わいはまいね 能面三昧

写真付きで趣味の能面製作を紹介するブログ

電鍵

2007年02月01日 | 日記・エッセイ・コラム

Blog014a 部屋の中に「電鍵」がある。ずっと使っていないので埃がかぶっているが、しまわずに見えるところに置いてある。モニュメントみたいな存在だが、これには懐かしい想いがあるのだ。

これは何のために使う道具のか、知っている人はすぐ分かるが、知らない人はよく分からない。よく言われる「トン・ツー」に使う道具だ。

「トン・ツーとは何だ?」 モールス符号である。モールス信号とも言われるが、その昔、遠い場所と連絡するとき、話し言葉ではなかなか技術的にも難しかった時代に、容易に連絡できる手段として世界中で使われた通信の手段が、モールス信号による通信である。そのトン・ツーを作り出すのが「電鍵」なのだ。

実はこれは今でもあちこちで使われている。毎年正月近くになれば、遠洋漁業の船団から、地元の漁業無線局を通じて漁師の家に送られてくる新年の電報がある。テレビニュースで良く出てくるのだが、その時の映像で、この電鍵を使って通信する場面が紹介される。「ト・ツート ツート・ツー」なんてバックで聞こえる、あれだ。電信とも言う。

が、しかし、近年は通信手段も高度化されており、衛星通信(電話)が主流になっているようなので、あまり使われないが、最終の通信手段としてはいまだに現役であり、通信士は電信の資格を持たなければならない。

私は趣味でこれをやっていた。当時はまだ資格は持っていなかったので、マイクを使った言葉による通信を、趣味の相手としていた。ある時、仲間が集まって野外で無線局を運用していたときに、一人だけ、ずっと離れたところでじっと聞き耳を立てて電鍵を操作している人がいた。

数人が集まって、無線機を数台使って遠くの相手と話をしていると、とにかく騒々しいのだが、その離れたところにいた一人はヘッドホンを付け、一言も発しないで静かに相手と通信していたのだ。時たま、「電鍵」をたたく「こつこつ」と言う音だけが鳴っている。それだけで自分の意思を相手に伝えていたのを見たとき、「あ、これが無線通信だ」と感動した。

それから一念発起して「電信」を覚え、試験に合格した後は、話すことよりも「-・-・ --・-」を連発したものだ。その時に使ったのが、上の写真の「縦振り電鍵」である。

Blog015 縦振り電鍵に慣れてくると、スピードが追いつかなくなってくるし、符号もきれいにならない。それで、だんだんと電子的にそろった符号を発する道具に変わってくる。それがこの写真にある赤いつまみの付いた「横振れ電鍵」だ。

これは基本的な縦振れ電鍵よりも、「早くてきれいな」信号を発生できるので、今でも多くの人に使われている。趣味の道具であるが、形も作りも美しいので、インテリアとしても面白い。私もインテリアとして置いているが、本当はどんどん使って貰った方が電鍵としてはありがたいと思うのだが・・・・最近はごぶさただなぁ。