魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

チョウチョウウオ科の幼魚

2010年09月17日 23時34分03秒 | 魚紹介

今年は例年よりもチョウチョウウオの仲間が多いという話をあちらこちらで耳にしております。磯採集家のみなさんも様々な種類のチョウチョウウオの幼魚を採集されているようですね。

チョウチョウウオの仲間はみなトリクチス期Tholichthysと呼ばれる期間を経ます。この写真は高知県以布利の大敷網で漁獲されたものですが、種までは結局同定できませんでした。

陸上の王者、昆虫の仲間のチョウの幼虫である芋虫は女性はどんびきする方もおられますが、海のチョウの名にふさわしいチョウチョウウオの稚魚は愛らしいのです。

ゲンロクダイChaetodon modestus Temminck and Schlegelの稚魚です。写真上のサイズより一回り大きめの個体です。ゲンロクダイは日本ではチョウチョウウオ属のロア亜属にいれていますが、Fishbaseなど、海外では最近になってこの仲間3種をロア属Roaに昇格させています。今年の販売が噂される魚類検索第三版では、はたしてどうなるでしょう。

これよりさらに大きくなると、成魚によく似た模様が出てきます。本種は他のチョウチョウウオ属とは背鰭棘数が少ないこと、下顎の黒色斑で区別可能です。分布は南日本、山陰にも出没し、日本海側でも見るチャンスがある種です。ただし、磯採集では無理でしょう。やや深場にすむ種のようです。日本海では他、チョウチョウウオ (山陰以南) やトゲチョウチョウウオ (山口県など) も採集されています。

タキゲンロクダイCoradion altivelis  McCullochの稚魚です。この種は背鰭棘数が8本とゲンロクダイよりもさらに少ないのが特徴です。これだとわかりにくいのですが、あと3-4mmほど大きくなれば、親のような横帯が出現します。

もう少し大きくなった個体です。まるでイシダイのような色彩が特徴です。

ハタタテダイ属Heniochusの集合写真です。今回は2種が採集されました。

こちらがハタタテダイです。ハタタテダイHeniochus acuminatus (Linnaeus)は小さいものばかりが4個体。もっといたのですが、たくさん拾いすぎると、あとでややこしい(笑 背鰭棘は11本でした。

こちらがムレハタタテダイHeniochus diphreutes  Jordanです。背鰭棘数が多く、また顎歯数がハタタテダイと異なります。網に入ったのはハタタテダイよりも大ぶりのものばかり。日本産稚魚図鑑によりますと、ハタタテダイと比べて着底するまでの期間が長いそうです。青森県以南に分布し、ハタタテダイよりも北上することが多いのはこの習性によるものでしょうか。

 今回はチョウチョウウオの仲間を合わせて40匹位採集したのですが、今回トリクチス期を脱したチョウチョウウオ属の魚が1匹も獲れなかったのは意外でした (ゲンロクダイ除く) 。チョウチョウウオ属の魚は、やはり造礁サンゴに依存するものが多いからということもあるのでしょうね。

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9 コメント

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Unknown (鈴鹿)
2010-09-18 23:24:00
すごい内容ですね。マニアックすぎますよ!
ハタタテダイとムレハタタテダイのこのサイズの同定なんて聞いたことがありません(笑)

でもこういうの大好きです!面白そうですね。

そういえば椎名さんにお土産としてフィリピンの私がレアと思う魚をキープしています。
手を加えたフォルマリン液(Na2HPO4ともう一種何とかという薬を2種類加えたもの)にいれて保存しています。耳石採取にどうですか?冷凍じゃないからだめでしょうか?
何かご希望の種がいましたら探します^^
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Unknown (椎名)
2010-09-19 00:57:12
ありがとうございます。
ホルマリンは正直いって、耳石採集には厳しいのです(もろくなってしまうのだそうです)でも、そのあと正確に同定するのに良い材料になりそうです(実は以前のクロサギなどはまだ同定できておりません)

できれば(もしお暇がありましたら)ハゼやカワアナゴなど冷凍していただければ嬉しいのですが・・・
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Unknown (相模湾)
2010-09-19 21:56:39
こんな大きさのゲンロクダイは、見たことないですね。いいなぁ。

こちらでは、ヤリカタギのトリクチスが定置網に入ったことがあります。
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Unknown (鈴鹿)
2010-09-19 22:03:31
やはり変性してしまいますかぁ。

冷凍は正直無理ですねぇ。やはり干物か液体保存かしかないのが残念です。

私がこの2年で集めた魚の写真のデータがあります。500種800枚ぐらいですがこちらも何かの参考にしていただければ幸いです。ほとんどWEB魚図鑑に載ってますけどね^^

ハゼ、カワアナゴ了解しました。ちょくちょく市場に顔だします☆
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Unknown (椎名)
2010-09-19 23:12:53
相模湾さん

さすがに背鰭棘・軟条数の多い少ないで同定できる種でないとトリクチスは難しいですね。
相模湾の定置網は面白そうですね。水深がわかりませんが、奇妙な深海性魚も入りそうです。

ゲンロクダイの仲間はやや深場にすむのでそちらでも出てくるでしょう。ただこの種は温帯性で日本近海でも繁殖している可能性がある種だそうです。
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Unknown (椎名)
2010-09-19 23:18:20
鈴鹿さん

液体保存でしたらアルコールが使えますが税関はクリアできるかどうかが問題です。もし可能でしたら、輸送のときだけタッパーか何かに入れられるとよいのですが。

「究極の方法」は、フィリピンオフ会の時に取りに伺います。ただひと月ほど滞在したいのですが・・・難しいかなあ。

今年は三重で(しかも亀山のとなりの津市で!)魚類学会があります。参加されないのは残念ですが、お会いできる機会が来るのを楽しみにしております。
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Unknown (鈴鹿)
2010-09-21 21:18:32
三重大でしょうか?一度そういう学会に参加してみたいのですが、いま住んでいる所が所なので^^:

WEB魚図鑑と椎名さんのブログで勉強中です☆

タッパーの件分かりました。アルコールだとフォルマリンより保存状態が良くなるのですか?
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Unknown (椎名)
2010-09-21 22:58:56
アルコールだとホルマリンと違って崩れるまでに長い年月がかかるのだといいます。

さて、報告ですが近々そちら(セブ)へお伺いすることになりそうです。その時はよろしくお願いいたします。
そちらの市場も見てみたいです。高速船でセブから2時間くらいとお聞きしました。
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Unknown (なたや)
2013-09-02 20:47:15
私も海で似たものを網で救いました
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