映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

フランス組曲(2014年)

2016-07-22 | 【ふ】



 第二次大戦下、ドイツに占領されたフランス。中部の町ビュシーには、パリから避難民が殺到する中、ドイツ軍が駐留することに。町一番の豪邸には、出征した夫を待つリュシル(ミシェル・ウィリアムズ)が、気位の高い姑(クリスティン・スコット・トーマス)とともに暮らしていた。そこにドイツ軍中尉ブルーノ(マティアス・スーナールツ)が滞在することになる。

 ブルーノは、リュシルや姑に紳士的に接し、また、軍人になる前は作曲家だったと言い、リュシルの家にあるピアノを奏でることもあった。時折り聞こえてくるブルーノの弾くピアノの音に聞き入るリュシル。こうして、2人は次第に惹かれ合っていくのだが、、、。

 原作は、アウシュヴィッツで亡くなった作家イレーヌ・ネミロフスキーの未完の遺稿で、戦後60年を経てベストセラーになったとか。未完だったせいか、ラストはかなり??な展開なのが残念。

 

☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 劇場公開中に行けずじまい、、、。やっとこさ、DVDで鑑賞しました。


◆“ロミジュリ”の発展系のオハナシ

 国と国とが敵対する関係でありながら、男女が互いに惹かれ合う……というわけで、これはスケールの大きい「ロミオとジュリエット」と言えましょう。悲恋の定番です。しかも、本作はリュシルが人妻ですから、さらに“不倫”要素が加わります。

 まあ、不倫といっても、リュシルの場合、夫が出征したのは結婚して間もないようですし、そもそも、よく知りもしない男と死を目前にした実父の言うままに結婚したということで、夫婦間の愛情以前に、2人の関係がそもそもちゃんとできていない状況で放り出され、宙ぶらりんの状況だったわけで、これは夫以外の男を好きになるなと言う方がムリな話です。

 なので、戦地にいる夫は、リュシルにとって、というか本作ではあまり枷にはならないですよねぇ。その代り、枷になるのが、こわーい姑です。あとは何といっても最大の枷が、惹かれる相手の属性(憎き敵国の軍人)。枷が大きいほど恋は燃え上がるものです。

 もし、日本が、例えば中国かロシアに占領されてしまって、中国かロシアの軍人が我が家に滞在したら、、、。その軍人はなかなかのイケメンで紳士的、なおかつ知的。こわい姑が目を光らせてはいるけど、戦地にいる夫に対する思い入れは希薄で、来る日も来る日もそのイケメン軍人が家の中をウロウロしていたら、、、。しかも、向こうもこちらに気がある様子。……ということを妄想してみましたが、やっぱり、夫への愛情の度合いで、答えはゼンゼン変わってくるだろうな、と思いました。夫を愛していれば、イケメンだろうが知的だろうが、恐らく眼中に入ってこない。でも、夫に対して愛情がほとんどなく、なおかつ、夫と正反対のタイプの軍人だったら、、、、これはリュシルの気持ちが分かっちゃうかもですねぇ。

 おまけに、本作では、夫には、実はリュシルと結婚する前から愛人がおり、子どもまでいたと途中で分かっちゃう。しかも、姑も公認だったという、、、。これで、リュシルの心のブレーキは外れましたねぇ。自分も好きじゃないのに、そいつに前々から愛人がいたんなら、貞節を守るのバカバカしいと思うでしょ、そりゃ。ブルーノに一気に傾くのもむべなるかな、という感じです。

 なんというか、こういうリュシルの心の動きに説得力を持たせている構成がニクいなぁ、と思います。


◆サイドストーリーも良い

 ただ、本作は、2人の悲恋がメインストーリーのはずなんですが、これは割と薄味で、むしろ、サイドストーリーである、サム・ライリー演じる小作人夫婦の話の方がインパクトが強いです。

 ブノワ(サム・ライリー)は、貧しい小作農で、その家にはブルーノの部下ボネ中尉が滞在しているのですが、このボネが、まあ、かなりのイヤなヤツで。ブノワの奥さんマドレーヌに乱暴しようとし、ブノワに殺されちゃうんですが、ここから、話が一気に緊迫します。ブノワを捜索するドイツ軍、匿うリュシルと姑、密告する町長夫人と、それぞれの思惑が交錯する。

 特に、町長夫人が密告したことで、結果的に、ブノワが見つからないのは町長の責任とされてドイツ軍によって銃殺刑に処せられるという展開は、恐ろしくてゾッとしました。しかも銃殺の現場で指揮を執ったのはブルーノです。、、、この町長夫妻も貴族の出で気位が高く、夫人が密告したのも、ドイツ軍に優遇してもらうためだったのですが、裏目に出ちゃうという皮肉。こういう、生死が紙一重という出来事が、実際にも多々あったのだろうなと思わせるエピソードです。

 こういった、サイドストーリーが厚いので、じゃあ、メインストーリーがぼやけているかと言うと、終盤まではそんなことはありません。リュシルとブルーノは、戦争がなければ出会わなかっただろうけど、戦争があったから決して成就しない恋、でもあります。つまり、2人の恋は、戦争の上に成り立っているということ。この恋が成就してしまうことは、やはり、あり得ないのです。

 あり得ないという結論は分かっていても、終盤の展開は、ちょっといただけない。


◆未完の原作ゆえの終盤か

 リュシルと姑に匿ってもらっていたブノワは、自ら「パリに行く」と言い、リュシルが「じゃあ私が連れて行く」と、ブルーノに通行許可証をもらって検問を突破しようとしますが、あることからリュシルを怪しいと勘付いていたブルーノの部下の機転により、検問でブノワが見つかってしまう。でも、ブノワが拳銃で大立ち回りを演じ、そこへ、部下の言葉でリュシルの身が危ないと直感したブルーノが1人オートバイに乗って駆け付ける、、、。検問所のドイツ兵は皆死に、ブノワを乗せた車を運転して走り去るリュシルを、ブルーノは黙って見逃す、、、。そこへ、「彼はその後亡くなったと聞いた」というリュシルのナレーション。

 、、、うーん。これは、どうなんでしょうか。私は、検問でリュシルもブノワも捕まり、収容所で、看守と収容者としてブルーノとリュシルが一瞬だけすれ違う、、、みたいな展開の方が良かったかな、という気がするんですけれども。

 ブルーノは、なんだかんだ言っても、やはり無茶なことをやってしまう破天荒さはないので、いかにリュシルを愛していたと言っても、愛が勝ってしまうことはないと思います。まあ、本作の展開でも愛が勝つ訳じゃないんだけど、なーんか、ものすごい中途半端な感じ。だったら、ブルーノは飽くまで軍人として生き、リュシルを愛で救うことは出来なかった、とした方が、悲惨ですけど腑に落ちます。

 原作がどこまで書かれていたのか分からないんですが、ブノワが匿われていたところ辺りまででしょうか。もし、原作者が最後まで書いていたら、どんな展開になったのでしょう。私は、飽くまで救いのない悲惨な話になっていたように思うんですけど。
 

◆その他モロモロ

 クリスティン・スコット・トーマスが出ているのは知っていたんですが、あの姑が彼女だと認識するのに少々時間がかかりました。老けたとかというより、化粧と髪型のせいだと思いますが、一瞬、ジェレミー・アイアンズが女装したのかと思っちゃいました。まあ、相変わらずの貫録で圧倒していましたが。特に、ブノワを匿うときの彼女は、キリッとして腹を括る感じがよく出ていて素敵でした。

 ミシェル・ウィリアムズは、すごい美人、というわけじゃないけど、何となくはかなげでリュシルによく合っていたと思います。終盤、ブルーノとの恋を吹っ切ろうとする強さを見せるところも好演でした。

 ブルーノを演じたマティアス・スーナールツは、私的にはあまり好みの顔じゃないんですが、気の優しいイイ男にうまくハマっていたと思います。あんなステキな人が身近にいたら、そら、クラッと来ますね。

 一番存在感があったのは、ブノワを演じた、サム・ライリーかも。顔が小さくて長身で、何か、ちょっと小作農っていう感じじゃなかったけど。
 



 



原作を読んでみたくなりました。




 ★★ランキング参加中★★

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 太陽の蓋(2016年) | トップ | わらの犬(1971年) »

コメントを投稿

【ふ】」カテゴリの最新記事