これまでも「魚のぶろぐ」ではアジ科ムロアジ属の魚を何度もご紹介してきたが、今回は久しぶりに新しいムロアジ属を食する機会に恵まれたのでご紹介したい。モロという種類である。
モロは冨山一郎・阿部宗明の「原色動物大図鑑Ⅱ」(北隆館、昭和33年)では「もっともふつうに見られる種」としているが、個人的には本当にそうなのかなー、とも思う。Googleの画像検索ではこのモロはなかなかお目に罹れず、同じムロアジ属のマルアジのほうがずっと多くヒットする。もちろん海も62年間で変わってきているということがあるのかもしれない。ただ温暖化がすすんでいるという昨今、マルアジよりも南の海に多いモロが少ないというのは疑問。62年前とはアジの学名も今とはかなり異なっているが、あまり分類がすすんでいなかったのかもしれない。
なお、私がモロを見たのは今回が初めてではなく、およそ10年ぶりくらいである。以前に沖合底曳網漁業で獲れたのをいただいたのだが、今回のものは何の漁法で獲れたのかはわからなかった。以前獲れたモロは30cmを超えるビッグサイズだったと思う。当時は定置網にかかったムロアジやクサヤモロをよく見ていたので、ひとめで別の種のムロアジ属だとわかったのだ。厳密に見分けたいのであれば頭部背面をみるのがよいだろう。頭部背面の鱗域が眼の間隔に達しないのが特徴で、インドマルアジをのぞく多くのムロアジ属魚類と見分けられる。インドマルアジとは側線直走部の稜鱗の分布により見分けることができる。インドマルアジは稜鱗が側線直走部の大部分を覆っているのに対しモロは後方にのみある。
「原色動物大図鑑Ⅱ」では刺身にはしないとあったが、刺身にして食べると非常に美味であった。ただし、今回の個体はそれほど大きくはなかったため、4匹分まとめてお刺身にしたのである。その結果それなりの量を刺身で食べることができた。6匹やってきたのだが、あとの2匹は焼いて食した。価格は安価ではあるが刺身は全く安っぽくはない。いい魚を味わうことができた、と思っている。石田拓治さん、印束商店さん、いつもありがとうございます。