書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

「『中国の台頭、他の新興国に自信を与え伝統回帰を促す』―香港紙社説」 を読んで

2011年09月01日 | 地域研究
▲「レコードチャイナ」2011-09-01 06:02:14、翻訳・編集/AA。
 〈http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=53979

 まずはガリレオ以前の中世へレッツゴー! とりあえずは先哲のおられる春秋時代へ、国家体制としては前漢武帝の御代!!  しかし最終的にめざすは周公の居ます紀元前11世紀だ!!!
 ・・・というところであるか。
 文明(伝統)が断絶していないところは、伝統回帰となるとその発生の時点へストレートに戻ろうとするからおそろしい。イスラム復興(原理運動)がムハンマド生存時の時代に戻ろうとする(紀元6-7世紀への回帰)のもまたしかり。いったん途切れた文明は、書物を通じての復興だから皮膚感覚として失われていて、復興の時点での社会意識や個々人の心性(テクノロジーを含む)によって読みかえられている。ギリシア・ローマ文明がその良い例だ。キリスト教のファンダメンタリズムは、近代文明を知った上での拒絶である。そして、イスラム文明はさておき(これから勉強したいと考えている、ビンドゥー文明も同じ)とともに、中国文明(儒教・道教・中国仏教そして毛沢東思想)は、キリスト教文明と違って、過去において一度もまともに西洋近代と対決したことがない。なにもかも清朝と中華民国のせいにしてそれをひっくり返しただけだ。

 驚異的に馬鹿らしい(同時に空恐ろしい)ので、下に全文を掲げておく。

 2011年8月29日、香港紙・文匯報は社説で「近年の中国の台頭は、正常な歴史への回帰だ。中国は世界人口の5分の1を抱えている。歴史は長く、文化は深く、大国にならない理由がない。中国の台頭はほかの新興国家に自信を与え、自らの民族的伝統への回帰と、自身の特色と優位性の再発見を促すだろう」と述べた。中信網が伝えた。主な内容は次の通り。
 世界経済の先行きが不透明な中、外貨準備高を順調に増やしている中国は、世界経済成長の最大の貢献者といえよう。中国は昨年、日本を抜き世界第2位の経済大国となった。経済規模は改革開放前の100倍を超えた。急速な経済成長が国際社会の注目を集めたことは、非常に正常なことで、驚くべきことではない。かつて欧米列強の前に屈したこともあったが、中国は一貫して事実上の“大国”だった。今回の復活までこれほど時間がかかったのは、歴史的にはむしろ意外なことといえよう。
 中国の変化は、世界権力の再分配につながる。中国の指導者は現在、伝統と知恵を生かし、“平和的な台頭”の実現を目指している。いかに国際社会に入り込み、大国として大国と付き合い、変革に対する圧力を緩和するか。これらは全世界が共通して直面する課題だろう。もしかしたらカギはG8(主要国首脳会議)が握っているかもしれない。互いに忍耐をもって妥協を重ねることで、中国や新興国は満足を得られる。同時にそれは世界の新秩序の出現を意味するのだ。

「東トルキスタン」と「ウイグリスタン」の呼称の意味するところの違いその他

2011年09月01日 | 地域研究
 過去の自分の読書メモから。

 1) 東トルキスタンとウイグリスタンの意味するところの違い。

 いわゆる現在中国で新疆ウイグル自治区と呼ばれている地域を、“東トルキスタン”と呼ぶか“ウイグルスタン”と呼ぶかの選択は、その独立志向のウイグル人が、汎テュルク主義に立って周囲の同族国家と連帯しつつ運動を進めていくか(前者)、カザフスタン、キルギスタン(クルグズスタン)、ウスベキスタン、トルクメニスタン、そしてテュルク系ではなくペルシア系であるタジク人のタジキスタンも含め、それぞれがそうであり或いはそうであるよう目指しているように、自らもまたウイグル人によるウイグル人のための国民国家樹立を目指すか(後者)の立場の選択に関わってくるのだという。
(→2011年01月23日、Colin Mackerras/Michael Clarke 編 『China, Xinjiang and Central Asia』

 2) そもそも「東トルキスタン」とは何か、どこを指すのか。

   South of the T'ien Shan Lay Eastern Turkestan, or Little Bukharia. This was composed of a north-eastern zone, which had formerly been known as Uighuristan, and a much larger south-western zone, the Tarim basin, called Altishahr or Kashgaria, although both terms - Altishahr and Kashgaria - have sometimes been used to designate the whole of Eastern Turkestan. In these two areas, Uighuristan and Altishahr the inhabitants were almost exclusively Turki-speaking.  (Joseph Fletcher, 'Ch'ing Inner Asia c. 1800', p. 69)

 (日本語訳)
 天山の南には東トルキスタン、あるいは小ブハーリアが広がっていた。この地は、かつてウイグリスタンとして知られた北東部と、それよりもさらに大きい南西部、アルティシャフルまたはカシュガリアと呼ばれるタリム盆地から成るが、アルティシャフルまたはカシュガリアというこれら二つの呼称は、東トルキスタン全体を指す語として用いられることもしばしばあった。これら二つの地域〔かつてのウイグリスタンとアルティシャフル(カシュガリア)〕においては、住民はそのほとんどがテュルク語話者であった。

 言葉を足してもうすこし敷衍して言えば、こういうことである。

・東トルキスタンは天山以南を指し、それ以北(ジュンガリア)は歴史的には含まない。
・天山以南の東トルキスタンは二部分に別れ、比較的小規模な東北部分は過去(16世紀まで)ウイグリスタンと呼ばれたこともある地域(トゥルファン盆地一帯)と、それよりも大きな残りの西南部(タリム盆地・アルティシャフルまたはカシュガリア)とに別れる。
・アルティシャフルまたはカシュガリアの呼称で東トルキスタン全体を意味することもある。
・東トルキスタンに住んでいるのは圧倒的にテュルク系諸民族であるが、すべてではない。

 原文、時制が基本的に過去なのは、乾隆帝による征服(18世紀半ば)直後にかかる記述のため。 
(→2010年01月26日『The Cambridge History of China』 Vol. 10 から)

 基本的な知識を押さえてから大きな口は叩こうね、ボク。恥をかきたくないなら。それから、「ウイグリスタン」などと言っているカハルマン氏には、新疆ウイグル自治区の4分の1しか要らんのかと言いたい。どいつもこいつもいい加減な奴らが。

「米女優のダリル・ハンナ、ホワイトハウス前に座り込み抗議で逮捕」 を見て

2011年09月01日 | 
▲「msn 産経ニュース」2011.9.1 08:40、
 〈http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110901/ent11090108500003-n1.htm

 写真。
 『ブレードランナー』や『ウォール街』のころは本当に好きだったが、『キル・ビル』で「アレッ?」と思い、そいでもって今回のこれですか。まるで脱色したジャッキー・ブラウンじゃないですか。「シーシェパード」の支援者であるともいうし、もう勘弁してくれ。

「Vietnam will not make concessions in sovereignty」

2011年09月01日 | 地域研究
▲「Viet Nam Net」31/08/2011 01:00:00 PM (GMT+7), QDND.
 〈http://english.vietnamnet.vn/en/politics/12528/vietnam-will-not-make-concessions-in-sovereignty.html

  VietNamNet Bridge – “There is a fact that China commits to not take Vietnam’s land and sea, and Vietnam will never be unprincipled making concessions in sovereignty. Vietnam will never lean on any country against China,” Deputy Minister of Defense-Lieutenant General, Nguyen Chi Vinh told his Chinese counterpart.

 題にこのサマリーは似合わないと思って読み進むうちに、次の段落に出た。

  Vietnam is the friend and reliable partner of all countries in the world. But if Vietnam needs support, sympathy, cooperation and development, no one is better than China, a socialist neighbor with a population of over 1.35 billion people, which is strongly developing and gaining higher prestige and position in the world, if China respects Vietnam’s independence and sovereignty and also wants Vietnam to develop together,” Vinh added.

 “もし中国がベトナムの独立と主権を尊重し、かつベトナムとの共存共栄を望むのであれば”という限定(仮定)のうえの話だった。これがなければ中国への一歩屈服と取られても仕方がないのだが、これは中国側がちょっとやそっとで呑める条件ではない。この譲歩には高い代償が付いている。前にも書いたがベトナムのこういうしたたかさは嫌いではない。大抵の場合、粋(すい)と言ってもいいと思っている。

YouTube 「真夏の果実 EXILE ~LIVE~ 」

2011年09月01日 | 芸術
 〈http://www.youtube.com/watch?v=BWrmTi7FgsA

 同じサザンのコピーでもテレサ・テンの「真夏の果実」は、「これもアリかな」と思うし、これは桑田さん個人の(正確にはKUWATA BANDの)曲だが、越智志帆さんの「スキップ・ビート」は、まったく別物として観賞(どころか感動)できるのだけれど、EXILEのこのカバーは、前にも書いたことだが、ひどく違和感を感じるのはなぜだろう? EXILEファンにはとてもよく聞こえるらしいので、たんに好みの問題なのだろうけれど(上手いのは私も認める)、それでも正直いって、むかつく。
 そろそろ夏も終わりだね。