平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
駿台雑話壱 25 矯軽警惰(前)
今日は一気に春になったような陽気で、ムサシの散歩に、ジャンバーを薄手のものに変え、セーターも一枚減らした。桜の蕾も色付いて、開花のニュースが流れるのも近いだろう。
室鳩巣著の「駿台雑話 壱」の解読を続ける。
矯軽警惰
※ 矯軽警惰 -「軽を矯め惰を警む」うっかりを直し、怠惰を警(いまし)める。
翁また言うよう、当代東西両都の儒を見るに、もとより人によりて、一概には論じ難けれども、多くは異論を好み、名誉を要するは同じ事にして、その病根はまた異なるべし。大抵、洛陽の儒は、驕惰の弊あり。東都の儒は剽軽の弊あり。
※ 洛陽(らくよう)- 京都の異称。
※ 驕惰(きょうだ)- おごりだらけること。
※ 東都(とうと)- 江戸。
※ 剽軽(ひょうきん)- 軽はずみなこと。軽率。
洛陽は風気和(なご)し、土地狭し。この故に近き比(ころ)まで、その土の宿儒、多くは温厚柔謹にして、制行正しく、威重ありて人望を失わざりき。然るに、近年温揉、変じて惰弱となり、威重変じて驕泰となる。空談を尚(たっと)び文史を玩(もてあそ)び、これをもて、自から尊大にして、かつて遜志、時に敏ずる事を知らず。されば、良工意を用いるの労を、如何で知るべきなれば、ただ道を容易なる事に意(こころ)得る程に、はては先賢を慢(あなど)り、程朱を毀(そし)りて止みぬ。
※ 風気(ふうき)- 人々の風俗・気風。
※ 土(ど)- 土地。地方。国。
※ 宿儒(しゅくじゅ)- 年功を積んだ儒者。名望ある学者。
※ 柔謹(じゅうきん)- おだやかで慎み深い。
※ 制行(せいこう)- 行いを制すること。
※ 威重(いじゅう)- おごそかで重々しい。
※ 惰弱(だじゃく)- 気持ちに張りがなく、だらけていること。
※ 驕泰(きょうたい)-おごり高ぶって、人を侮ること。
※ 文史(しるしぶみ)- 書籍。特に,中国の聖賢の書。
※ 遜志(そんし)-中国、明初の朱子学者、方孝孺の号。寧海の人。恵帝に仕え、王道政治を説き、燕王に反抗し、一族・弟子とともに死刑に処せられた。
例えば、王孫公子、暖かに育ちて艱苦を経ねば、覚えず驕泰になるが如し。宋武帝の、高祖の葛燈籠、麻蝿払を見て、罵(ののし)りて、田舎翁とするも、祖宗の大業を建立せし艱難を知らねば、更に咎むるに足らず。
※ 王孫公子(おうそんこうし)- 王の子孫、また貴族の後裔など、身分の高い家の子息。
※ 葛燈籠、麻蠅拂 - 葛製の灯籠と麻製の蝿払。何れも粗末な田舎の道具。
(この項続く)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 駿台雑話壱 ... | 駿台雑話壱 ... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |