
この魚はヒメスミクイウオという魚である。
一昨日と昨日にアップしたテンジクダイの仲間のようにも見えるが、この種はスズキ目ホタルジャコ科・スミクイウオ属の魚で、テンジクダイの仲間とは大きく異なる。
ホタルジャコ科の魚はアカムツ、スミクイウオ、ワキヤハタなどがいるが多くの魚は深海性である。やや浅い場所で見られるのは本種やホタルジャコくらいか。スミクイウオも幼魚がダイバーによりたまに写真撮影されるが、多くは水深100m以深の場所から漁獲される。
このヒメスミクイウオは前回までのこのブログでも長々と書いてきたテンジクダイ科の魚と同様、水深70mほどの場所から小型底曳網で漁獲された。先ほどのべたスミクイウオは100~1000mの場所で多く漁獲されるが、ヒメスミクイウオの生息場所はそれよりも浅く30~300mほどの場所である。
スミクイウオとヒメスミクイウオの見分けには腹鰭の棘をみるのが一番簡単である。スミクイウオは腹鰭の前縁がなめらかであるが、ヒメスミクイウオの腹鰭前縁は鋸歯状である。このほか鰓耙数もやや少ない傾向があるようだ。日本産スミクイウオ属は5種が知られるが、ほかのスミクイウオ属魚種とは、第1背鰭と臀鰭第2棘の前縁がなめらかであることや、臀鰭棘が2棘であることにより区別することができる。もっとも、ほかの3種は日本ではまれな種であるのだが。
ヒメスミクイウオは神奈川県や土佐湾以南の太平洋岸、日本海西部、東シナ海に分布し、海外ではインド-西太平洋に広く分布している。北海道から九州までの太平洋岸、京都~九州までの日本海岸や東シナ海に分布するスミクイウオと比べると暖かい海を好むのだろう。宇和海ではホタルジャコを原料に用いた加工品じゃこ天が有名だが同じホタルジャコ科の本種はあまり使われないのかもしれない。
小魚の話をするのはとても楽しい。私のぶろぐでは一般に食用にされる魚を語るよりもこのような小さな魚の話をする方が文字数は多くなる。小さな魚には小さな魚なりの楽しみがある。大物だけが魚ではない。日本には4000種の魚が生息することを考えると、その楽しみも4000通りあるわけだ。
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