魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

バケムツ

2017年04月25日 01時37分39秒 | 魚紹介

長崎産の素晴らしい魚を入手しました。スズキ目・ホタルジャコ科・バケムツ属のバケムツ。

バケムツはホタルジャコ科の魚の中でもアカムツ属のアカムツによく似ている。アカムツと違うところは体色が黒っぽいところ。またアカムツの体の鱗は櫛鱗であるのに対しバケムツは円鱗であるところが異なる。またアカムツは多くが第1・第2背鰭が少しつながるようだが、バケムツはこれらの鱗が離れている。

ホタルジャコ科のには臀鰭棘数が2のものと、3のものがいるが、バケムツは後者である。日本産ホタルジャコ科魚類は14種がいるが、その中で臀鰭が2棘しかないのはスミクイウオ属(5種)のうちの4種だけである。

下顎先端には棘のようなものがない。この特徴からオオメハタ属の魚と区別することができる。歯がかなり鋭く、上顎の歯は牙のような感じ。下顎の歯は牙というよりは鋸歯のようである。バケムツはムツ科の魚によく似ているが、以下の点がことなる。日本産のムツ科魚類は背鰭軟条数と臀鰭軟条数がバケムツよりも少し多く、側線有孔鱗数は幅があるものの、概ねムツ科の魚のほうが多いなど。また顔の形もムツの仲間とは違う印象を受ける。

分布は広く、伊豆諸島や長崎、鹿児島県、沖縄諸島に見られる。海外では台湾やサモア、フィジーに生息している。水深500mまでの深い海に生息し、大陸棚斜面や島嶼、海山の周辺に生息するようである。バケムツ属は現状で1属2種が知られており。もう1種Neoscombrops cynodonはインド洋西部に生息している。

Heemstra(1986)では、Neoscombrops annectensと、N. cynodonの2種を記録しているあ、前者は後者のシノニムとされている。前者は1922年に記載されたのだが、後者は1921年に記載されている。ただこの属の魚は分類学的な再検討が行われている途中のようだ。

ホタルジャコ科の魚はほとんどの魚が重要な食用魚。小さなホタルジャコも「じゃこ天」の原料として重要であり、ワキヤハタやスミクイウオのような中型の種は練り製品の原料となるほか、焼き物や刺身で食べても美味しい。アカムツは刺身、寿司、煮つけなど様々な料理で食され、ありがたがられる。バケムツもアカムツほどではない(そもそも、あまり漁獲されない)が食用魚である。肉は薄いピンク色でやわらかいが、脂が多くて美味しい。今回はすべて刺身にしたが、煮物にしても美味しかったにちがいない。ただ刺身の写真があまりにも適当すぎて残念。

長崎県 印束商店 石田拓治さんより。ありがとうございました。

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イエローラインドカーディナルフィッシュ

2017年04月24日 13時48分12秒 | 魚介類飼育(海水)

昨年9月に我が家にやってきたイエローラインドカーディナルフィッシュ。我が家で飼育しているテンジクダイの仲間では最も大きい個体。特徴は第2背鰭の先端がとがっていること。しかし...

よく見ると背鰭が切れている。これをやった犯人はナベカと(ほぼ)判明。ナベカは黄色い体色がきれいだし、コケも少しは啄んでくれるようだが、ほかの魚の鰭もつつく癖があるので要注意。

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キスジヒメジ

2017年04月22日 14時49分30秒 | 魚紹介

今日は北海道シリーズはおやすみ。以前に入手してまだ書いていなかった魚。スズキ目・ヒメジ科・ヒメジ属のキスジヒメジ。

キスジヒメジの標準和名は体側にある1本の黄色の縦線からきているのだろう。ほかにこのような模様をもつヒメジ科魚類はアカヒメジなどがいるが、アカヒメジはキスジヒメジとは異なるヒメジ属の種。ヒメジ属とアカヒメジ属の違いは、鋤骨や口蓋骨の歯の有無などで見分けられるようだ。また色彩的にも、アカヒメジには尾鰭上葉に模様があるように見えないが、キスジヒメジの尾鰭には何本かの細い白色線があるので、アカヒメジと見分けられる。また黄色の縦線もアカヒメジより太く、よく目立っている。もう1種ウミヒゴイも体側に太い黄色帯があるが、ある程度育ったものは頭部の形や体形で見分けは容易、また側線鱗数や鰓耙数なども同定のポイントとなっている。

この個体は高知県以布利の定置網漁業で漁獲された個体。同時にアカヒメジも採集されていたが、見分けるのはそれほど難しくはなかった。水深80m以深の海底に生息する種で、分布域は三重県尾鷲以南の太平洋岸、琉球列島。海外ではインドー西太平洋に生息し、スエズ運河を経由して地中海にも入っている模様。ヒメジ科は近年の分類学的再検討の結果、種類が大幅に増えている。キスジヒメジはかなり広い分布域だが、インド洋のものと太平洋のものはいまのところ、別種とはなっていない模様。

今回は撮影後展鰭したため食用にできなかったが、東南アジアでは食用となっている。ヒメジ属としては結構大きくなる種で、刺身などきっと美味しいだろう。

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ミズウオダマシ

2017年04月21日 10時47分51秒 | 魚紹介

北海道シリーズも本当に残りわずかに。今日はヒメ目・ミズウオ科・ミズウオダマシ属のミズウオダマシ。

ミズウオダマシ属の魚は従来はハダカエソの仲間に含まれていたことがあったが、どうやらミズウオやキバハダカと単系統群を構成するものとされている。ただミズウオダマシが所属する科としてはミズウオ科の中に含まれたり、あるいはミズウオダマシ属1属を含む独立した科とされている。今回は日本産魚類検索第三版に従い、ミズウオ科とする。なお、このぶろぐで、ミズウオ科の魚をご紹介するのはこれが初めてとなる。今回のミズウオダマシは全長1142mmもあり、これまで出会ってきたヒメ目の魚としては最大のものであった。

脂鰭

ミズウオ科魚類は日本からは4属4種が知られている。ミズウオダマシがほかの3属3種とくらべて大きく異なっているのは背鰭がないところである。体の後方に見えるのは脂鰭で、これはミズウオにも、キバハダカにも、クサビウロコエソにも、そしてこのミズウオダマシにも見られる特徴である。

頭部

 

顎歯がない(成魚)

 

頭部は細長い。下顎の先端は上顎の先端よりも明らかに前方に突出するのが特徴である。上顎・下顎ともに顎歯はない。幼魚や未成熟の個体では大きく目立つ牙のような歯があるのだが、成魚では消失してしまうのだ。

「日本の海水魚」に掲載されているミズウオダマシには歯がある。しかしその個体はまだ未成熟の個体である。また少なくとも私がもっている版の個体はグリーンランド産の個体であり、ミズウオダマシではないと思われる。ミズウオダマシは従来は1属1種とされていたが、現在はAnotopterus pharaoAnotoperus nikpariniAnotopterus voraxの計3種に分かれている。A.pharaoは北大西洋産であり、A.nikpariniは北太平洋産、A.voraxは南半球に広くすむものだという。ということで日本に生息しているのはA.nikpariniである。日本における分布域は北海道のオホーツク海、太平洋岸~小笠原諸島近海、海外ではオホーツク海からメキシコのバハ・カリフォルニアにまで分布。沖合の表層から中深層を遊泳しているが、なかなか出会えない魚である。生息水深は700mより浅いところに多いようだ。

ミズウオの肉は水っぽく、煮ると溶けるので食用には向かないとされている。今回私も試してみたかったのだが、冷凍庫で保管したら大量の水が出てきてそれが鮮度を悪くしてしまったようだ。腐った臭いで食べるどころ出はなかった。しかしながら奇妙で不思議な出会いを楽しむことができた。坂口太一さん、ありがとうございました。

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シモフリカジカ

2017年04月20日 11時01分48秒 | 魚紹介

 

北海道は魚の種類が南方よりは少ないが、個性的な魚たちに出会うことができる。カジカの仲間も種類は豊富であるが、素人目にはなかなか同定しにくいものもあったりする。写真の魚はスズキ目・カジカ亜目・カジカ科・ギスカジカ属のシモフリカジカ。全長30cmほどになり、日本産のカジカの仲間では大きめの種である。シモフリカジカは北海道沿岸~青森県以南の太平洋岸に見られる普通種。北海道では全沿岸に分布するが、日本海における分布は北海道を除けば青森県、朝鮮半島とロシア沿海州に限定されるようである。生息地は沿岸の浅瀬、藻場や岩礁域である。

日本産のギスカジカ属魚類は4種からなる。トゲカジカやオクカジカは後頭部に2対の棘があるのに対し、シモフリカジカでは2対の皮弁を有することによりこの2種とは容易に区別することができる。

ギスカジカ

シモフリカジカに似ているものに、ギスカジカがいる。ギスカジカは北海道から東北地方の沿岸に生息する種で、シモフリカジカ同様ギスカジカ属の代表的な種である。ギスカジカも後頭部に2対の皮弁を持つのが特徴だ。ギスカジカは大きくなり、体長40cmを超える。

この2種を見分けるにはどうすればよいのか。それは腹面を見ればよい。シモフリカジカの腹面の模様、とくに肛門より前方は縁辺部にのみあるが、ギスカジカの模様は中央部に近づく。

シモフリカジカの腹面(写真上はトゲカジカと思われる)

ギスカジカの腹面

 

また眼隔もギスカジカのほうがひろい。シモフリカジカの眼隔も広かったが、ギスカジカはさらに広いのだ。ただし地方によって眼隔が広いものなどもいるかもしれない。この写真のギスカジカは北海道ではなく岩手県産。ギスカジカ属は様々な種が記載され、標準和名もつけられてきたが、変異個体とされたものも多い。

シモフリカジカの眼隔

ギスカジカの眼隔

日本のギスカジカ属魚類は4種類いるがいずれも食用となっている。身だけでなく肝臓や卵、胃なども一緒に汁物にいれたら極めて美味しい。今回の個体は雌で卵をもっていたがこれも美味であった。坂口太一さんに感謝です。

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