花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

“賀状”

2016年12月28日 | わたくしごと、つまり個人的なこと

毎年、この時期になると思い出す 詩です。

 賀状   長田 弘

 古い鉄橋の架かったおおきな川のそばの中

学校で、二人の少年が机をならべて、三年を

一緒に過ごした。二人の少年は、英語とバス

ヶットボールをおぼえ、兎の飼育、百葉箱の

開けかたを知り、素足の少女たちをまぶしく

眺め、川の光りを額にうけて、全速力で自転

車を走らせ、藤棚の下で組み合って喧嘩して、

誰もいない体育館に、日の暮れまでたたされ

た。

二人の少年は、それから二どと会ったこと

がない。やがて古い鉄橋の架かった川のある

街を、きみは南へ、かれは北へと離れて、両

手の指を折ってひらいてまた折っても足りな

い年々が去り、きみたちがたがいに手にした

のは、光陰の矢の数と、おなじ枚数の年賀状

だけだ。

 元旦の手紙の束に、今年もきみは、笑顔の

ほかはもうおぼえていない北の友人からの一

枚の端書を探す。いつもの乱暴な字で、いつ

もとおなじ短い言葉。元気か。賀春。