映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

やさしい人(2013年)

2014-11-24 | 【や】



 ちょっとだけ名の知れた中年ミュージシャン、マクシムは、自立しきれず親の家に居候。若い女性メロディと束の間恋に落ちるが振られ、荒れるマクシム。どんづまりの彼がとった行動は、、、。イタ過ぎるだめんず映画。

☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜

 いきなりですが、、、何なんでしょうか、あのマクシムを演じるヴァンサン・マケーニュという俳優さんの髪型は・・・。毛の量が恐ろしく少ない長髪で、さらには後頭部に髪がなくて、なんつーか、カッパみたいなんだよなぁ。どうしてもそこに目が行っちゃう。

 ま、それはさておき。、、、個人的に、マクシムのようなイイ歳こいて自立しようとしない大人が好きになれない私には、何だか不思議な作品でした。意外に嫌悪感を抱かなかったのです、マクシムに。

 某全国紙の夕刊に掲載している沢木耕太郎の「銀の街から」で紹介されていたのだけれど、沢木の文章より、掲載されていた作品のショット--浴槽に浸かるマクシムをじっとお座りして見ている犬--もう、これで劇場行きが決まりでした。これ、ポスターにもなっていたのですねぇ。ホント、ステキなショットだと思います。

 そう、この犬、カニバルが、結構いい味出しています。ヴェルレーヌの詩が好きな犬、なんて、なかなか憎いじゃないですか。孤独な捨て犬だったのをマクシムの父親が拾った、ってことなんだけれど、どこかマクシムの境遇に通じる感じがします。

 マクシムも、ちょっとばかり名が知れた程度で、決して自分が納得できるミュージシャンではないし、今のささやかな名声だってこのままじゃすぐに消え去ってしまうことが彼には分かっている。メロディとの恋は、そんな彼の孤独感や焦燥感を、一時的に忘れさせてくれるものだったのかも。

 メロディに振られた後の彼は、名実ともにただのストーカーなんだけれど、私がイタいと感じたのは、ストーカーになった後より、むしろその前かな。メロディが通うダンススクールのレッスンに乱入して一人踊り狂うシーンがあるんだけれど、もう、あれはサイテーだと思ってしまいました。私がメロディだったらドン引きもいいとこです。

 、、、なぜそんなにイタいと思ったか。まあ、冒頭書いたとおり、異様なカッパみたいな髪型の頭を大げさに振りながら踊っている姿は、ハッキリ言って「醜い」の一言だったからです。踊りも何だか究極の自己陶酔にしか見えず。醜い男の自己陶酔ダンス、こんなもん、誰が見たいかっての。ほとんど、気持ち悪いの域です。

 ただ、マクシム自身に嫌悪感を抱かなかったのは、多分、後半、彼がストーカーになっちゃったからだと思うのですね。なんかもう、破れかぶれ的な、メロディにすがるしか生きる道がない、ってことを体現しているその様が、もうイタいもクソもないというか・・・。そうか、あなた、そこまで追い詰められていたのか・・・、みたいな。

 形は違うけれど、人生折り返し点を過ぎれば、誰だって、そういう「どうしようもなさ」みたいなものって抱えていると思うのです。若い頃はそれでも、まだ自分の人生の可能性を信じることができたし、そこに逃げ道を見出せた。でも、もうこの歳になると、そんなことあり得ないって直感で分かってしまう。だから、何かにすがりたくなる。すがりたい何かが、この手からすり抜けようとすればするほど執着してしまう、そういう、心のどうしようもない動きに、マクシムは外面も構わず正直にしたがって行動した訳です。

 それで他人を傷つけているのだから、褒められたことじゃないけど。こんなサイアクな形になって表出するケースは少ないけれど、中年の男女の誰しも、みんなあると思うのだよね、人生そのものに対する焦りが。

 沢木は、マクシムを定型から外れた男の成長物語的な感じで書いていたけれど、まあ、確かにそういう見方もあると思うけれど、マクシムがレールを外れた人間の象徴とは、私には思えなかった。定型・非定型を問わずだと思うのだよね、こういうの。むしろ、定型にある人の方が、こういうのは自覚のないところで疼いている傷なんじゃなかろうか、と。

 同じ女性としては、メロディみたいなタイプは嫌いなんで、ああいう女に人生振り回されるのは、男としてサイアクな選択だとは思いましたが。もっと優しく賢い女はゴマンとおりますよ、世の中に。

 ま、良い作品だとは思いますが、何となく、好きとは言い難いので、★は少なめです。

 

生きるってタイヘンだ・・・。嗚呼。




  ★★ランキング参加中★★
クリックしていただけると嬉しいです♪
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする