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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

一条ゆかり『デザイナー』

2010年02月17日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名あ行
 集英社文庫。

 トップモデルの亜美は実の母を知らない。自分を捨てた母がデザイナーの鳳麗香だと知ったとき、交通事故に遭いモデル生命を断たれる。復讐のためにデザイナーを志した亜美だが…

 「りぼん」掲載時、夢中でしたね。当時、自分の漫画を描くときに、洋館といえば朱鷺の家の真似をしていました。今から考えてもものすごい作品ですね。おとめチック全盛の中で浮いてなかったんでしょうか。

 ちょっと前は、エンディングが嫌いでした。亜美は死に、朱鷺はすべてを忘れて、何もなかったことになってしまう、という“物語”が嫌だったんです。さんざんどったんばったんやっといて、でも最後には何も残らない、むなしいよね、でもこんなもんじゃない? 人生なんて、とかぬかす作品が私は死ぬほど嫌いなんですよ。
 でも今は、何もなかった、何も変わらなかった訳ではない、ということが見えます。
 鳳麗香が、再起を期して、パリにいる。彼女は亜美との出会いを通して、自分がしてきたことを悔やみもし、それでもより強い人間になって、前を向いて歩き出している。彼女は違う人間になっているし、新しくなった彼女が作り出すファッションは今までのものとは当然違うだろう。何もなかった訳ではないのだ…と、そういうことだと納得できます。

 余談ですが、明とアリサの結婚は不幸だと思います。責任を取る、という言葉は立派だけれど、この先、明に新たな恋愛が訪れたときに、絶対にそちらを選びたくなるはずだと思うんです。恋に落ちることは当人にもどうしようもないし、そのとき責任を取りきれなくなるんじゃないかな。今でもアリサを嫌いな訳じゃないし、長く暮らせば情もわくし愛も生まれるでしょうけど、恋を経ていない愛は新たな恋の前にはかなり無力なのでは、と思ってしまう私です。
 ま、こんなことになる前にまずきちんとした避妊だよ、男性諸君。ところで、身代わりだかなんだか知らないけれど、こういうときにホントに勃つのかね? 不思議だよ。

大島弓子 『綿の国星』

2010年02月15日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名あ行
 白泉社文庫、全4巻。

 時夫に拾われた白いチビ猫は、いつか自分が人間になれると信じている。作家のお父さんと猫嫌いのお母さんと時夫との生活の中、チビはどんどん成長していって、世界のたくさんのことを知っていく…

 「大島弓子はこんな万人受けするような甘ったるい作品を描いてちゃ駄目だ、もっとシュールで哲学的なものをやらなきゃ駄目だ」というような評論を読んだことがありますが、お門違いですね。ただのファンタジックな動物擬人化漫画とは一線を画した名作です。
 個人的には避妊手術を施された雌猫がなくしたものを思い出そうとするエピソードが好きです。

岡崎京子 『pink』

2009年12月16日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名あ行
 マガジンハウスマグコミックス

 OLのユミはピンク色が大好きでワニを飼っていてホテトルのバイトをしている。父の後妻は嫌いだが、その連れ子の妹ケイコとは仲良しだ。義母のツバメで作家志望の大学生ハルヲと知り合い…“愛”と“資本主義”をめぐる冒険と日常のお話。

 この人の作品で最初に読んだのがこれでした。幸福な出会いでしたね。
 普通だと、こういうオチが嫌いなんです。ハッピーエンドの一歩手前にその崩壊をぶつけて突き放して終わりっていうやつ。でもそれがこの作品ではありかなとも思えます。ユミやハルヲみたいなある種の意味でまっとうな人々が幸せになりきれない今の世の中の方が間違ってるんだぜ、というメッセージを感じるからです。違うかな?

岡崎京子『ジオラマボーイ パノラマガール』

2009年12月15日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名あ行
 マガジンハウスマグコミックス

 新興住宅地を舞台にした、春子ちゃんと健一くんのボーイ・ミーツ・ガール物語。

 岡崎京子の作品は、私自身はこういう青春時代をすごした訳でもないくせに(余談ですが、青春時代と学生時代は決してイコールではないと私は考えています)、いつもいつも
「ああ、それっぽい青春だなあ」
 と思わせられます。
 春子が花柄のポットにゼツボー的になったり、マジメでおとなしぽかった健一がいきなり先生殴って学校やめちゃったり。アンハッピィ・バースディ・プレゼントしかり、ああつまんない下らないしかり、生きててよかったしかり。氏があとがきで書くように「礼儀正しくて好感がもてる」とはとても思えませんが、すごく愛している作品です。
 でもね、ひとつだけ。ラストシーンの最後のネーム。
「ホントにホント! ホント!」
 の台詞に続く言葉は、
「本当だよ」
 であってほしかったと思ってしまうのは、私が心弱いからでしょうか。ウソかホントかキスしているふたりの姿を描いていないだけに、
「本当だよ」
 って言ってほしいんです。だめかなあ、やっぱり。(2001.3.6)