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「江戸繁昌記 三編」を読む 67

(散歩道のヤマボウシの花/6月20日撮影)

テレビだったか、ヤマボウシの花を紹介していた。どこかで見たような花だと思いながら、散歩の途中で、ある旧家の門前に差し掛かると、そこにまさに咲いていた。

ヤマボウシは漢字では「山法師」と書く。花の形状を、山法師(僧兵)の坊主頭と頭巾(白い総苞片)に見立てた名前だという。そうか、武蔵坊弁慶の白い頭巾か。

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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「寄(よせ)」の続き。

剃出(前座)、始めて下る。これを一齣(ひとこま)と為す。この時を名(めい)して中入りと曰う。これに於いて、便を忍ぶ者は厠(かわや)に如(ゆ)き、烟を食らう者は火を呼び、渇者は茶を令し、飢える者、菓を命ず。

(次の段落は読んで見たが、どんな催しなのか、想像出来なかった。)

技人、乃(すなわ)ち、物を懸けて䦰(くじ)を売る。䦰数百本、初め数枝を連ねて値(あたい)十数銭、売り了(おわ)り一徧(遍)、余り枝なお茂りし。因って値を低してこれを募る。已(すで)に低し。未だ踈(まばら)ならず。更に低して斧を請う。数十枝、四、五文、根を断ちて、始めて原䦰を剪る。三枝僅(わず)かに泄(も)らす。葉を照らして貨を献ず。

早く見る、先生の座に上るを。親方(真打)これなり。三尺喙(くちばし)長く、弁、四筵を驚かす。今の笑いは、向うの笑いより妙に、後の泣きはの泣きより妙なり。親方の醉、剃出(前座)何ぞ及ばん。人情の穿鑿、世態(世の中)の考証、弟子、固より若(し)かざるなり。
※ 四筵(しえん)- 満座。宴席に集う人々はみな。
※ 三尺喙(くちばし)長く - 慣用句「喙長三尺」(かいちょうさんじゃく)。口が達者なことのたとえ。
※ 向う、前 - それぞれ、前座を指す。前座と比べている。


紙幛一面淡墨、物無く、笛响(ひび)き、鼓鳴る。乍(たちま)ち数緑松を生ず。一人従いて上る。帽(ぼう、=頭巾)戴き、襖(ふすま)を披(ひら)く。右手に鈴を揮(ふる)い、左手に扇を開く。了々明々、写し出て分明なり。左に顧(かえり)み、右に旋(まわ)り、眼を転じ眉を動かす。笛に応じて鈴を揚げ、鼓に合して扇を翻(ひるがえ)す。舞々廻々、真(まこと)にこれ、影人、魂有り。舞い闋(おわ)れり。
※ 紙幛(ししょう)- 紙の衝立(ついたて)。
※ 了々(りょうりょう)- 物事がはっきりわかるさま。


読書:「なにごともなく、晴天」 吉田篤弘 著
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