順調に作業は進んでいる。と言ってもちょっと彫ったところだが、水性ペンを使って大まかな位置を書き込んでいる程度。
上は19日の状態で、これも順調に進んでいるところ。このあたりまでは、これまで彫ってきた各種の能面の姿、形を思い出しながら、「まあこんなものだろう」という程度にしか考えていなかった。
ところが、コピーや他の写真をつくづく眺めていると、どうも形がおかしい。頬の部分がいやに低いのだ。最初に全体の立体を思い浮かべて一気に左右45度に切り取ったまでは良かったが、これが「切りすぎ」だった可能性が出てきたのだ。頬の部分が低い能面では、この手が有効でもある。いわゆる「女面」やそれに類する形の能面は、この手法でもOKである。
ただ、頬の部分が高い能面もいろいろあって、この場合は45度で切り取ってしjまえば頬の部分も切り取ることになる。従って作る面により、そのあたりも頭に入れながらノコを入れなければならない。
ということになって、やむを得ず「補修作業」をすることにしたという話。で、補修している部分の写真を下に紹介する。
切りすぎた頬の部分に、最初に切り取った部材を張り付けて、頬を高くしようと考えた。今までの補修作業では、いわゆる「補修材」を使って盛り上げていたが、今回は同じ木材を使って低い部分に張り付け、その部分だけ高くしようとする手法だ。この作業は20日に行った。
さて、乾いた頬の部分を慎重に彫っていく。上は21日朝の状態で、これから半日を使い、うまく仕上げなければならない。その半日が過ぎたのが下の写真だ。
21日の昼である。こうしてうまい具合に補修作業を終え、改めて眺めて見ると、やはりこの姿が正解のような気がする。いや、気がするのではなく、まさしく「正解」だろう。頬が膨らんでいることで、口を大きく開けた表情も自然に見える。
と言う具合に、たとえ能面彫り10年選手といえども、ちょっと油断をすればこのような失敗をしでかすという、良い見本でもある。また、新しく彫る能面の写真が正面からの一枚しかない場合、かつ初めて彫る面の場合は、よっぽど注意をして彫っていかなければ、また同じような失敗をするかも知れない。せめて正面、左右、上下の写真があれば充分であるが、そんなうまい話はなかなかないので、想像を膨らませて作業をしなければ・・・・うーん、大変だ。。。