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「警官の条件」を読む

(佐々木譲著「警官の条件」)

最近、佐々木譲著「警官の条件」を読んだ。最期の数ページを涙を流しながら読んだ。最近、歳とともに涙腺が甘くなって、緩むことが増えてきた。本を読みながら涙を流すことなど、かつては無かったことである。

そこで、日本の男はどんな場面で泣くのだろうと考えてみた。同じ刑事ものでも、最近テレビで何週かに渡って放映していたダーティハリーシリーズなど、どれだけ絶対的な危機を超人的な活躍で乗り越えようと、最後にハッピーエンドで男女が抱き合おうと、日本の男どもには何の感興も呼ばない。だから映画を見終わってああ面白かったで終わりである。

「警官の条件」で何が泣けたのか。殉職した警官の息子が新人刑事になって、殉職に関わりのあった刑事の下に配属されてくる。責任も感じて何とか一人前にしてやろうと仕事を教えていた。ところが新人刑事は、何かと素行が悪いが実績を上げる刑事を快く思わない警務部から、内部告発するように指示を受けていた。新人刑事は間もなく内部告発し、上司の刑事は警察を追われる。

何年か経って、実績が上がらないその部門に、その新人刑事が係長として戻ってくる。一方、上司の刑事も警務部から復職を懇願されるが断っていた。ところが当時の部下で可愛がっていた部下が不容易な潜入捜査で殉職する。「もっとしっかり仕事を教えておくべきだった」と葬儀で語り、殉職刑事が所属した係に復職した。行き掛かり上、新人刑事の係と、復職刑事の配属係が、殉職刑事の犯人を追って競争することになる。

復職刑事所属の係長は復職刑事のはみ出し捜査に耳を貸さない。単独捜査の復職刑事の動きが、いくつか部下から伝わってくる。ひらめいた新人刑事は係を総動員して、復職刑事の行動を追う。復職刑事は単独で廃工場に入っていく。外で待機していた新人刑事に「直ぐに突入しろ」と復職刑事から携帯が掛かってくる。予想もしない事態に戸惑っていると、銃声が聞こえ突入する。全員逮捕して殉職刑事の事件は解決するが、撃たれた復職刑事は行き絶え絶えになりながら、「世話掛けやがって」と言って、目を閉じる。

書いてみるとそんな筋なのだが、400ページもの小説を、その最後の一言をいわせるために、書いて来たように思えた。最後は何となくそんな終わり方になるのだろうと想像しながら、その場面になると感極まるのである。

日本の作品の書き方はそんなパターンが多い。海外の作品ではそんな盛り上げ方は余りお目にかからない。ハリウッドがマンネリになり、日本の作品をカバーした作品が新しいとして取り上げられるのは、そんな感覚があるのだろうと思う。
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