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反復パターンを多様しながら弛緩せずに禁欲的

2012-06-30 12:24:18 | 音盤ノート
Nik Bartsch's Ronin "Holon" ECM, 2008.

  欧州風人力ミニマル暗黒ファンク(参考)と以前勝手にカテゴライズしたが、CDショップではジャズのコーナーにある作品、たぶん。スイスのピアニスト、ニック・ベルチュ率いる浪人軍団のECM二作目で、前作と同じ五人による録音。ただし、前作で使われていたフェンダーローズは使用されておらず生ピアノのみ。また、リード奏者がバスクラだけでなくアルトサックスを楽器に加えている。

  反復ビートを中心に組み立てられた音楽でありながら、快楽感の薄い、抑制された印象をもたらすのは前作と変わらない。一曲の中でストップアンドゴーを用いて、静的な部分と動的な部分に分ける点も前作と同様。素人の僕には具体的な数字がよく分からないが、変拍子を多用しているのも前作と同様。そういうわけで前作とほとんど変化は無い。5曲目の‘Modul 45’におけるアルトサックスの咆哮と、直後のベルチュのソロの二つがジャズ的に響くぐらいが新機軸といえるだろうか。

  音楽的な高揚感は徹底的に抑えられ、聴いている方は様々なパターンの連続に眩惑させられる。こうした点から、初期のミニマルミュージックが狙ったところを別のフォーマットでやろうとしているだろうとうかがわせる。凄く良いというわけではないのだけど、なんとなく聴かせてしまう──しかも、注意深く。そういう作品。
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