椎名さんは4月も新しい現場に行かされるなど、色々忙しかった。久しぶりに食した魚のご紹介。アマダイ科・アマダイ属のハナアマダイ。
ハナアマダイは奄美諸島以南の琉球列島に分布するアマダイ科の魚であるが、この海域にはアカアマダイやキアマダイ、シロアマダイは見られないらしく、一般的にはこの海域唯一のアマダイ科魚類とされる。
ハナアマダイの頬の鱗
ハナアマダイの頬の鱗。頬部の鱗の中央部が一番大きいのがハナアマダイの特徴でほかの魚と見分けられるようである。シロアマダイなどは、基本的により小さく、鱗はほぼ同じ大きさである。なお、キアマダイやスミツキアマダイとは、眼の下に白い横帯が入らないことにより、明瞭に白い横帯が入るこれらの種とは容易に見分けることができる。
ハナアマダイの正中線
図鑑などでは背鰭前方の正中線が黒くないのがハナアマダイの特徴とされているようだが、この個体では明瞭に黒かった。今回のハナアマダイの前に2022年にも鹿児島県産のハナアマダイを入手しているが、そのときの個体についても頭部正中線が黒いのが目立っていた。なお、シロアマダイについても正中線が黒いものがいる。しかしあまり明瞭ではない。
ハナアマダイ尾部
シロアマダイ尾部
尾鰭の色彩は「日本産魚類検索第三版」の同じページに掲載されているシロアマダイよりは、アカアマダイやキアマダイの尾鰭によく似ている。というか、シロアマダイの尾鰭の色彩・斑紋は日本産のほかのアマダイ科魚類と異なっている。ほかの日本産アマダイ属魚類は尾鰭の下方が暗色になっていて、面積が広いのだが、本種だけは縁辺が暗色になり、尾鰭の下方の暗色部の面積も狭いようである。ただしウェブサイトなどで「シロアマダイ」とされる個体の尾鰭を調べてみたが、結構個体差はあるよう。香港のものなど、黄色い斑点が目立っているが、これはまた別種とされるのではなかろうか。なおシロアマダイのタイプ産地は鹿児島とされる。
ハナアマダイの背鰭
一方、ハナアマダイの特徴のひとつとされる背鰭前方の暗色域であるが、この個体にはそれは見られず。本種の新種記載した報文に記された写真では、背鰭には明瞭な黒色まだらはあるのだが。成長に伴い消失するのかもしれない。以前入手した個体においては薄ら暗色斑があったのだが、本種の鰭膜は透明であった。ただし胸鰭の黄色が目立つのは本種の特徴らしい。
椎名さんは魚を刺身で食するのが好きである。しかし、アマダイ科の魚だけはそうではない。刺身よりも熱を加えて料理したほうが個人的には好きなのだ。この仲間は焼いても身がぷりぷりしていて美味しい。今回はオリーブオイルで焼いたものをバター主体のたれをかけて食べたが、うまくマッチして美味しい。皮にもうまみがあり、捨てないように注意したい。
今回のハナアマダイも長崎県 マルホウ水産の石田拓治さんより。いつもありがとうございます。