魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ヒシコバン

2022年11月09日 23時14分33秒 | 魚紹介

この間長崎からやってきた魚のご紹介。スズキ目・コバンザメ科・ナガコバン属のヒシコバン。

ヒシコバンは初めてみるコバンザメ科の種、というものではない。過去に愛媛県西海や、高知県以布利で漁獲されたものを見ている。しかしその時は大きくても全長10cmを少し超えるくらいの幼魚であり、成魚は見たことがなかったが、今回、ついに私の前にその姿を現したのであった。全長30cm以上になる成魚である。もっとも「日本産魚類検索」では39cmSL(標準体長)とあり、超巨大な個体というわけでもないと思われる。

ヒシコバンもほかのコバンザメ同様、頭部には大きな吸盤をもって、ほかの生き物に吸着する。実はコバンザメの仲間はある程度吸着する対象が決まっている。コバンザメはサメ類を中心に色々な生き物に吸着し(自由遊泳している個体も多い)、シロコバンはイトマキエイ類、スジコバンはウミガメやフグ類などに吸着するが、このヒシコバンは主にカジキの仲間に吸着し、定置網の中にバショウカジキなどのカジキ類が入ると、本種も網の中に入るように思える。そしてカジキ類のサイズとコバンザメの大きさはある程度比例するのか、バショウカジキの成魚が入るとある程度大きなヒシコバンが入るのに対し、バショウカジキの幼魚が入るとヒシコバンも極小サイズのものが網に入るようだ。

ヒシコバンの頭部背面。矢印で示したのが板状体

ナガコバン属は日本で5種または6種が知られている。特徴としてはまず吸盤。吸盤の板状体は15~19であり、シロコバン(12~14)、オオコバン(24~28)と見分けられる。また尾鰭の形は直線~やや後縁が丸みを帯びることによりナガコバンと見分けることができる。一方クロコバンとはよく似ているが、ヒシコバンは胸鰭上方が硬いのに対し、クロコバンはやわらかい。なおヒナコバンはクロコバンに似ているが、体色はクリーム色である。クロコバンとは別の種とされているようだが、これについては再検討の余地があるだろう。コバンザメは板状体は18~28と本種よりもやや多く、臀鰭はふつう29軟条以上であるのが特徴(本種では大体20~25くらい)。

コバンザメ科の魚は、全長80cmをこえるようなサイズにまで育つコバンザメがそこそこ食用として利用されているのだが、本種を含むナガコバン属はあまり食用にされていないように思える。本種は先述のようにカジキ類が水揚げされると定置網に入ることがあり、比較的入手はしやすいかもしれない。今回の個体は刺身にして食べたが、身が赤かったのが驚きである。以前食したコバンザメはこれほど赤くはなかったように思える。またコバンザメは結構内臓が匂う確率が高いように思えるが、本種には臭みはなかった。属が違うのが理由かもしれない。味はかなり美味であった。なおナガコバン属を食するのはこれが3回目。ナガコバンを2010年、ヒナコバンを昨年、そして今年はこのヒシコバン。ヒシコバンは遭遇したことはあるのだが、食したのはこれが初めてである。

今回のヒシコバンは長崎県産。「印束商店」石田拓治さん、ありがとうございました。

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