書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

読売新聞社編 『昭和史の天皇』 1

2006年05月09日 | 日本史
 4月1日『昭和史の天皇』8の続き。このシリーズも全巻読み通すことにした。
 編年体と思いきや、意外なことに昭和20(1945)年から始まる。 
 関係者の証言が詳細なうえにヴィヴィッドで、実に面白い。敗戦からわずか20年ほどしか経っておらず(第1巻は昭和42年第1刷)、人々の記憶がまだまだ鮮明だったせいだろう。
 たとえば、皇居吹上御苑に作られた防空施設「お文庫」の建設(絶対秘密下の突貫工事だった)に携わったある人の苦労談である。

 “完工式は、ごく内輪に行なわれ、作業に従事した人たち全員に、両陛下からマンジュウが下賜された。
 「あのころは甘いものに飢えていましたからねえ、おまんじゅうを押しいただいたものでしたよ」” (「お文庫にて」 本書151頁)


(読売新聞社 1976年5月第16刷)