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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

昇曙夢 『大奄美史』

2011年04月30日 | 東洋史
 ロシア・ソ連文学研究者としてのこの人は昔から知っており、その作業(さくぎょう)も知らぬではなかった(『ロシア・ソヴェト文学史』)が、波長があわなかったのか、あまり印象にのこっていない。大学の夏休みを利用して東京へ出かけニコライ堂でロシア語を学んだこともあるというのに、この人がかつてここで学んだ正教徒であることにも無知だった。まったく迂愚としかいいようがない。
 この人が奄美出身であること、晩年米軍施政下にあった奄美の本土復帰運動に尽力したことも、今回初めて知った次第である。
 1949年初版のこの本はいまも奄美史研究の古典としての価値を失ってはいないらしい。内容は、史書というより地誌である。『大奄美誌』と名付くべき、多方面に渉る広さがある。生家跡のほか、墓所に碑が建っているという。いずれ奄美群島にも行かねばならない。

(原書房版 1975年8月)