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浦方文書 掟 - 駿河古文書会

(5月3日、宇和島城登城)

昨日に続いて、浦方文書の第二弾で、船中における「掟」の文書である。主として、幕府の年貢米である「御城米」について、船で搬送時の船乗りたちへの掟である。板子一枚下は地獄の船乗りたちは、誰からも監視されることが無い分、色々と不正も遣ったらしく、条目を読んでいると、それらの手口が見えてきて、興味深い。

江戸時代、安全な航海のために、積み過ぎを防ぐ目的で「船足改め」が行われた。喫水線のチェックを受けたものであるが、その目的は、安全だけではなくて、不正防止のためでもあったことが判る。

     掟
一 船中において、御城米無沙汰に仕りまじく候、万一、打米、沢手米、欠米などにこれを准(なぞらえ)、御米、少しにても隠し取り候わば、後日聞くというとも、穿鑿の上、船頭、水主の儀は申すに及ばず、品などより、諸親類まで罪科行わるべき事
 附たり 船中、火之用心堅く之を相守り、かつまた諸勝負仕るまじく候事
※ 無沙汰(ぶさた)- 注意をおこたること。不用意になること。なおざりにすること。ほうっておくこと。
※ 打米(うちまい)- 海難にあった廻米船が船足を軽くして安全を保つため、積んである米俵の一部を海中へ捨てること。また、その米俵。
※ 沢手米 - 江戸時代、輸送の途中で海水や雨水に濡れ損じた年貢米。ぬれごめ。
※ 欠米(かんまい)- 不足または損耗した米。


一 御城米、舟積みのみぎり、楫、柱、綱、碇、並び粮米、薪、諸道具などに至るまで、海中にて入るべき分、残らず積み立て、船足改めを請け候、以後何れの浦にても、私の荷物隠して、これを積むべからず、もし日和これ無く、永く逗留いたし、粮米不足の時は、何れの浦において相調え、その趣、所の者より證文これを取るべく、自然、粮米に偽り、これを准(なぞらえ)、商売の米、これを積むにおいては、急度曲事申し付くべく候事
※ 船足改め - 江戸時代、廻船の航海安全を期するため、船方が規定の船足以上に積荷をしないように、荷主またはその代表者が行なう船足の検査。
※ 自然 - 当然


一 難風に遭い、打米仕り候わで叶わざる時は、粮米残らずこれを捨て、その上にて御城米捨て申すべく候、若し穀類残り置くにおいては、これを召し上ぐべき事

一 沢手米これ在るは念を入れ、これを干すべし、附り、海中にて船具打ち捨て、不足においては、着船の湊にて相調うべき事

一 江戸湊において、御城米相渡さざる以前、粮米の余分、改めなくして、陸へ揚げ申すまじく候事

右の條々、慥に相守り申すべく候、若し相背く族これ在るは、訴人に出るべし、たとえ同類たりといふとも、その罪を許し、御褒美これを下さるべく、かつ又怨(あだ)をなさゞる様に仰せ付けらるべく候、自然、隠し置き、脇より相聞き候わば、船頭は勿論、水主、かしきに至るまで、悉く罪科行われるべきものなり
※ かしき - 飯をたくこと。また、その人・場所。

 寛文十三丑三月
前書の通り、仰せ出され候、御條目の趣、堅く相守るべく候、以上
寶永八年卯三月   大草太郎左衛門
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