会社を早めに退去し、宇都宮へ行った。
宇都宮には18年前、2年半ほど支店勤務をした経験がある。
宇都宮駅は大きな変貌を遂げつつあり、一部にいまだ整備中の様子もみせていた。しかし、総じて明るくなったし、楽しい雰囲気に変わってきていた。
駅近くの居酒屋で、後輩3人と会うことになっていた。その3人とは、宇都宮だけが接点だったわけではない。長いサラリーマン生活の中で、東京や北関東でも交流があった。
居酒屋の女将さんとは、かれこれ18年の付き合いとなる。気っ風のいい女性で、わがカミさんとも親しくしてくれており、お互いに身の上相談をしているようだ。(どうせ亭主の陰口だとは思うが)
18年も経てば、年齢は間違いなく18年加わっていて、すっかり落ち着いた貫禄だ。
女性を表現するのに、「落ち着いた貫禄」は失礼かもしれない。落ち着きを見せ始めた色気とでも表現しようか。
以前の私は、日本酒だけにこだわっていたが、今は焼酎が多い。飲んで旨いのは日本酒なのだが、酔い心地が少ししつこい。若いころは、そのしつこさが良くて飲んでいた。しかしこの歳になると、さすがに後々がつらい。特に、足腰に疲れがどっと出る。
後輩たちとの話題は、まずは昔話からスタート。ほとんどは私が彼らの論評の的となる。
「あのとき、×××◇◇と言ったのを、覚えていますか?」
「イヤ、覚えていない」
「あの後が大変だったんですよ!」
「そうだったのかァ。そりゃァ悪かったなァ」
まずはそんな話が多い。
先輩の身としては、元気だったころの私の無謀ぶりを、そのような語り口で言ってくれるのは、懐かしいしありがたい。精気溢れて仕事に打ち込んでいたころを思い起こすことになる。回春剤を投与されたようなものだ。
彼らも年齢を加えた。会社の幹部として活躍していて頼もしい。
彼らとしては、敬老精神で私を励ましてくれているのかもしれない。
しかし私としては、先輩面をして、それに甘えてはいけない。彼らの活力に役立つ存在でなければならない。
後輩たちと会うとき、私はいつもそのように思ってしまう。
もっと楽になったほうがいいなかもしれないな。
しかし、これが私の性分なんだから仕方がないのだ。
一ヶ月後に会う約束をして別れた。