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魚のぶろぐ

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キビレアカレンコ

2025年01月12日 15時41分51秒 | 魚紹介

今年に入って、初めて購入した魚がこちら。タイ科・キダイ属のキビレアカレンコ。本種は小笠原諸島、琉球列島、沖縄トラフ、台湾からフィリピンにかけて分布している種である。

椎名さんがキビレアカレンコを入手したのは今回が初めてではなく、通算3回目である。しかしながら過去2回は冷凍であったり、標本にしたりしていたので、なんだかんだいっても新鮮な個体をじっくり観察できるのは今回が初めてだったりする。

キビレアカレンコはその存在自体は古くから知られていたが、新種として記載されたのは2007年と比較的新しいものである。新種記載論文は国立科学博物館の「New Fishes of Japan : Part 1」と銘打たれ大々的に発表されたものであり、とくにハゼ科のなんやかんやの種が新種記載された。ほかタビラ類の新亜種記載であったり、リュウキュウヘビゲンゲなんかもこのNFOJ1によって記載されたものであった。これは2008年、2009年、2011年、2012年も続き、多量な魚の新種(ないし新属・新亜種)が記載された。何気にゴンズイやオキナワキチヌ(NFOJ2)、ワニゴチ(NFOJ3)なんかもこのシリーズで新種記載された。もちろん、膨大なお金を費やしたのであろうが、それでもフリーで論文をダウンロードできるのでありがたい限りである。

キダイ

さて、日本産のキダイ属は2種が知られている。もう1種はキダイで、これは青森県、山形県および福島県~九州南岸、種子島・屋久島までの日本海・太平洋・東シナ海沿岸に分布するが、琉球列島には生息していない。つまり九州以北のキダイと、琉球列島および小笠原諸島のキビレアカレンコという具合で、明確に分けられているようである。

キダイの背部。黄色斑が薄らではあるが存在する

キビレアカレンコの背部。黄色斑はない

この2種を見分けるのは(慣れれば)難しくない。キダイでは体側の背部に薄い黄色斑が出るが、キビレアカレンコではでない。また背鰭の色も異なり、キダイでは赤みを帯びた色彩で、キビレアカレンコは明らかに黄色っぽい。なお「日本産魚類検索第三版」においては、「背鰭と臀鰭では色が濃い」とあるが、この個体も臀鰭の色は特に濃いわけではなかった。実際に原記載論文の中にも「臀鰭の鰭条は基部に沿って一様に赤みがかかった黄色で、ほかは透明」とある。この個体もうっすら赤みがある程度である。

なお、従来は明らかに臀鰭の色が濃いキビレアカレンコを入手している。多くの図鑑でも掲載されているのはこのタイプである。しかしどうも大型個体ではこの臀鰭の色彩が薄れてしまう傾向にあるようである。全長30cmを超えるようなものは、そうなるのかもしれないが、30cmをこえるようなものでも、臀鰭が明らかに美しい発色を示すものがおり、必ずしも成魚は薄くなるというわけでもないようである。

キビレアカレンコの体を傾けて写真を撮影するとこのような模様が現れる。青白い縦線が非常に美しい。一方体側の後背部の模様は縦線ではなく、斑点のようになっている。ヒレコダイみたいな模様である。格好いい。

さて、キダイといえば煮つけや焼き物でも美味しい魚なのだが今回は大きいのが2匹も手に入ったのでお刺身に。かなり甘さを感じたもので、非常に美味しい。沖縄ではマダイは(ほぼ)分布しないので、赤い高級魚といえばハマダイ類なのであるが、キビレアカレンコも「まち漁」で多数獲れるとのこと。沖縄では「ふかやーまじく」(深場のタイ科魚類)と呼ばれる。このキビレアカレンコも「魚喰民族」マルホウ水産 石田拓治さんより。いつもありがとうございます&本年もよろしくお願いいたします。

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テンジクアジ

2025年01月07日 13時59分34秒 | 魚紹介

さて、2025年も開けてからもう1週間たつが、筆者はまだお休みらしいお休みはもらえていない。基本的に朝に帰ってきて、そのまま夕方に仕事へ行くというパターン。ヒトデが足りないのだそうである。

今回は昨年末に撮影した魚の撮影。アジ科・イトヒラアジ属のテンジクアジである。テンジクアジは日本では古くからCarangoidesとは別物とされてきたが、Fishbaseなどにおいては2020年代までCarangoidesにふくめられてきたものである。なおよく知られているように、Carangoides属は現在世界で2種のみが知られている。それ以外にかつてCarangoides属に含められてきた魚は、様々な属に移動されたり、新しい独立した属に含められたりした。

テンジクアジは基本的に南方系のアジであるが、幼魚は本州から九州の太平洋岸、年によっては日本海岸にも姿を見せる。これらの地域で釣れることもあるのだが、釣りあげられてすぐのときは体が金色をしているのである。しかし死んでしまって長い時間がたった個体や、冷凍してしまったものは金色が消えてしまうようである。ただし写真の個体についても体の一部に金色が残っている。胸鰭周辺に残っているのがそれであり、この金色を体中にまとっている姿を想像してほしい。

同じイトヒラアジ属の魚で、属の標準和名になっているものにイトヒラアジというのがいる。イトヒラアジも南方の種で、秋に本州~九州の沿岸に出現し、釣れることがあるのもテンジクアジと同様である。個体数はイトヒラアジのほうが多いように思える。テンジクアジはこれまで何千、何万と魚に触って来た(と自負している)のだが、過去2回触ったのみである。以前は鹿児島県の伊東さんのところから届いたものであった。このイトヒラアジもまさにその個体である。

 

テンジクアジの背鰭基部

 

イトヒラアジの背鰭基底

テンジクアジとイトヒラアジの見分けについては、背鰭軟条部を見るのがベストであろう。イトヒラアジでは背鰭基底に黒色点が並んでいるが、テンジクアジは背鰭基底にはそのような斑点がない。また、軟条数についてもこの2種においては違いが見られ、イトヒラアジでは17~19であるが、テンジクアジでは20~22と、イトヒキアジよりも多いので見分けることができる。なお魚類検索においては側線直走部は曲走部より長いのがテンジクアジ、短いのがイトヒラアジという見分け方も紹介されているのだが、残念ながらこの形質はあまりあてにならないようである(成魚ではともかく、なのかもしれないが、少なくともこのくらいのサイズの幼魚では使えないよう)。なおイトヒラアジ属は日本に分布する2種のほかにCarangichthys humerosusというのも知られている。

テンジクアジは食用魚でもあるのだが、残念ながら今回の個体は食用にはできなかった。今回のテンジクアジは宮崎県の荒武さんを経由し、Wadaさんよりいただいたもの。おふたりにはいつも協力していただき、魚を集めている私はいつもお世話になっている。ありがとうございます。

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ツチホゼリ

2024年12月29日 23時09分24秒 | 魚紹介

ハタ科の魚、とくにアカハタ属の魚は美味しい、そして大型になるものも多く、日本においては小型のアカハタから2mをこえるタマカイまでほとんどの種が食用になっている(ただし稀少なものやアカマダラハタなどのようなシガテラ毒魚はのぞく)。椎名さんもたくさんのアカハタ属を食してきたが、その中でもまだ入手していないものもいる。そのうちのひとつがこのツチホゼリである。

写真のツチホゼリは幼魚で普通ならリリースサイズのようであるが、弱っていたため我が家にやってきてくれた。体は灰色っぽく、全身に黒い斑点があるのが本種の特徴。成魚は地味なハタなのだが、幼魚のうちは鰭が明瞭に黄色で美しい。

インド洋に生息するものに近縁種の「キビレハタ」というのがいる。これはインド洋のアンダマンやチャゴス諸島に生息している個体をもとに「インド洋の魚類」という書籍のなかで和名がつけられたものである。この種は青と黄色でルリハタのごとく毒々しい色彩なのであるが、体長(BL)570mmでもこの色彩なのはすごい。インド洋産の個体をもとにつけられた和名であっても標準和名として扱われる種もいるのだが(ちなみにアンダマンアジやチャイロマルハタなどもインド洋産のものに和名がつけられている)、この「キビレハタ」という名前は現在は別のハタ科の魚の標準和名として使用されているために、このツチホゼリに似た種の標準和名としては使うことができない。

ツチホゼリは刺身で食したが残念ながら写真が行方不明に・・・。今回のツチホゼリはHN「魚のげぼ」さんより。ありがとうございます。ということで今年も色々な魚を食べたり、触ったりすることができた。ありがとうございました。なお、明日か明後日に今年のまとめ記事をアップする予定。

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アオヤガラ

2024年12月27日 15時22分59秒 | 魚紹介

いまさらながら先月末に入手した魚のご紹介。ヨウジウオ目・ヤガラ科・ヤガラ属のアオヤガラ。

アオヤガラの吻

アオヤガラの見た目はアカヤガラに似ているが、体色はよりくらい色で、海や水族館などでは青く見えるのがその名前の由来であろうと思う。筆者は海で毎年のようにアオヤガラを見ているが、なぜか釣りで入手したことはなかった。アオヤガラという魚はこの写真のように吻が長く、餌を素早く食べることができないのであろうか、餌釣りではなかなか釣れないのだ。一方ルアー釣りなどでは頻繁に釣れるものであり、私がこれまで入手したアオヤガラというのは大体がルアーで釣れたものであった。

2012年のアオヤガラ

漁法としては定置網や先述のようなルアー釣りで得られるほか、延縄、時として底曳網漁業においても漁獲される。底曳網で漁獲されるヤガラ科、といえばアカヤガラであることが多いようだが、たまにアカヤガラが漁獲される深さにもおりてくるようだ。前回(2012年)には底曳網で漁獲されたアオヤガラを入手しているのだが、そのときは標本にしたため、食することはできなかった。今回は刺身で食し、美味であったのだが、残念ながら写真が行方不明になってしまったので、今回は料理の紹介はなし。今回のアオヤガラも魚喰民族 石田拓治さんより。ありがとうございました。

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カスミフグ

2024年12月23日 16時47分45秒 | 魚紹介

もう12月も終わり。来週で今年もお終いです。今日は昨年我が家に来ていたが紹介できなかった魚。フグ目・フグ科・モヨウフグ属のカスミフグ。

カスミフグの尾鰭

カスミフグはモヨウフグの仲間で、全長30cmをこえるというが、ふつうはもっと小さいだろう。全身に特に目立つ縞模様や白い斑点はないので、ほかのモヨウフグ属の多くの種とはそれにより識別できる。色自体はグレーで地味なのだが、そこがいい。この写真からは全くわからないのだが、口元や眼は黄色くてそれなりにきれいである。尾鰭の色彩は地色が黄色っぽいが縁辺が黒いという色彩になる。これについては上記の写真でも確認できるだろう。また鰓孔の周りが妙に黒っぽいものも特徴である。

カスミフグの体表の小棘

カスミフグの体表には小棘がたくさん見られる。東南アジアなどの釣りウェブログではこのカスミフグを釣りあげた様子の写真が掲載されており、それはハリセンボンのごとく棘を立てていることが多い。なんか手触りがよさそうである。モヨウフグ属の種ではそのほとんどの種でこのような小さな棘を見ることができるようだ(ケショウフグなど見たこともない種もいるが、それはどうだっただろうか)。以前入手したモヨウフグも、小棘の1本1本が大きく、まるでハリセンボン科のように見えた。ただこの棘の有無は属レベルの階級の定義にならないらしく、トラフグ属やサバフグ属では種によって棘があったり、なかったりである。たとえばシロサバフグやクロサバフグ、ドクサバフグでは背面の小棘が明瞭だが、カナフグでは見られなかった。これについては今年の3月に記事にしたので見てほしい。

スジモヨウフグ

さて、モヨウフグ属といえば避けては通れぬ(?)交雑のお話。椎名さんの手元に戻ってきたHPエリートデスクを使ってGoogle先生を召喚し、カスミフグで画像検索を行うと、一部どうしても怪しいものが見られる。見た目はカスミフグなのだが、背中に薄い縦線が入っているというものである。これは何を意味しているのかだが、スジモヨウフグと交雑したものなのか、それともカスミフグにもこのような模様が現れることがあるのかということで定かではない。より詳しく調べてみたいところではある。ちなみにスジモヨウフグの分布域は西-中央太平洋 (ハワイ諸島を含む)に限られ、インド洋は極東部から採集されているのみ、カスミフグはインドー西太平洋(紅海を含む)に見られるもので若干の違いがある。国内においてはカスミフグ・スジモヨウフグともに「日本産魚類検索第三版」では琉球列島しか記されてはいないが、スジモヨウフグは和歌山県から採集されているし、カスミフグも本州~九州から(証拠標本の有無はともかく)得られている。ちなみにこの個体は宮崎県で採集された成魚の個体である。基本的には沿岸の浅場に生息するが、カスミフグなどは汽水域からもよく採集されるようである。筆者も汽水域でモヨウフグ属の幼魚(ワモンフグ、サザナミフグ、スジモヨウフグ)をよく採集したものである。またいつか採集して飼育したいものである。

ちなみに本種は有毒とされるが毒性の詳細については不明。釣れても食用とはせず、飼育してかわいがるか、逃がしてあげたい。この個体は宮崎県のWadaさんから標本用に譲り受けた魚である。いつもありがとうございます。

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