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横内川通船一件控え帳 10 - 駿河古文書会

(ヒガンバナとモンキアゲハ/手児の呼坂にて)

昨日午後、駿河古文書会で靜岡へ行く。今日の課題は引続き「横内川通船一件控え帳」である。少し長いが、切るところが見付け難いので、一気に書き込む。

横内川通船の工事が見切り発車的に始まる。当初、田地への引水が変わることを恐れた農民たちは反対の意向であったが、こゝまで来ては反対の声が消えてしまった。まずは、深さを確保する工事の開始に際して、工事の概要の一部がメモされている。

横内下の木戸際七番の杭より堀込み、八番より弐尺七寸、九番より弐尺壱寸、拾番より三尺、拾壱番より三尺七寸、拾弐番より三尺四寸、拾三番より三尺六寸、拾四番より三尺六寸、拾五番より八尺、何れも 水盛杭よりの勘定に御座候。
追って手順の分は、その村々より申す通り、差し支えこれ無き様、取り計らうべく候。


廻状を以って申し達し候。その村々地先、横内川通り御普請所、両縁竹木の分、早々伐り払い申すべし。もっとも家居なども差し障り候分は、篤と勘弁の上、御普請仕立て方、差し支えに相成らざる様、取り計らうべく候。この廻状早々順達、留めより相返すべく候、以上
  卯閏九月十五日        御普請役   大嶋東一郎
                        大塚唯一郎


池田岩之丞様御代官、御白州において、御勘定直井倉之助様御代官御出席にて、仰せ渡され候に付、横内川両縁村々、左の通り請け證文。

       差し上げ申す御請け書の事
今般、東海道府中宿、通船路、その外御普請、御仕立てのため、御越し成られ、私ども村々地先、横内川通り、御堀割り御普請の儀、駿州安倍郡井宮村、名主庄左衛門外弐人へ、仕立て方仰せ渡され、この節より御場所御取り掛りに付、私ども地所、御丁□の上、道敷、土居敷、その外、田畑、居屋敷地へ相掛り、潰地の分、最寄質入れ、上中下平均直段を以って、地代金下し置かるべく候事。


一 右御普請仕立中、御遣り方遊ばされ候。人足、石工、その外職人ども、所々より大勢入り込み候に付、権威がましき儀は勿論、すべて不作法の義、これ無き様、引請人どもへ、取締方仰せ渡され候に付、私ども村々においても、右の者どもへ対し、不作法の義これ無き様、小前末々まで、厚く申し聞き置き候様、仕るべし。かつ右引請人どもより、御普請の儀、かれこれ申し聞き候とも、私ども限り、言うに及ばず、伺いの上、申し達し候様、仕るべき候事。

一 右御仕立中御場所、御小屋場の儀、弁利(便利)の場所へ御取り建て、所々へ、御水盛杭印、御付け置かれ候間、最寄住居の者心付け、火の元は勿論、すべて不取締の義、これ無き様仕り、人家これ無き処は、折々見廻り、心付け候様、仕るべく候事。右、仰せ渡され候趣、逸々承知畏まり奉り候。これにより村々連印御請け、印形差し上げ申し候処、くだんの如し。
※ 逸々(いちいち)- ひとつひとつ。

   天保十四年閏九月十日
戸田寛十郎支配所、駿州安部郡傳馬町、名主      久右衛門
右同断、同州同郡横内町、丁頭            伊兵衛
池田岩之丞御代官所、駿州安部郡明屋敷、名主     四郎兵衛
右同断、同州同郡上土新田、名主           平兵衛
右同断、同州同(有渡)郡南安東村、名主       与兵衛
右同断、同州同郡上足洗村、名主           久左衛門
松平丹後守領分、同州同郡同村、名主         権右衛門
右同断、同州同(安倍)郡川合新田、名主       与五右衛門
岡野出羽守知行所、同州同(有渡)郡下足洗村、名主  彦作
右同断、同州同郡同村新田、名主           庄右衛門
曽我伊豫守知行所、同州同郡沓谷村、名主       卯兵衛
 通船路御普請御掛り
     御役人中様



    恐れながら書付を以って願い上げ奉り候
池田岩之丞御代官所、松平丹後守領分、上足洗村、岡野出羽守知行所、下足洗村、曽我伊予守知行所、沓谷村、右三ヶ村一同、願い上げ奉り候御儀は、今般横内川通船路、御出来の上は、御収納米運送、並び村方用弁のため、上足洗村にて船弐艘、下足洗村にて四艘、沓谷村にて四艘、仕立て仕りたく、右に付いては、拾四番杭の下、上足洗村地面にて、巾弐間、長さ五間、弐拾四番杭の下、下足洗村地面にて、巾三間、長さ拾間の船溜り、北側へ補理仕りたく、もっとも御用御荷物、御繁多の節は、仰せ付け候わば、罷り出御運送仕るべく候。格別の御慈悲を以って、右願いの通り、仰せ付けられ下し置かれ候様、一同願い上げ奉り候、以上

※ 補理(ほり)- 補い修理すること。

  天保十四年卯閏九月
                 上足洗村御料、私領
                  下足洗村
                  沓谷村
                  右三ヶ村
                   名主、組頭、百姓代、三判
                               連印
    通船路御普請御掛り
         御役人中様


反対から一転、工事をするならば、自分たちにも舟と舟溜りを工事に加えるように要求している。中々したたかな農民たちである。始まった工事がこの後どうなるのか。この一件は次回で終わりを迎える。
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