魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ハナトゴエソ

2017年06月05日 12時25分57秒 | 魚紹介

今回は以前入手したものの、このぶろぐでは紹介していなかった魚をご紹介します。ヒメ目・エソ科・アカエソ属のハナトゴエソ。

底曳網漁業の魚で注目されるのは、水深200m以深の「深海」に住む魚が中心です。エソ科の魚も底曳網漁業で漁獲されるのですが、残念ながら深海性のエソ科魚類、というのは多くなくあまり注目されにくいものです。その中でもこのハナトゴエソは水深150-250mほどの深さに多い種で、浅い場所では48mからも記録されていますが、深い場所では700mほどの深さからでも採集されています。

この個体は高知県産。日本では三重県、高知県、東シナ海に分布し、世界では南シナ海やインドネシア、ハワイ諸島などに分布しています。学名のSynodus kaianusの意味は不明ですが、Saurus kaianus(=Synodus kaianus)の基産地はインドネシアのカイ諸島となっており、それにちなむかもしれません。

チョウチョウエソ

ハナトゴエソによく似た種類に、チョウチョウエソというのがいます。チョウチョウエソは若狭湾・相模湾以南、東シナ海、インドー西太平洋に生息していて、インド洋のほうにも分布が広がっているといえます。チョウチョウエソも底曳網でよく漁獲されていますが、主な生息水深は100m前後で、ハナトゴエソよりも浅いのが特徴です。

この2種の見分け方は吻の長さです。ハナトゴエソは明らかに上顎が下顎よりも突出しているのに対し、チョウチョウエソでは上顎と下顎の長さが同じくらいです(写真ではわかりにくい)。基本的に標本をつくる際には顎を閉じて固定するようにいわれますので、標本を撮影したものではわかりにくい場合があります(日本の海水魚、など)。また体側の斑紋もチョウチョウエソでは飛翔したチョウのような形、あるいはX字、Y字に近いのに対し、ハナトゴエソの体側の斑紋は概ね長方形や円形に近い感じです。

ハナトゴエソの頭部(上顎が下顎とくらべ明らかに長い)

チョウチョウエソの頭部(見えにくいが上・下顎は同じくらいの長さ)

ハナトゴエソも体側の模様がY字形ですが、チョウチョウエソほど明瞭な形ではありません。

食性は動物食性で小魚などを食するのだと思われます。写真の個体は2010年5月ごろに採集された、成熟した卵をもった雌の個体で繁殖期は5~6月ごろかもしれません。分布域が広めの割には数が少なく、チョウチョウエソよりも少ないくらいです。エソの仲間の大型種、例えばマエソ、トカゲエソ、ワニエソなどのマエソ属は食用魚(練製品の原料が主)として扱われていますが、本種はあまり利用されていません。

コメント
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