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蛇除けの御守り落手の書状-駿河古文書会

(庭のドウダンの花が咲いた)

昨日の「蛇除けの御守り所望の書状」に次いで、「蛇除けの御守り落手の書状」が続く。4月に所望の書状を出し、8月に落手の書状では時間が掛かりすぎで、4月の書状では「薄暑」とあった時候の挨拶が、「冷気相増し」となっている。旧暦だから、4月に初夏の季節で、8月はもう秋である。蛇除けの御守りは、いくら江戸時代であっても、とっくに京へ着いているはずで、落手の書状が遅れた言い訳もしている。以下へ読み下した文を示す。

一筆啓上致し候
追日冷気相増し候えども、いよいよ御堅固に御暮らし成され、目出たく存じられ候
然れば、先だって申し進み候、熊野社蛇除の御守り百封、これを遣わされ、落手致され、仙洞御所様、大女院御所様、御奥へ上(のぼ)せられ候ところ、これにより、御初穂弐包み、奥より出され候に付き、神納致され候
この段、鳥度(ちょっと)御意候旨、摂津守申し付け候
右は先頃より差し進め申さるべきところ、御用多く甚だ取り込み、延引に及び候 恐惶謹言
                   松本新兵衛
  八月晦日                  花押
                   村上良右衛門
                        花押
 中村志摩守様
     人々御中
なお以って、貴意を得候
私ども義も何卒右御守頂戴仕りたく存じ奉り候、この御封に拾封ばかり、貴意を懸けられ候様、相願い候 以上

※ 仙洞御所 - 譲位した天皇、上皇や法王の御所
※ 女院(にょういん、にょいん)- 三后・准母・女御・内親王などで、朝廷から特に「院」または「門院」の称号を受けた女性。
※ 初穂 - その年最初に収穫し、神仏・朝廷に差し出す穀物などの農作物。また、その代わりとする金銭。「初尾」とも書く。


所望と落手の書状は同一人が書いているので、冒頭の書き方などほとんど同じように書かれている。「鳥度」と書いて「ちょっと」と読ませる当て字、古文書を読んでいくと、読むには難解だけれども、面白い当て字にときどき出くわす。「鳥渡」とも書き、辞書にも載っている。

落手の書状が遅れた理由に、「仕事が忙しくて」と現代にも通じるような弁解をしている。それでいて、自分たちにも蛇除の御守りを頂きたいと、ちゃっかりと便乗して頼んでいる。御守りの効果が抜群で、自分たちも欲しくなったものであろうか。おそらく、御守りを受取る頃には、蛇も冬眠に入っているだろう。
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