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「水濃徃方」の解読 7


(庭のシランが咲き出した)

午後、はりはら塾の古文書講座。今年度、最初の講座である。今年は受講者8人で始まった。

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「水濃徃方」の解読を続ける 。

安物の銭失いと云う事、人がよく云う事なれど、我身の目当てにする教えの道を、安物で上げたがる衆中が多いから、間違いが出来る。わしは何も知らぬが、赤城辺りのさる儒者衆へ、木樨(もくさい)の樹、世話して上げてから、どうしてか、わしが御意(おき)に入りて、そちは気象(きしょう)の面白い者じゃとて、より/\に何角(なにかと)のお咄し聞かはったが、アヽまた(ぶん)なものじゃぞい。それからは、恐らく悟りひらいたと云う様な気になつて居れば、さて/\寝覚(ねざめ)が心安い。そち達もわしが世話にせねばならぬわけの人なれば、いらぬ干渉ながらこの様な事も話しますとの物語。
※ 木樨(もくさい)➜ もくせい。モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。別名、ギンモクセイ。
※ 気象(きしょう)➜「気性」に同じ。生まれつきの性質。気質。きだて。
※ 何角(なにかと)➜ あれこれと。なにやかやと。。
※ 聞(ぶん)➜ 聞くこと。また、聞いて知ること。
※ 聞なもの(ぶんなもの)➜ 聞いてみるもの。
※ 干渉(かんしょう)➜ 他人のことに立ち入って自分の意思に従わせようとすること。 

忠蔵、きつくうけ取リ、段々お世話でわしに限らず、この長屋の者、人にも侮(あなど)られず、旧冬(きゅうとう)も世間では掛乞(かけごい)声山(こえやま)たてゝ、鳴り喚(わめ)くに、こちの長屋中は、米屋、薪屋から、頼(たの)みもせぬに、春の仕込みまでしておけば、その日/\に米も買(か)わず、マア月買い長者の暮らし。皆なこれ親分の光(ひかり)
※ 段々(だんだん)➜ かずかず。あれやこれや。
※ 旧冬(きゅうとう)➜ 昨年の冬。昨冬。ふつう、新年になってから用いる。
※ 掛乞(かけごい)➜ 江戸時代、節季に掛売の代金(掛金)を取立てたこと、またその人。
※ 声山(こえやま)➜ 大きな声。大声。

今日は打ち揃(そろ)うて申し入れる。大方、押し付け来ましょうと、咄しに違(たが)わず、門口から、酒樽の勤兵衛、年始の出仕(しゅっし)となり、小手ながら持ち込むは、皃(かお)も真赤な紅絹の布(もみのきれ)、結び付け多る弓矢破。あとから入るは、綱が進物(しんもつ)いかのぼり。茨木が鬼の面は、竹まが年玉。大判、小判、壱分こまかね、露の玉屋の信兵衛が遣い物。のしの代りに、ごまめの歯ぎしり。お頭、目出とう御座りますと、一同にこそ居並びけり。
※ 押し付け(おしつけ)➜ まもなく。追っ付け。
※ 出仕(しゅっし)➜ その場にのぞむこと。ある場所・席に出ること。
※ 小手(こて)➜ ひじと手首との間の部分。また、手先。
※ 紅絹の布(もみのきれ)➜ 紅で染めた絹布。
※ 弓矢破魔(ゆみやはま)➜ 正月の縁起物として神社などで授与される弓と矢である。それぞれ破魔矢、破魔弓と呼ばれる。
※ 進物(しんもつ)➜ 人に差し上げる品物。贈り物。
※ いかのぼり ➜ 凧のこと。
※ ごまめの歯ぎしり(ごまめのはぎしり)➜ 力の弱い者が、いたずらに憤慨して悔しがることをいう。鰯(いわし)はもともと弱い魚であるが、その上、からからに干されているのだから、何もできないという意味である。
(「水濃徃方」つづく)  
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