魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

イトヒラアジ

2023年08月03日 19時15分21秒 | 魚紹介

以前入手したものの、紹介できていなかった魚をご紹介。アジ科・イトヒラアジ属のイトヒラアジ。

従来この魚はCarangoides属とされたが、Carangoides属は単系統ではなく、現在は細分化されている。本種は現在イトヒラアジ属Carangichthysとされているが、海外ではいまなおCarangoides属としている文献も多いので注意を要する。なおCarangoides属にはヨロイアジ属という属の標準和名がついていたが、ヨロイアジはクボアジ属とされ、Carangoides属の日本産種はおらず、海外で採集された個体の標準和名もついていない。もっとも分布域はフィリピン、インドネシア、ベトナムなど東南アジア海域なので、日本でもいつか見つかるかもしれない。

現在イトヒラアジ属は3種が知られている。日本産は2種いるものの、よく似たテンジクアジはまだ1回しか見ていない。イトヒラアジの特徴としては第2背鰭基部に黒い斑点の列があるが(写真)、これはテンジクアジには見られない。また尾鰭の色彩もかなり違うように見える。日本に分布しないもう1種のCarangichthys humerosusは英語名でDuskyshoulder trevallyまたはEpaulette trevallyと呼ばれているように、肩部に大きな暗色斑がある。この種はインドネシアやパプアニューギニア、オーストラリアに分布しているが、いつか日本にも出現するだろうか。ちなみにイトヒラアジは英語名Shadow trevallyと呼ばれている。イトヒラアジは成魚では60cmを超えるサイズにまでなるが、その個体は体にアンダマンアジなどを彷彿とさせる細かい黒い斑点が現れ、胸鰭や腹鰭などが黒いスミを塗ったような色彩になる。これが英語名の由来であろうか。

このような個体は沖縄などでもごくまれに市場に出るようだが、まだ見ていない。ぜひともテンジクアジとともに手に入れたいアジである。イトヒラアジやテンジクアジの幼魚と思われるものは、幼魚のうち大型のクラゲなどについていることもあり、九州以北の太平洋岸、新潟県、兵庫県、山口県日本海岸などに出現するが、越冬はできていないようである。たまにインドネシアなどから輸入され観賞魚店で販売されることもあるが、アジ科の魚はよほど大型の水槽でない限り、家庭ではうまく飼えないことが多い。むしろ食用として重要であり、刺身や塩焼きなどに向き美味である。幼魚については今後同定ポイントを再調査するべきであるように思う。

この個体は鹿児島県の笠沙産。伊東正英さんからのいただきものである。いつもありがとうございます。

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