第17回 餅つき
お正月を控え、我が家では12月30日早朝に餠をついた。搗き立ての餠にあんこ、菜っ葉、大根おろしを絡めて食べる。それが終わると、お餅をリヤカーに積んで、姉と二人で朝日町の親戚の家へ運んだ。徐々に明るくなり、周辺の風景がはっきりと見えるようになった。
正月は商店街の店がほとんど休みになる。三が日を優雅な気分で過ごすためには、年末の内に買い物を済まさなければならない。
辻俊文氏撮影
現在のグリーンモルを撮った辻さんの写真は、昭和34年12月30日とある。諏訪花園さんの店は、お正月の花を買求める多くの人で賑わっている。この年の9月26日、四日市祭りの最終日に伊勢湾台風が東海地方を襲った。人々は、嫌な記憶を払しょくするかのように正月準備に走る。
現在の三番街に“渡辺菓子店”があった。常日頃、S君と店を覗き、カバヤやグリコ、カルミンなどの駄菓子を買っていた。
その中に、エースコインと云うビスケットがあった。常日頃10円の小袋を買っていたのが、お正月向けに100円の千両箱が売られていた。これはコインの勉強にもなると買い求めたが、家に帰って笑われた。末っ子と云うものは、とかく小ばかにされやすい。
大晦日、お袋はお節料理づくりに余念がない。数の子・田作り・黒豆・煮しめ・かまぼこ・だて巻き・きんとん・昆布巻き・なますの定番で、元旦と二日は雑煮(切り餅を菜っ葉とかしわで煮、かつお節をのせる)を食べる。二日目には、大きな茶碗蒸しが出る。そして、三日目はすき焼きで、正月の締めとなる。
四日市市の今昔 樹林舎刊より
二日の夜、姉と友人を見送った後、煌々と電気をつけていた前田さんの店“ツル家”へ立ち寄り、濃縮ジュースを買い求めた。リッチな気分になって家路についた。