いわゆる中国中世(近世と古代の間)の文言文の時代的変遷(同一“文体”もしくは“ジャンル”内でも、ラテン語がそうであるように変遷がある)のを確かめようと思って、晋の『三国志』から唐の『晋書』まで、この時代を取り扱う二十四史を成立時期順に通読してみたことがあり、そのさいに石刻(仏教漢文)もわりあい読んだ。そのおりのことだが、この概説書を学生のときに一回、その過程で数回、そしていままた一回読むことになったけれど、注はないが腑に落ちる処が多い。注はないが(引用も殆どない)、巻末に本書の骨格をなす主な柱(論点)ごとに分類し本文読解に関係する観点からの解題を付した参考文献リストが上げられているので、読み始めるにあたって安心できるということもある。
(冨山房 1939年10月)
(冨山房 1939年10月)