書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

横山宏章 『中国の愚民主義』

2014年06月20日 | 東洋史
 中国の愚民主義とは賢人支配の裏返しであるのだろう。そしてそれは善政主義とは必ずしも関係ないと思える。少なくともその善政を施される側にとりそれがはたして善政なのかどうかについての省察はなさそうだ。
 
 弁証法はヘーゲル哲学から生まれたもので、生物進化論が成立する以前の非科学的方法(玄学)である。プラグマティズムは生物進化論が生まれた後の科学方法である。 (「協調と論争の友情――陳独秀と胡適」本書407頁に引く胡適「介紹我自己的思想」)

 唯物史観或いはマルクス主義は、たしかに胡適の言うとおりのものであろう。しかしプラグマティズムとてそうではないか。胡の恃む生物進化論そのものが、今日の見地からすればいまだ検証されない部分を多分に抱えた仮説であり、科学とは言い難かった。更に言えば、進化と進歩とを一緒くたにしていた、当時の俗流進化論は、とうてい科学とはいえないだろう。横山宏章『陳独秀の時代 「個性の解放」をめざして』(慶應義塾大学出版会 2009年9月)407頁、参照。

(平凡社 2014年4月)