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「水濃徃方」の解読 27


(裏の畑のギリア)

コロナのワクチン接種がスムースにいっていない。ワクチンが日本に来るまでに、長い期間があったのに、行政は何をしていたのだろう。蓋を開けたら、予約殺到で、システムがすぐにパンクしてしまった例など、予測してシミュレーションする時間はあったはずなのに、それを怠ったとしか思えない。長く続いた平和な時代が、行政能力をここまで落としてしまったのだろうか。

話しは変わるが、島田市に初めてクラスタ―が発生したという。島田の飲食店という。川向こうのことではあるが、今後、どうなるか、心配である。

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「水濃徃方」の解読を続ける 。

「いや風雅とは貴坊の事、鄒衍(すうえん)を吹きて、温気(おんき)の至りし例(ためし)もあれば、雪が止(や)まんで、湯豆腐でも降らまいものでもない。構わず、篳篥(ひちりき)(あそ)ばせ」と云われて、「お恥ずかしいが、左様の雅芸(がげい)持ち合わさず。エヽ読めた。上の山で、馬糞(まぐそ)が吹くのを聞いてであろう」と可笑しがれば、「馬ぐそが吹くとは、コリャどうじゃ。薩摩芋の吹くさえ、余程珎らしいと評判を致す」と笑う。
※ 鄒衍(すうえん)➜ 中国、戦国期の思想家。陰陽(いんよう)五行家の祖。
※ 律(りつ)➜ 音楽の調子。また、日本や中国の音楽で陽(奇数番目)の音階。
※ 温気(おんき)➜ 気候・空気などの、あたたかみ。暖気。うんき。
※ 雅芸(がげい)➜ みやびな芸。

「未だ御存じ御座らぬか。当地の名物、馬糞先生。お江戸からの客人(まれびと)に、今の世の賢人、生(しょう)のものを、生(なま)で御目に掛ける。又、山の手も馬鹿にならぬの。」と、少し自慢の物語り。好もしくぞ、ここに訳聞いて、亭坊伴い、上の山へよじ登れば、木の葉、杉皮で屋根を防ぎ、筵(むしろ)(しとね)、葭簀(よしず)囲い、落葉を集めて土𨫝子(どかんす)仕掛け、心を澄ます篳篥(ひちりき)の音、流石(さすが)の好き者も舌を吐きて、「この方、江戸一の風雅人と自慢したは何の事。しおらしいとも、やさしいとも、かかる賢人に、せめて持ち合わせの一献(いっこん)進ぜたし。平に/\」と、達って進めに、否みもせず。
※ 客人(まれびと)➜ 訪ねて来た人。きゃく。きゃくじん。
※ 褥(しとね)➜ 座るときや寝るときに下に敷く物。しきもの。
※ 土𨫝子(どかんす)➜ (「𨫝子」は、青銅・真鍮などで作った湯沸かし)土鍋、あるいはどびん。
※ 舌を吐く(したをはく)➜ ひどく驚き、恐れ、また落胆して、口を大きくあけたさまをいう。
※ 風雅人(ふうがじん)➜ 風流人。風雅者。
※ しおらしい ➜ 上品で優美である。
※ 一献(いっこん)➜ 小規模な酒盛り。また、酒をふるまうこと。
※ 平に(ひらに)➜ 相手に懇願するさま。なにとぞ。どうか。
※ 否み(いなみ)➜ 断る、嫌がる、辞退すること。
(「水濃徃方」つづく)

読書:「刹鬼たち 剣客同心親子舟 4」 鳥羽亮 著
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