイトルま行
 日本青年館、2013年12月9日マチネ。

 1905年、ポンテヴェドロ王国。軽騎兵隊中尉のダニロ・ダニロヴィッチ伯爵(北翔海莉)のもとに、国王から国家存亡にかかわるという重大な任務が下され、ダニロはパリへと向かう。ポンテヴェドロ随一の大富豪グラヴァリ氏の莫大な遺産を相続した未亡人ハンナ(咲妃みゆ)が、外国人と再婚して遺産が海外に流出するようなことにでもなったら、小国であるポンテヴェドロは破産だというのだ…
 原作/フランツ・レハール、脚本・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治。ウィーンでは年末恒例となっているオペレッタのミュージカル化。全2幕。

 プログラムを見たときに場数の少なさにおやと思ったのですが、確かに元のオペレッタも二幕二場とか三幕三場とかのごくごく単純なお話だったな、と思いました。キャラクターはけっこう多彩なので、よりコンパクトにして大劇場の芝居にもできるかもしれませんね。今回はカンカンなどショーアップしてたっぷりのんびりやっていました。
 楽しい、たわいないと言ってもいいハッピーなコメディで、適材適所の役者も楽しんで演じている感じがよく出ていて、楽しかったです。ただ個人的には客席が受けすぎという気がしたというか、まだおもしろくもないのに笑う気満々でつまらないウケ方をしているのが興醒めでした。水を差すようだけれど楽しいアドリブも内輪受け、リピーター向けになりすぎてしまわないよう、やってくれるといいのにな、とは思いました。私はちゃんとおもしろければ笑いたいし、そうでないなら真面目に観たいのです。

 硬軟なんでも上手いみっちゃんですが、もちろんほぼ原曲ままの難しい歌唱は難なくこなしていましたが、期待していただけにもうひとつ感動が足りなかった、味わいが足らなかった…と思ってしまったのはハードルあげすぎかしらん。白い軍服も素敵な着こなしていたけれど、やっぱりもっと美形に見えるメイクはできる気がするなあ。私は正直この先の彼女のトップスター就任はないだろうと思っていますが、そういうこととは別にがんばってほしいし輝いてほしいので、満足してしまったり「こんなにやっているのに」みたく思わないでいてくれるといいなあ、とか思います。実力的にはなんの問題もないのだろうし、トップに十分、という声も聞くけれど、みんな本当にそんなにファンなの? ちゃんと席埋める気あるの?とかも思うし、無責任に持ち上げない方がいいのでは…とか思うのでした。
 ヒロインのゆうみちゃんは大健闘だったと思います。もともとすでにして仕上がっているような娘役さんではありますが、若いとはいえ人妻、というか未亡人役、華やかで押し出しもいいマダムっぷりを演じてみせるのはまだまだなかなかに大変だったと思います。が、とてもよかった。歌もまだまだ細いながらがんばっていてよかったです。組替えが発表されましたが、一番その後のコースが想像しやすい流れでもあるので、がんばって花開いてほしいです。
 原作とはちょっと趣が変わっている二番手格のカミーユ・ド・ロション(凪七瑠海)は…残念ながら私にはいつものカチャにしか見えませんでした。歌もがんばっていたけれど、どうも上手く聞こえないタイプのそんな性質というか喉に思えてきました。冒頭の台詞は笑うところなの? 本人は大真面目なんだけれどおもしろくなっちゃってるってことなの? 実は私はここの演出がよくわからず、だからこのキャラクターを捉えられないままに終わってしまったのかもしれません。
 その恋人ヴァランシエンヌ(琴音和葉)、上手いのは知っていたけどこんな大きな役は初めてなのでは? もっとトウが立った作りになるかと心配していたのですが、とてもキュートで、でも嫌味がなく、夫を捨てて元カレに走る流れがハッピーエンドに見えたのは素晴らしかったと思います。苦労はしそうだが支えてやってくれ(笑)。

 敢闘賞はツェータ男爵(星条海斗)のマギーでしょう。すでに喉がつらそうだったけれど、前回のガニマールに続きコメディリリーフをバッチリ務めて出色でした。決して老け役とは言い切れない、でも芝居を支える側に回る、というのが求められていることなんじゃないのかなあ、それをきっちりやって見せていて素晴らしかったです。
 それからもうひとり、ダニロの従者ニエグシュ(暁千星)のありちゃん。台詞の声はまだまだなんだけれど、そしておもろい役とはいえもっと顔が見える、そして綺麗に見えるメガネは研究してもいいのでは、とも思ったけれど、歌がなかなかしっかりしていたのには驚き、知ってはいたけどダンスが素晴らしいのは本当に場をさらいました。のびのび育てよ!

 お金はないけど貴族、なゆりやん、ゆうきくんもよかったです。が、もうちょっとだけはっちゃけられるとよかったのかな…このあたりで便利使いされそうなのももったいなくて残念で心配です。
 まんちゃんはガンガン踊っていてよかったです。まゆぽんもホント上手いなあ。
 ルクシッチの春海ゆうくんも初めて認識しましたが、いい仕事をしていて驚きでした。

 ところでこの作品は正式名称はもしかして『THE Merry WIDOW』なのでしょうか。それともこれは飾りのロゴ? 開演アナウンスでみっちゃんは「ザ」と言っていなかったような気がしたので、カタカナ表記を正式タイトルとすることにしました。間違っていたらすみません。

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Q/一番好きなガンダム作品を教えて下さい。

2013年12月14日 | 日記
Q/一番好きなガンダム作品を教えて下さい。 (ザ・インタビューズより)



A/
 いわゆる「ファーストガンダム」です。

 つまり、1979年に全43話のテレビアニメが放映され、81年から劇場版三部作が順次公開された『機動戦士ガンダム』のことです。
 ただし私はこの「ガンダム」こそが「ガンダム」だと思っているので、わざわざ「ファースト」とつけるのが嫌だと思っているくらいのファースト派です。
 便宜上、仕方なくこう呼称しますが…ファースト派にはこういう感覚の人は多いのではないでしょうか。

 シリーズとしては、『ZZ』までは見ています。
 あとは申し訳ありませんが、まったく追っかけていません。

 もちろんさすがに本放送は見ていなくて、多分三度目くらいの再放送で引っかかったクチだと思います。
 劇場版はそれぞれ映画館に行き、土曜夕方のサンライズアニメを追っかけるようになりました。
 幼いころから弟と一緒になってロボットアニメを、自分では魔女っ子アニメを見て育ちましたが、「ガンダム」からは、子供のような見方をしなくなりました。
 オトナになったというか、オタクになったというか(^^;)。「幼年期の終わり」ですね。
 SFを読むようになったし、スペースシャトルががんばっていたし、カール・セーガンの『COSMOS』がブームになったりしていて、スペース・コロニーってすぐにも実現するんだろうとか思っていました(^^;)。
 アニパロ(もはやこの表現自体がレトロすぎる…)とかも、浸りましたねえ。

 朝日ソノラマ文庫から出た3巻組のノベライズ版も大好きです。未だに愛蔵しています。
 劇場版はドラマ版LPを持っていましたよ!
 LPって知っていますか、デカいサイズの方のレコード盤ですよ!(笑)
 ドラマ版というのは、宝塚歌劇でいう実況CDみたいなものです。 
 BGMを中心に編成されたサントラ版ではなく、ストーリーが、台詞が収録されているんです。
 家庭用ビデオデッキ普及以前のアイテムですよね(^^;)。
 いやさすがにビデオはあったかな、でもLDが買えなかった…
 安彦良和氏の画集も何冊か持っています。
 先日完結した『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』も揃えています。

 もちろんシャアを愛しているのですが(もちろんなのか)、キャラ萌えより何より、世界観にシビれました。
 宇宙空間で生活するようになれば人間は変わる、という当たり前のようにも思える、思想に。
 その上に花開くロマンとドラマに。
 理系脳でオタク気質、という自分にヒットしないワケがないよね…

 というわけで自分を形成する思春期にぶち当たった作品として、「ガンダム」は厳然と輝いているのでした。


(2012.1.29)

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