魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

テンジクイサキ

2016年06月01日 10時07分21秒 | 魚紹介

私には同定するのが苦手な魚も多い。コイの仲間、ハゼの仲間の一部、さらにはクサウオの仲間などだ。これらは写真をほい、と見せられてもわからない。幸いにもこれらの魚は釣りではあまり採集されなかったり、あるいは研究者だって悩むような魚がいたりする。特にコイ科のフナ属のものはそうである。フナの写真を見せて、「はい、これは●●ブナです」などと簡単に答えてしまうような人間がいるなら、その人は信用するべきではないだろう。

そして私が意外なほど悩むのがこのイスズミの仲間である。イスズミ科の魚は比「Fishbase」によれば、世界で54種が知られているとされるが、この数については学者によって意見が分かれている。Fishbaseで使用している分類群ではメジナ科、タカベ科、カゴカキダイ科などもこのイスズミ科に含めているからだ。日本で採用されている分類群を基に考えるなら、イスズミ科の魚はイスズミ属とコシナガイスズミ属、日本には産しないHermosillaの3属となり、それは18種が有効とされている。

日本のイスズミ科の魚は5種が知られている。うちコシナガイスズミ属の唯一の種であるコシナガイスズミ(伊豆・小笠原諸島に分布)を除くと、イスズミ、ミナミイスズミ、ノトイスズミ、テンジクイサキの4種が有効とされる。この4種はメジナのように強い引きをするので釣りの対象魚となるのだが、あまり人気がない。この仲間は釣りあげるとすぐに糞をする習性があるからだろうか。

テンジクイサキの幼魚

私が釣ってキチンと記録と記憶に残しているのはテンジクイサキくらいだ。テンジクイサキは「イサキ」と名前についているのだが、イサキ科の魚ではない。この幼魚は当初ノトイスズミと思っていたのだが、後からテンジクイサキの幼魚ではないか、という指摘をいただいている。確かにノトイスズミと比べると体高があり、臀鰭の形もノトイスズミとは若干異なる感じだ。そしてこれでノトイスズミは残念ながら、まだろくに見ていない魚ということになってしまった。背鰭の形や、臀鰭の形が違うというのはあくまでも本に掲載されたものと合わせていたもので、現物を見ていないことにはわからないこともある。これは高知県柏島、防波堤からの釣りにより採集された。高知県にはイスズミやノトイスズミも見られるので、釣っていてもおかしくないはずであった。

テンジクイサキの大型個体

テンジクイサキはもう一度見ている。大型個体だ。この大型個体は愛媛県西海の定置網で採集されたもので、全長40cmを超える大物であった。

背鰭。背鰭軟条部の前方は高く、最長棘よりも長いのが特徴だ。確かに長いように見える。しかしそれでは柏島の個体ではテンジクイサキと同定できない。幼魚期はそうでもないのだろうか。

臀鰭も軟条部前方がかなり高くなっている。

分布域はインドー太平洋域で、ハワイ諸島にも分布している。日本では北海道南部~琉球列島、小笠原諸島に分布する。この仲間の幼魚は流れ藻につく習性があるため分布域が広域におよぶのだと思われるのだが、東太平洋にはいない。これは同じように流れ藻につくアミモンガラやソウシハギなどと異なるところだ。さて、味はどうだろうか。Fishbaseによればなんと「Poisonous to eat」とある。海藻を食べる魚はたまにそういうこともあるようであるが。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スジギンポ属2種 | トップ | アカヒメジ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

魚紹介」カテゴリの最新記事