新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

初恋の花は菜の花

2009年03月05日 06時28分43秒 | 写真・エッセー

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 不思議なことに、私は初恋に憧れているのです。

 いいえ、具体的な「初恋の人」への憧れではありません。

 実は私、初恋ってあったのかどうか、まったく意識の中にありません。

 忘れたのではなく、初恋がなかったように思えてならないのです。

 女の人を好きになったことがなかったわけではありませんよ。

 むしろ多すぎたかもしれないほどです。

「そうなら、その中の初めての人が、初恋の人ではないか!」

 そんな指摘をされそうです。ごもっともなご指摘です。しかし、どれが初めてのことだったかが判然としないのです。

 むしろ、初恋を明解に意識できている人がいるとしたら、羨ましいし、不思議にも思います。

 いつの間にか感じ、いつの間にか終わっていた。それが初恋ではないか。私の初恋観です。

 島崎藤村の詩に、「初恋」があります。少年時代に口ずさんだ詩です。

    まだあげ初めし前髪の
    林檎のもとに見えしとき
    前にさしたる花櫛の
    花ある君と思ひたり

    やさしく白き手をのべて
    林檎をわれにあたへしは
    薄紅の秋の実に
    人こひ初めしはじめなり

「あの人の白い手から、薄紅の林檎をいただいたとき、初めて人を好きになったのです」

 藤村の初恋を意識した瞬間です。

 このような実感が、私にはありません。ひょっとしたら、とても不幸なことかもしれませんね。

「あれが初恋だった!」

 そんな意識がなかったまま、世を終わろうとしている私。

    林檎畑の樹の下に
    おのずからなる細道は
    誰が踏みそめしかたみぞと
    問ひたまふこそこひしけれ

「リンゴ畑の木の下、こんなに踏み固めてしまったわァ。いったい誰が歩いて来たのでしょうねー」

 こんなセリフは、年上の女性に違いない。

 また、唸ってしまう私です。

 藤村の「初恋」は、秋の林檎畑です。しかもその相手は年上の人。

 しかし、私のイメージは春です。

 春と言えば桜ですが、あのような狂おしい華やかさは、初恋に相応しくありません。梅の花のような厳しさにも、ついて行けないような違和感がありますね。

 ふんわりと包んでくれる温かい菜の花。私にとって、初恋の花は菜の花しかありません。

 と、力んだところで、私には具体的な恋がなかったのです。

 今になって悔やんでいます。

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コメント (14)
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