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開発経済学の二冊

2008-09-08 17:49:41 | 読書ノート
ウィリアム・イースタリー『エコノミスト南の貧困と戦う』小浜裕久ほか訳, 東洋経済新報, 2003.
ジェフリー・サックス『貧困の終焉:2025年までに世界を変える』鈴木主税, 野中邦子訳, 早川書房, 2006.


 二冊とも開発経済学の書籍であり、両者の間で論争があったことは知られている。サックスの書籍の前半部分は、読み物としての面白さに特に秀でている。著者の、途上国政府へのアドバイザーとしての経歴や、国際機関の委員を務めた経歴が華やかだからだ。一方、途上国への貧困に対する分析はイースタリーの方が細かい。

 両者とも、グローバル化した資本主義経済の信奉者であり、この点では共通している。意見が分かれるのは、国際的な経済支援を効果的に使用する被援助国の能力についてである。イースタリーは、その能力について懐疑的である。被援助国は、経済発展へのインセンティヴを欠いている場合がある。結果、市場原理が機能せず、公教育に失敗し、汚職がはびこるという。したがって、インセンティヴが上手く働くよう、まず制度設計が必要となる。

 一方、サックスは、そもそもこれまで行われた援助額が少なすぎたので、経済発展から取り残された国が出てくるのだと主張する。彼によれば、多少の汚職があっても、十分な金額があれば途上国も発展できるという(彼は自然条件や地理的位置を経済発展を阻害する要因として強調している)。したがって、途上国の債務を帳消しにし、より大きな額の援助を与えれば経済発展へと離陸するはずだと。

 サックスの議論は楽観的過ぎるように思えるが、貧困を減らすための方法は明確である。一方、イースタリーの議論は分析的だが、変数が多すぎて貧困撲滅のために何から手をつけていいのかわからなくなる。残念ながら、素人の僕にはどちらが“経済的”なのかを判断する見識は無い。ペンディング。
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