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米アダルトコンテンポラリーに近寄り過ぎて土臭さが消失

2017-04-25 21:39:38 | 音盤ノート
Milton Nascimento "Encontros E Despedidas" Barclay, 1985.

  MPB。『出会いと別れ』という邦題で日本盤が発行されている。1980年代初頭からミルトン・ナシメントはシンセサイザーを採り入れてサウンドを組み立ててるようになるが、中でもその使用が目立つ作品である。たとえシンセが入っても神秘性や素朴さを残すこの前後の作品と比べると、都会的でかなりポップである。すなわち1980年代の米国アダルト・コンテンポラリー的なサウンドである。

  収録曲はバラード中心で地味ではあるが、ボーカルをじっくり聴かせる技術があるので退屈にはならない。だが、プラスチックのようなこのサウンドはベストではない。チョッパーベースに、エコーの効いたドラム。Pat MethenyやHubert Lawsが1曲ずつゲスト参加していることからわかるとおり、よくできたフュージョン演奏である。クリアでありおしゃれに磨かれ過ぎている。素朴さがウリなのに、寸法の合わない一張羅を着てしまったかのよう。この作品を聴くと、民族音楽やらロックやらボサノバやらを手探り状態でブレンドしていたEMI Odeon時代の混沌とした音が、いかに素晴らしかったかがわかる。

  とはいえタイトル曲はかなり良い。オリジナル曲ではあるが初出は1981年のSimoneの"Amar" (CBS)で、その後の録音である。Eris Reginaの娘であるMaria Ritaもデビュー作(Wea, 2003)でカバーしている。この曲を筆頭にして、本作収録のバラード曲を、シンセ抜きのブラジル人ミュージシャンだけという異なる編成で再録音してほしい。
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