書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

三島由紀夫『豊饒の海』を繙く。

2018年05月31日 | 思考の断片
 三島由紀夫『豊饒の海』を繙く。例によって自分一人の思い立ちだが、仕事と関連があるので、三島の長編は作り物臭さがやりきれなくて肌が合わないなどとは言っていられない。まず「春の雪」を英訳(Michael Gallagher訳)と読み比べてみる。乾いた基調は英訳と共通している。というより、隙がなく隙のない修辞と叙述上の見せかけの高ぶりを剥ぎ取り去ったもとの文体が英語に似ているのかもしれない。