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江戸繁昌記初篇 34 書画会 1

(散歩道のオシロイバナ)

午後、駿河古文書会へ出席する。会のあと、古書店を営むT氏と知り合う。古書購入のかたわら、各所で捨てられる直前の村方文書を集め保管されていると聞く。

「江戸繁昌記初篇」の解読を続ける。

     書画会
※ 書画会(しょがかい)- 江戸時代の中期以降、各地で盛んに開催された書や絵画の展覧会。今日の団体展やグループ展にあたる。展示即売された。
当今、文運の昌(さかん)なる文人墨客会盟、社を結びて、人苟(いやしく)も、風流胸中墨有り。才徳並び具(そな)わる者、一度、盟に與(あず)かれば、衆、推して先生に拜す。声名四海に流れ、溝澮皆な盈(み)つ、油然の雲、沛然の雨、人の欽慕せざるは靡(な)し。
※ 文運(ぶんうん)-学問・ 芸術が盛んに行われるさま。
※ 文人墨客(ぶんじんぼっきゃく)- 詩文や書画などの風流に親しむ人をいう。
※ 会盟(かいめい)- 人々が集まって誓い合うこと。
※ 才徳(さいとく)- 才知と徳行。
※ 声名(こわな)- よい評判。名声。ほまれ。
※ 溝澮(こうかい)- 田畑の間にあるみぞ。
※ 油然(ゆうぜん)- 盛んにわきおこるさま。
※ 沛然(はいぜん)- 雨が盛んに降るさま。
※ 欽慕(きんぼ)- 敬いしたうこと。敬慕。


予、盟に與(あず)かることを得ずと雖ども、また嘗(かつ)て、末筵に列なるは数回、その盛事の如きは略々観て尽くせり。その地、多くは柳橋街、万八河半の二楼を以ってす。会に先だつこと数月、日を卜して一大牌を掛け、書して曰う、晴雨に拘わらず、その月、その日を以って会す。四方君子のを請う。且つ人、書して、先生の姓名を掲ぐ。これにおいて、人、世に先生有ることを知ら弗(ざる)は莫(な)し。蓋し、漢朝及第放榜の事と、略々同じ栄(ほまれ)知るべし。
※ 末筵(まつえん)-(「筵」は座席。)末席。下座。
※ 略々(りゃくりゃく)- ほぼ。だいたい。
※ 万八(まんぱち)、河半(かわはん)- いずれも柳橋にあった人気料亭。
※ 大牌(だいはい)- 大看板。
※ 顧(こ)- 配慮。
※ 臨(りん)- 来臨。
※ 及第放榜(きゅうだいほうぼう)- 科挙に及第(合格)した者の放榜(合格者発表)。


美観者、聚(あつま)る。肩を(ま)し、踵(きびす)を累(かさ)ね、指點(さ)して曰う、某は画人なり。某は詩人なり。某は儒流、某は書家、彼は挿花師の始めて名を宣するなり。こは清本氏の女(むすめ)の初めて場に上るなり。佇立を仰ぐ。また法場にして罪人の加木を読むが如し。
※ 摩(ま)す - こする。
※ 儒流(じゅりゅう)- 儒者。
※ 挿花(さしばな)- 生け花。
※ 佇立(ちょりつ)- たたずむこと。
※ 牌(はい)- かんばん。
※ 法場(ほうじょう)- 仏法を修行する場所。仏寺。(「おしおきば」とルビあり)
※ 加木(かぎ)- (「すてふだ」とルビあり)江戸時代、処刑される罪人の氏名・年齢・ 出生地・罪状などを記して公示し、処刑後も三十日間、刑場などに立てておいた高札。
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