書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

小島憲之校注 『日本古典文学大系』 69 「懐風藻 文華秀麗集 本朝文粋」

2014年06月20日 | 文学
 小島氏の「解説」で、『本朝文粋』の名は『唐文粋』に学んだもので、「文粋とは文章の英粋を纂したもの」であるという字解がなされた後、「但し唐文粋は唐代散文のうち、古雅を主とし、非定型の古詩を収めるなど、いわゆる美文にわたらざるものを一般に採用する」のに対し、「本朝文粋が編纂の体裁や部門に関して『文選』を学び、また平安人の美文麗句を収めるのは、『文粋』という名のみを学んで、実を失ったもの」(同書29頁)だと、非常に手厳しい評が付されている。

(岩波書店 1964年6月)