北海道シリーズもあとわずかとなりました。今日はスズキ目・キチジ科・キチジ属のキチジ。
キチジ科の魚はメバル科の魚と似ている。学者によっては、キチジ科をメバル科の中に入れているが、メバルの仲間とは異なるところが多いようだ。
キチジの頭部
深海性のメバル属(メバル科)魚類であるアコウダイの頭部
キチジの最も大きな特徴は眼下骨系の頬の部分に棘があること。メバルの仲間はほとんどの種でこの棘がない。また眼の上にも多数の棘があり、メバル科よりもフサカサゴ科に近いような印象をうける。ヒメキチジは名前だけ似ているが口がキチジと比べるとやや小さく、頬部の棘の数がキチジよりも多い。
胸鰭の中央部に欠刻がある。メバル科の中にも欠刻があるものがいるが、本種ほど深くはない。ヒメキチジは本種に似ているが別科とされている。しかしながら本種のような、大きな欠刻のある胸鰭を有している。
キチジの背鰭
キチジ属魚類は北太平洋に3種が分布している。うち日本近海に生息しているのは2種。本種とアラスカキチジである。写真はキチジの背鰭で、背鰭棘は細い。背鰭棘の鰭膜には大きな黒色斑があり、アラスカキチジと見分けることができる。またアラスカキチジは本種よりも体が長めな印象。下の写真、私が以前食したアラスカキチジはカナダのものであるが、たまに日本のスーパーでも販売されている。
カナダ産のアラスカキチジ
アラスカキチジは茨城県以北の北太平洋からベーリング海を経てアラスカ、南はカリフォルニア半島にまで広く分布しているが、キチジの分布域はそれほど広くなく、島根県、相模湾以北(ごくまれに三重県)~アリューシャン列島までである。日本に分布しないキチジ属Sebastrolobus altivelisはアリューシャン列島からメキシコのバハカリフォルニアにまで分布している。背鰭棘がよくのびているのが特徴のようだ。生態はどの種も深海産、キチジは水深1500m以浅の深海に生息し、アラスカキチジも同様であるが、アラスカキチジは浅瀬にまで出現することがあるという。実際に水中写真も撮影されているのだ。
キチジの仲間は通称「キンキ」と呼ばれ食用になる。やわらかめで煮物や鍋などで美味しい。坂口太一さん、ありがとうございました。