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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

王力雄著 馬場裕之訳 『私の西域、君の東トルキスタン』

2011年12月30日 | 地域研究
 2011年12月12日「なぜ湖南省の常徳市桃源県地域は『ウイグル族第二の故郷』と呼ばれるのか」より続き。
 ツイッターのほうで、湖南省のウイグル族のことについて、この書に言及があると教示いただいたので、確かめる。
 監修者の劉燕子氏が「解説」を書いていて、たしかにその中にあった(劉氏は湖南省の出身である)。翦伯賛のことも出てくる(456頁)。
 ただ首をかしげるのは、湖南のウイグル人は高昌ウイグル国の末裔である(=遊牧ウイグル)と書いておきながら、現代のウイグル人と無条件に同一視しているところである。少しでも歴史を知っていたらありえない話である。もっとわからないのは、おなじ湖南人でありながら、翦伯賛に“ジェンポツァン”と北京語(普通話・標準語)の発音でルビをふっていることだ。その無神経さにおどろく。これは湖南方言(湘語)でふるべきところだろう。さらにいえば普通話に濁音はない(ピンインの“j”は“ジ”ではなく息の出ない“チ”音というだけの意味)こと、百もご存じの筈である。耳の悪い素人の日本人がふったようなルビだと言われてもしかたがない。中国研究の専門家、さらには中国語のネイティブとは思えないほどの粗末さである。いったい何を考えておられたのか。
 
(集広舍 2011年1月)