書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

アリストテレス著 池田美恵訳 『弁論術』

2015年02月20日 | 人文科学
 『世界古典文学全集』16(筑摩書房 1966年8月)、所収。


 公正は正義であると考えられている。しかし公正は成文法を越えた正義である。〔略〕公正であることは人間の弱さを許すことである。法ではなく法をつくった人間を、法の言葉ではなく立法者の意図を、行為ではなく動機を、出来事の部分ではなく全体を、罪を犯した人が現在どういう人間であるかではなく、常にあるいは一般にどういう人間であったかをみることである。
 (「第1巻」、同書93頁)

 説明がいまひとつよく分からないが、とにかく、この「正義」は、少なくとも「公平」ではない。だから「公正」と呼ばれているのだとも言えるだろうし、さらにひるがえって、ここでは「公正」と「公平」とが峻別されているのだとも言えよう。