映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

SKIN/スキン(2019年)

2020-07-19 | 【す】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv70932/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 反ファシスト抗議を行う人々に、猛然と襲いかかるスキンヘッドの男たち。その中の1人、ブライオン・“バブス”・ワイドナー(ジェイミー・ベル)は、十代で親に見捨てられ、白人至上主義者グループを主宰するクレーガー(ビル・キャンプ)とシャリーン(ヴェラ・ファーミガ)の下で、実の子のように育てられた。

 筋金入りの差別主義者に成長したブライオンは、今やグループの幹部として活躍。タトゥーショップで働く彼の体には、鍵十字など、差別的なメッセージを込めた無数のタトゥーが刻まれていた。

 だが、3人の幼い娘を育てるシングルマザーのジュリー(ダニエル・マクドナルド)との出会いが彼を変える。

 これまでの人生に迷いを感じ始めたブライオンは、グループを抜け、ジュリーと新たな生活を始めることを決意。だが、前科とタトゥーが障害となり、なかなか仕事が見つからない。さらに、彼の裏切りを許さないかつての仲間、スレイヤー(ダニエル・ヘンシュオール)たちからも日々、脅迫が続いていた。

 家族の安全と自らの幸福との間で悩むブライオンに、反ヘイト団体を運営するダリル・L・ジェンキンス(マイク・コルター)が、転向の手助けを申し出る。ある裕福な女性が、彼のタトゥー除去に資金を提供するというのだ。過去の自分と決別するため、ブライオンは、計25回、16カ月に及ぶタトゥー除去手術に挑むが……。

=====ここまで。


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 ジェイミー・ベルが主演の映画ということで、見に行きました。Billy Elliotを演じていた、あんなに可愛かったジェイミーが、全身入れ墨だらけのレイシストオヤジになっていて、予告編で見ていたとはいえ、遠縁のオバサンとしては衝撃強し、、、。

 あ、遠縁のオバサンってどーゆーこと??と思われた方は、こちらへどーぞ。


◆ブライオンがなぜジュリーと出会って目覚めたのか。

 トランプが大統領やっているアメリカの現実と照らし合わせて本作が語られている場面が多い様だけれど、私は、正直なところ本作が「肌色や人種の差別」をメインテーマにした映画だとは思わなかった。

 「入れ墨=差別感情の象徴」ということで、とても画になりやすい話であり、実際ブライオンは入れ墨を消すことでレイシスト集団(ヴィンランダーズ・ソーシャルクラブ=VSC)から完全に足を洗ったわけだが、入れ墨がなくても犯罪者集団やカルト教団から足を洗って更生した話、なんてのはこれまで掃いて捨てるほど描かれてきているのであり、本作は差別感情を克服した話、みたいな位置付けになっているけれども、本質はこれまで量産されて来た“ある男の更生物語”であって、元居た集団がレイシスト集団だったというだけの話である。

 しかも、このレイシスト集団VSCだが、実態は非常にショボい半グレみたいな感じで、笑っちゃうほど幼稚な人間の集まりなのだ。この集団のボス夫婦が、ストリート・チルドレンみたいな恵まれない子どもたちを拾ってきては、レイシストに育て上げているので、教育は全くといっていいほどなっていない人間たちなのである。まあ、日本の暴力団と、あんまし変わらない仕組みだなぁ、、、と思って見ていた。だから当然、集団を抜けるのが非常に難しい。

 じゃあ、何でそんな困難を承知で、ブライオンはVSCを抜けようとしたか、といえば、それはもちろん、シングルマザーのジュリーと恋仲になったからだ。ただの恋愛でそこまで、、、??という感想がネットでも見受けられたが、、、。

 レイシスト集団てのは、基本マチズモ思想なんで、男は女を力で支配するのが集団の行動様式になる。実際、VSCのメンバーの若い女性とブライオンは身体の関係があるのだが、非常に暴力的な支配・被支配関係が成立しているし、ボス夫婦の妻・シャリーンは、ボスの妻だからこそメンバーたちにかしずかれているけれども、夫あっての存在であり、夫なくして彼女が集団を統率できる力なんぞは全くない。所詮、こういう集団での女の扱いなんてそんなもんである。

 しかし、ジュリーは、そんなブライオンのマチズモ思想を根底から覆す女性として描かれている。それは彼女が“3人の娘の母親”だからだ。これがただのバツイチ子ナシの女性だったら、かなりジュリーのキャラも変わっていただろう。ジュリーにとって、最優先で守るべきは3人の娘たちであり、ブライオンとの関係は二の次であると、ブライオンにはっきり言動で表わすことが、ブライオンのマチズモ思想を貫く障壁となるのだ。

 ルックス的にそれほど魅力的に見えない、元ヤンみたいに見えるジュリーが、どうしてそこまでブライオンを変化させたのか? というのが分からず、前述のようなネットの感想を持つ人もいるようで、中には「女性が見たら、ジュリーには共感できないでしょ」みたいなことまで書いている人もいたけれど、ここは本作のキモだと思う。

 大体、恋愛で“何であんなのに惚れるの?”なんてのは普通によくあることで、そんなん当事者じゃなきゃ分からんに決まっている。入れ墨だらけの顔の男でも、太めのコブ付き女性でも、惚れる人は惚れるんである。

 愛の力が差別主義者の男を更生させた! という見方もあるだろうが、恐らく、ブライオンはVSCでの生活に、無自覚であったにせよ疑問を持っていたか、嫌気が差していたんだろうと思う。そらそーだろ、あんな荒んだ生活の毎日、、、。そこへ、ジュリーというマッチョが通用しない女性に出会ったことで、疑問や嫌気をブライオンは自覚することになったんだと思う。というか、私の目にはそう見えた。


◆差別って何?

 というわけで、本作は差別克服映画というのとはちょっと違うと思うのだが、本作上映前に、上映された『SKIN 短編』の方は、モロに肌色差別がテーマの映画でありました。この短編は、本作制作の資金稼ぎのために作られたとのことで、併映していない回もあったが、私は折角だからと思って短編の方も見てみた次第。

 で、正直言って、短編の方がアイロニーが効いていて、面白かった。かなりシビアで怖ろしいブラックコメディだと思った。笑えませんよ、もちろん。でも、これはコメディでしょ。ラストのオチといい、これほどアイロニカルな話ってコメディじゃなくて何なんだ、という感じ。どうせなら、この話を膨らませて長編を描いても面白かったのに、、、。

 本作のVSCは、白人至上主義集団だが、バイキングの血を引いていると主張している“北欧神話馬鹿集団”らしい。何でわざわざ“馬鹿”を入れたかというと、そんな主張をしているくせに、バイキングのことも、北欧神話のこともゼンゼン分かっていないし学んでいないから。それは、本作を見ていてもよく分かる。ホント、中二病が北欧神話をツールに粋がっているだけなんである。馬鹿丸出しで、見ている方が恥ずかしくなってくるくらい、、、。

 まあ、こういう極端なのはむしろ分かりやすいけど、欧米に行くと、露骨なアジア差別に出くわすことはあるし、そもそも西欧の人たちはいまだに自分たちが世界基準と思っている節はあるし、米英人も英語をどこへ行っても堂々と喋って憚らない人たちなど、やっぱり自分たちが世界基準だと、もうこれは無自覚に思っているんだろう。そして、そういう無自覚な差別意識の方が厄介なんである。

 差別の根っこって、考えてみれば、“何となく嫌”という程度の感情なんじゃないかと思う。この直感的な嫌悪感は、防衛本能でもあるし、危険回避のためには欠かせない本能とも言える。何となく「嫌だな」と感じ、近付かない、遠ざかる、、、ことによって、大きな災厄を逃れる、ということは実際にあるだろう。例えば、「あの人、目つきがヤバい」と感じてちょっと離れたら、その人が急にナイフを取り出して通り魔に変貌した、、、とかね。でも、その人がたまたまちょっと体調が悪かっただけで通り魔に変貌しなければ、「ヤバい」と感じて離れたのはただの偏見&過剰反応である。

 人間、きちんと差別の教育をしないと、とんでもないレイシストに育つというのは、研究で明らかにされているらしい。なので、教育は大事である。けれど、同時に、人を見たら泥棒と思え式に、大人に声を掛けられたら不審人物と思え、と教えて、子どもに挨拶しただけで逃げられたとか通報されたとかという話を聞くと、もう、何をどうしたら良いのか分からなくなってくる、、、。

 露骨なヘイト集団は論外だと思うが、その一方で、ヘイト集団VSCのことを馬鹿集団と書いている時点で、これも十分立派な差別じゃないの??と。ヘイト集団に悪態をついているネットの書き込みも、それも差別の一種でしょ??と。自分は違うのよ~、的な物言いが、何かこう、違和感を覚えるというか。というわけで、私には、差別問題について、、、、どうすれば良いのか、正直言って、分からない。


◆ジェイミーとかもろもろ。

 で、ジェイミーなんだけど。

 この役を演じるに当たって、15キロも増量したのだって。道理で、体つきがゼンゼン違うと思った。遠縁のおばばは、あんましムキムキの身体は好きじゃないのよ。……あ、これも偏見・差別よね。

 序盤で、もろにヘイトな言葉を発しているシーンがあるんだけど、何か、ちょっと“頑張ってる感”が出ちゃってたかも。ラスト、入れ墨を全部キレイに消して、ジュリーのもとに戻ってきたときのブライオンは、ああ、ジェイミーだなぁ、、、という感じでホッとなる。ちょっと、はにかんだような、上目遣い。あー、ビリーの面影、、、あ、いや、ジェイミーだなぁと。

 このブライオンを演じた、次のお仕事が、『ロケットマン』だったとか。

 遠縁のおばばを自認しているくせに、ジェイミーの出演作、全然コンプリートしていないのよね、、、。見ていない作品、まだ一杯あるので、これから頑張って見るわ! とか言って『デスマッチ 檻の中の拳闘』も見逃したけど、、、。

 ジュリーを演じたダニエル・マクドナルドがとっても良かった! ぽっちゃり体型で、実年齢よりは本作では老けて見えたけど、演技は素晴らしい。

 あと、ボスの妻を演じていたのは、ヴェラ・ファーミガ。ほとんどノーメークみたいな顔だったから、最初??と思ったけど、やっぱりヴェラだった。何かちょっとヤバそうなオバサン(あ、これも差別かしら)で、見ていて怖かった。こんな人に執着されたら、そら、ブライオンも大変だわ。

 実際のブライオンさんの入れ墨除去後の顔が、エンドマークの後に出てくるんだけれど、かなりキレイに除去されていてビックリ。よ~く見ると跡が残っている所もあるけど、パッと見は全然分からない。今や技術も進んでいるのですね。
   

 

 

 

 

 

頑張れ、ジェイミー!!

 

 



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コメント (2)
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