映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ドライブ・マイ・カー(2021年)

2022-01-28 | 【と】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv72095/


以下、公式HPよりあらすじのコピペです(青字は筆者加筆)。

=====ここから。

 舞台俳優であり演出家の家福(西島秀俊)は、愛する妻の音(霧島れいか)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう――。

 2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさき(三浦透子)と出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻(岡田将生)の姿をオーディションで見つけるが…。

 喪失感と“打ち明けられることのなかった秘密”に苛まれてきた家福。みさきと過ごし、お互いの過去を明かすなかで、家福はそれまで目を背けてきたあることに気づかされていく。

=====ここまで。


☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆


 いろんな賞をもらっているらしい本作。昨年公開されたときは、“だってハルキー原作でしょ?”という理由で敬遠していたのだけれど、世間の評判も上々で、劇場公開もロングランしているし、、、ってことで、ミーハー全開で劇場まで見に行ってまいりました。

 オミクロン感染爆発状態なのに、劇場はなかなかの混み具合。実は本作を見た日は、『ハウス・オブ・グッチ』も見ていて、グッチを朝イチで新宿ピカデリーで見て、11:05にエンドマークが出た瞬間にエンドロールも見ずにダッシュで劇場を出、日比谷シャンテで11:45から上映の本作に間に合うよう急いで移動! というギリギリな状態で見たんです。だって、2作とも長いんだもん(グッチも2時間半以上あるし、本作も、、、、)。余裕持って見ようとしたら、帰りが遅くなってしまう。

 ……というわけで、以下、感想です。

~~以下、本作をお好きな方、村上春樹をお好きな方は、お読みにならない方が良いです。悪意はないですが、お好きな方から見れば悪口になっちゃっていますので。~~


◆途中から地味なロードムービーに

 村上春樹原作、、、というので、ちょっと……いや、ものすごく先入観ありまくりで見に行ったわけだけど、意外にも中盤過ぎまでは、面白いと思って見ていた。

 でも、オーディションシーンあたりから、だんだん、じわじわと、、、うっ、、、ダメかも、、、と思い始め、、、、台本棒読み稽古シーンでかなりヤバい状況(気持ちが)になり、一番カギになるシーンであろう、家福と高槻が車の中で語り合うシーンで、ドロップアウト(気持ちが)してしまった。

 これは、ハルキー原作だからとかじゃなく、単純に、登場人物たちがみんなセリフでしゃべり過ぎなのが鼻白んだのだけど、、、でもまあ、まだ、どんなオチをつけるのだろう、という好奇心で見ていることはできた。

 で、いよいよ、みさきの故郷、北海道で、家福とみさきが語り合う(多分、感動するシーンなのだと思うが)シーンで、頭を抱えてしまった。

 家福が涙目で叫ぶセリフ「僕は正しく傷つくべきだった。本当をやり過ごしてしまった。見ないふりを続けた。だから音を失ってしまった。永遠に。生き返ってほしい。もう一度話しかけたい」で、すみません、引きました。

 人は自分と向き合い「正しく傷つくべき」であり、現実を「見ないふりを続け」てはいけなかったのだ……って、これこそが、本作の主題でしょう。私、主題をセリフで回収するシナリオは嫌いなんですよ。そんなの、素人だってできる。

 一応弁解しておくと、小説ではアリだと思う、小説では。小説は、だって、ちゃんと文字に書かなきゃ読者に伝わらないもんね(まんま書かなくてもちゃんと伝えられる小説家の方が好きだけど)。原作でこのセリフがあったとしても、それはイイと思うのよ。

 けれど本作は、映画、映像作品でしょ。映像で見せてよ、と思うわけ。セリフで言っちゃっちゃぁ身も蓋もないというか、、、。そんなのセリフで言うんだったら、3時間もかけんでもええやん、、、と。引っ張った挙句、それかい、、、と、

 せっかく、味わいあるロードムービーになりそうだったのに、途中から脇道へ入って迷走してしまった感じだ。

 もっと言えば、ロードムービーのほとんどは、テーマが「きちんと自分と向き合うことの大切さ」を描いているのであり、そんな「太陽は東から昇るんだよ」なことを涙目で叫ばれてもね。いやだからさ、それをどうやって表現してくれるのかを見に来たんですけど、アタシは、、、と、スクリーンの西島さんに向かって私は心の中で叫んでおりました、、、ごーん、、、。


◆ハルキーは永遠なり。

 まあでも、やっぱしハルキー節はそこかしこに感じましたね。愛し愛されている(?)夫がいるのに浮気する女、とか。ベッドでシナリオのネタを語る女、とか。「もう一人子ども欲しかった?」と今さらなことを夫に聞く女、とか。

 これは好き嫌いなので、貶す意図は毛頭ないのだけど、村上春樹が描きそうな女性像。フシギちゃん系の女、男に都合の良い素敵な女。

 浮気する女のどこが男に都合の良い女なんだ?と言われそうだけど、この妻は、結果的に、命と引き換えに夫に「当たり前のこと」を教えてくれるという、これ以上ない献身を男にしているのだ。修羅場目前にして殺しちゃうところが嫌だよなぁ。なぜ、修羅場を書かない?

 もちろん、夫婦だからこそ言えないこと、言いたくないことがあるのは当然で、家福が音に浮気のことを問い詰められないというのは、分かる。

 浮気する女は、夫に気付きを与えるためにしているんじゃなくて、自分のためにしているのだよ、浮気を。寂しいとか、夫が嫌いとか、そりゃ理由はイロイロだろう。音だって、家福の気を引きたかったから浮気していたんだろう。そこを書けよ、と。何か重大な局面で、女を動かすんだよね、ハルキーは。男を主体的に動かすことがない。音なんか、殺されちゃったもんね。ひでぇ。

 もう、村上春樹の小説は何年も読んでいないので、好き嫌いを語る資格はあまりないのは自覚しているが、私の知っているハルキーの描く女が、やっぱり映画の中に現れて、そこはすごくイヤだった。

 そもそも、ドライブマイカーっていうタイトルもね。自らはハンドルを握らず女に運転してもらっている車に乗っているだけ。「マイカー」は人生だとすれば、自分の人生をドライブしているのは自分以外の人。自分でドライブしない、handleできない、まさにハルキー節ではないか。

 きちんと現実を直視すべきは、ハルキーよ、あなた自身なのでは。いつまで女(だけ)を動かして、現実から目を逸らすおつもりか。女は(特に素敵な女は)そんなに男に都合よく動かないよ。ファンタジーを描いているにしても、いつまでやってんだよ、、、。だから、私の周りでは、ハルキー好きは男ばかりなのだろうけど。


◆その他もろもろ

 西島さんは、一気に飛躍の作品となりましたね。あんまし演技巧者とは思えないけど、誠実そうな雰囲気と、家福のキャラがうまくマッチしていて良かったと思う。才能ある演出家、、、ってのは、ちょっと違うかなぁ、イメージとしては。もうちょっとパッションがあっても良いよね、演出家なら。

 岡田将生は、どんどん階段を上っている。見る作品、どれも良い演技をしていると感じる。作品自体はイマイチでも、彼は光っている。高槻と違って、彼は自分のキャリアを大切にする頭の良い役者だと思うから、是非とも、もっともっと上って行って欲しい。

 愛想のない運転手・みさきを演じていた三浦透子ちゃんにとっても、本作は代表作になるかも。歌も歌っているそうだけど、聞いたことないので、今度聞いてみよう。彼女は、それこそ実力派の、地に足の着いた役者さんになるに違いない。

 そのみさきが、本作のラストシーンでなぜか韓国にいるのだが、、、。ネットでもいろいろと読み解きがされているけど、私も見終わった直後は??となったけど、あんまし深読みする必要はないのかな、と思うに至った。

 家福が広島で滞在する島の家が、とっても素敵で、私もあんな古民家に滞在してみたいわ~、と思って見ていた。東京の喧騒も良いけど、根が田舎者である身としては、やっぱし自然豊かで静かな場所に心惹かれるのも事実。移住したいなぁ、、、などと、途中からそんなことも頭をよぎっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

オスカー獲れるでしょうか? 獲ったらまた大騒ぎですな。

 

 

 

 

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2 コメント

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安全運転 (松たけ子)
2022-01-28 20:55:00
すねこすりさん、こんばんは!
レビュウ、興味深く拝読(^^♪確かに台詞で説明が多かったのが気になりました。台詞も大切ですが、橋田スガ子センセイのドラマじゃあるまいし、映画はやっぱ映像とか俳優の表情、動きとかで観客に判らせたり考えさせてほしいのです。でも私もあんなポエムなこと、日常生活で言ってみたい(^^♪
俳優たちがほんとみんな良かったですよね!西島さんも秀逸でしたけど、岡田将生のこの頃の成長ぶりには目を見張るものがあります。同じマサキならスダよりオカダのほうが好き!また舞台の彼も見たいです(^^♪演劇、いいですよね~。すねこすりさん、また観劇のご予定とか観たい舞台とかおありでしょうか?
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Unknown (すねこすり)
2022-01-28 22:33:20
たけ子さん、こんばんは☆
ちょっと期待値を高くしてしまっていたのか、こんな感想になってしまいました(-_-;)
でも、邦画にしてはハイクオリティのような、、、、。お子ちゃま映画だらけの中で、大人の映画は貴重です。
岡マくんは、海外でも活躍できそうだと思うけど、語学力を問われるのでどうでしょうね。日本でくすぶっているのはもったいない逸材だと思います。
舞台、たまに見ると新鮮で良いですよね。たけ子さんのガラスの動物園の感想、続きも楽しみにして待っていますよ~!
今年は、アーサー・ミラーの「セールスマンの死」「みんな我が子」が立て続けに上演予定なので、ちょっと狙っています。
みんな~、は堤真一主演だし(*^-^*) 数年前に見た「るつぼ」もまあまあ良かったので。
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