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「甲陽軍鑑」を読む 39

(散歩道の白梅/一昨日撮影)

朝から雨、夕刻止む。くしゃみ連発で、今年初めてべにふうきを飲む。苦し。今年もうっとうしい季節が巡ってきた。

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「甲陽軍鑑巻第十一下」の解読を続ける。「信長より家康と御無事の儀申さる事」の項続き。

その時、信長公より御音信は、信玄公召しの御小袖一重(ひとかさね)、いつもの如く蒔絵の箱に入れ、御綿帽子、御頭巾まで、例の如く美しき箱に入れて、この外、繻子(しゅす)緞子(どんす)合わせて三十巻、また御料人(ごりょうにん)へも御小袖いつもの如く、この外、厚板五十端(反)薄板五十端、五十端、片色五十端、撰糸(せんじ)、以上。
※ 繻子(しゅす)➜ 繻子織りにした織物。経糸,緯糸の交錯点を一定の間隔に配置した、経糸または緯糸の浮きが多い組織で、光沢があり、柔軟で滑りがよく、摩擦に弱い。
※ 緞子(どんす)➜ 繻子織地に繻子織の裏組織で模様を織り出した織物。厚地で光沢があり、どっしりとした高級感がある。
※ 御料人(ごりょうにん)➜ 中世以降用いられた、主に女性に対する敬称の一つ。ここでは、信玄の側室で武田勝頼の母である、諏訪御料人を指すか。
※ 厚板(あついた)➜ 厚地織物の一。生糸を横糸、練り糸を縦糸として、模様を織り出した絹織物。厚絹。厚板織り。
※ 薄板(うすいた)➜ 薄い板に巻いた薄地の絹織物。薄板物。
※ 嶋(しま)➜ 縞模様に織り出した織物。
※ 片色(かたいろ)➜ 練貫(ねりぬき)の一種で、経(たていと)の生糸と緯(よこいと)の練り糸の色の違っている織物。
※ 撰糸(せんじ)➜ 撰糸絹の略。薄い絹織物で、羽二重に類するもの。
※ 疋(ひき)➜ 織物の長さを表す単位。反物二反分の長さを一疋という。


信玄公、家康と御無事の、信長へ御返事の御事は、

度々来意珎々重々候。然れば、遠、三、両国の境目に居住仕る逆侍(ぎゃくし)躍倒(やくとう)赦免の儀、翁(信玄)、更(さら)に相心得ず候。委細は後音(こういん)、申し述ぶべきものなり。
   極月廿三日           大僧正信玄
    織田上総守殿
         御報(ごほう)
※ 来意(らいい)➜ 手紙の趣旨。。
※ 珎重(ちんちょう)➜ めでたいこと。祝うべきこと。「珎々重々」はそれを強調している。
※ 逆侍(ぎゃくし)➜ 謀反をたくらむ侍。
※ 躍倒(やくとう)➜ 暴挙。
※ 心得ず(こころえず)➜ 納得できない。理解できない。
※ 後音(こういん)➜ 後のたより。あとで書き送る手紙。後便。
※ 御報(ごほう)➜ 身分の高い人に出す文書での返事。また、その手紙の脇付に用いる語。

(「信長より家康と御無事の儀申さる事」の項終り。甲陽軍鑑品第丗八終り。甲陽軍鑑巻第十一下終り。)
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